第7回福井読書会レポート(執筆者:長岡亜生)
2021年5月22日(土)20:00~22:00 オンライン福井読書会を開催しました。
開催案内はこちら
イタリア在住の翻訳者、飯田亮介さんをゲストにお迎えするという、オンラインならではの特典つき。参加者は、福井県内のほか東京、埼玉、愛知、大阪、兵庫から総勢10名(+世話人2名)。今回も楽しいひとときとなりました~みなさんありがとうございます。
課題書『老いた殺し屋の祈り』マルコ・マルターニ 著/飯田亮介 訳(ハーパーBOOKS)
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オルソ(熊の意)と呼ばれ、長年組織のボスに仕えてきた最強の殺し屋。心臓発作に倒れるも命をとりとめた今の願いは、生き別れたかつての恋人と娘にひと目会うこと。ふたりが暮らす町を目指す道中、何者かに襲われる……「イタリアン・ノワールの傑作」と帯でうたわれる本書は、イタリアの著名な脚本家による初の小説です。
〈まずは感想〉
みなさんの読後感としては、面白かった。さくさく読めた。楽しめた。という声が多数。具体的な理由としては、
・プロットの運びがうまい。
・どんでん返しがいくつもあって飽きさせない。
・映像的な作品(さすが脚本家)
・カーチェイス、アクションシーンがよかった
(飯田さんから安堵と喜びの声)
ノアールは苦手だったがこれは大丈夫だった、「共感できるところはほとんどなかった」(笑)という声もあがり、さらには、英米ものとは違って「日本人の感性に近いのかも」「任侠の世界を連想させた」など〈ドライVS ウエット〉の議論でももりあがりました。
〈オルソ〉
主人公については、
・おしゃれ。かっこいい。趣味は恋愛小説(もっと深めてほしかった)
・年齢を忘れるほどのアクション。しかも退院後なのに活躍しすぎ。
大丈夫かよ。
・ただの女好きか? ボスの娘に惹かれてるし……
・俳優でいうと……クリント・イーストウッド(なるほど)、任侠なら高倉健で しょ(おおー)、アンソニー・クイーン(映画『道』より)、年とったキア
ヌ・リーヴス、極めつけはジャン・レノ! などの名前があがりました。
〈エルサ〉
オルソが甘い関係を築くエルサについては、「うーん残念」との感想がほとんど。
・40代なのにおばさんくさい、その反面、子どもっぽい謎な言動あり。
・思慮がない。女を出すこともない。ダサすぎるファッション(なぜに?)
・裏がある人かと思っていたのに……
そもそも女性登場人物はみな中途半端な感じで、男性目線から描かれている。映像的な必要性から登場? 単なる道具立て? という指摘も。
〈気になるサブキャラ〉
本作には、本筋にあまり関係しない人物が多数登場しますが、気になったのは……
・レモ。そこまで悪いやつじゃない。ロッソへの恨みの根拠など謎が残る。
・モーズリー。活躍を期待していたのに……捨て駒の扱い。同名のミステリー
作家を意識?
・チョイ役だけど神父がかっこよかった。アル・パチーノにやってほしい。
・バールの兄ちゃんがリアルでいい(飯田さんの思い入れも)。
〈タイトルと父親像〉
「『老いた』っていうけど、主人公は60歳代前半!」と同世代からの鋭いつっこみが入りました。たしかに。他方「人生の終焉を意識しているのでは?」という意見も。
原題「ひとりの父として」にも疑問の声。オルソをめぐる父親殺しのモチーフ、ロッソの存在感など父親像についての議論も白熱しました。
ここまで原題と離れたタイトルも最近珍しいですね。「気がついたらこれになっていた」と飯田さんは笑いますが、表紙の漢字が横に3つ並ぶのがお気に入りとのこと。
〈印象的なシーンや気になったところ〉
・殴り込みシーン。そこでもう物語終わった感じ(笑)
・オルソの恋人と娘の安否(いろいろ意見がでました)
・予想外の結末。オルソかっこよすぎじゃ?
・続編はいらない(キッパリ)。人物たちの過去を遡ったものなら読みたい。
・どんだけロッソはオルソが好きなのか。
・いじめの解決はあれでいいのか。オルソしゃべりすぎ。悪ガキ絶対復讐して
くるよね~
などなど。
〈翻訳に関して〉
飯田さんによると、原文を読む中で疑問がいろいろ生じたそうで(イタリアは編集チェック甘すぎ?)細部にわたって整合性が考慮された翻訳になっています。興味深かったのは、銃器操作に関して施された修正(なんと参加者から新たなご指摘も!)。
イタリア語ミニ講座あり、作品中のスイーツ・料理談義あり(写真提供は世話人藤沢一弘さん)、その他いろいろなお話も聞けて、イタリアに浸れた読書会でした。
つぎの翻訳は近日出版予定(お楽しみに!)。世界中で大評判のシリーズ『ナポリの物語』には参加者から推しの声。この機会にぜひ!
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次回の福井読書会は7月17日(土)に開催します。課題書は『シャーロック・ホームズの冒険』(近日中に告知が出ます)。そして9月には、話題の近刊書『天使と嘘』マイケル・ロボサム作/越前敏弥訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)を課題書にする予定です。今後とも福井読書会をよろしくお願いします~
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福井翻訳ミステリー読書会世話人
長岡 亜生(ツイッターアカウント @autumn_ng)
藤沢 一弘(ツイッターアカウント @shaolon_wang)
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