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全国翻訳ミステリー読書会

第18回福井〈善良なハードボイルド〉読書会レポート(執筆者・藤沢一弘)

2024.02.09 01:48

第18回福井読書会は、キミ・カニンガム・グラント著『この密やかな森の奥で』を課題書に、訳者の山﨑美紀さん、二見書房編集部の山本則子さんという豪華ゲストをお迎えして開催いたしました。


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今回、福井読書会は初めてという方や読書会自体が初めてという参加者もいらっしゃる中、まずは皆さんから簡単な自己紹介と全体的な感想を述べていただき、休憩を挟んだ後にそれぞれの感想や意見を踏まえたディスカッションを行いました。


その中からいくつかご紹介したいと思います。



 


主人公のクーパーに共感できるのか、共感できないのか。

結末にモヤモヤするのか、そうでもないのか。

この辺りの意見が二分するのが面白かったですね。

しかし、クーパーに対する手厳しい意見も多く、クーパーに共感できた側は結構ショックだったりして(笑)。


でも、確かに生まれたばかりの娘を世間から隔絶した森の奥で一人育てるというのは、娘の幸せを本当に願っているのかどうか納得いかないという意見にも思わず頷いてしまいます。


また、アフガン戦争帰りのクーパーがPTSDで、自身の良心の呵責に苦しんでいる姿に、戦争の恐ろしさや愚かさなどについて考えさせられたとの声も多かったです。


その一方で、日本に住んでいると実感しにくさもあるとの正直な声も。

娘と森に隠れて暮らす事になったその時の状況に理解はできるけれど、それはクーパーの自己満足でしか無いのかと、やはりモヤモヤするのかも知れません。


 


さて、クーパーとフィンチの隣人としてスコットランドという謎の人物が登場します。

クーパーの過去と罪を知っていると仄めかしつつ、クーパーから敵視されていても何かと手助けしようと介入し、娘のフィンチとも仲良くなります。


果たしてクーパーにとって敵か味方か。

訳者の山﨑さんも怪しい人物として感じ取ってもらえるように注意しながら訳したとの事です。


 


ところで本書のテーマとしては罪の意識とそれに対する良心の呵責や赦しが描かれており、その根底に信仰があるとの指摘も。

作中でもクーパーが森の奥に持ち込む物の一つに聖書がありましたし、巻末の著者のあとがきにも毎日聖書を読んでいるとの記述がありました。


クーパーの罪、そしてそれに対する赦しとは一体どんなものなのでしょうか。そして赦しを得た側の、その受け止め方についても、是非読んで考えてみて欲しいと思います。


 


さて、感動的な場面や考えさせられ場面も多い本書ですが突っ込みポイントも。



 


などなど、思わず突っ込みを入れたくなる箇所を見つけるのも楽しかったかも(笑)。


 


その他にも印象に残ったところとして、



 


などなど、それぞれ印象に残ったところや疑問に思ったところなどを語り合いつつも、あっという間に終了時間に。


参加者からの質問や疑問にお答え下さり、また、訳す上で気を付けていた事など色々お聞かせ下さった訳者の山﨑様。

出版に至るまでの経緯や作品への愛を語って下さった二見書房の山本様。

初冬の福井へと、わざわざお越し下さり本当にありがとうございました。

あらためて御礼申し上げます!


※巻末に掲載されている著者のおすすすめ本である『父を撃った12の銃弾』、訳者の山﨑さん、二見書房の山本さんもお好きだという『ザリガニの鳴くところ』、フィンチの愛猫の名前の由来になった作中で読まれているホイットマンの詩集など関連本も。


ところで、本会終了後の懇親会も。

その会場に向かう途中、JR福井駅での〈恐竜王国福井〉推しに、思わず近くで撮影も(笑)。




今年の3月には、金沢止まりだった北陸新幹線が福井県(の敦賀駅)まで延伸され、関東方面から福井へも訪れやすくなります。

恐竜博物館や永平寺、東尋坊などへの観光がてら、ぜひ福井読書会にも遊びに来て下さいませ。


福井読書会世話人

藤沢一弘(X(旧ツイッター)アカウント @shaolon_wang


福井翻訳ミステリー読書会

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