先輩からのアドバイス
【詳細】
比率:女2
現代・その他
時間:約10分
【あらすじ】
ある日の昼休み。
一人でお昼を食べている香奈のもとに先輩の美里がやってきて……
こちらは『かわいいシリーズ』の番外編です。
時間軸としては、『かわいいのち大好き』の数日前のお話でございます。
【登場人物】
岩本香奈:(いわもと かな)
仕事が出来る高身長の女性。
自分の身長の高さにコンプレックスを抱えていた。
朝月美里:(あさつき みさと)
香奈のことを可愛がっている先輩。
お仕事が出来る人。
●会社の休憩室・昼
香奈がお弁当を食べている。
美里:香奈ちゃん、お疲れ様
香奈:あ、朝月先輩、お疲れ様です
美里:隣、いいかしら?
香奈:はい、どうぞ
美里:ありがとう
美里、香奈の隣に座る。
美里:あら、今日もお弁当?
香奈:はい
美里:香奈ちゃんは家庭的でいいわね。私なんかめんどくさくて近場で買ってきちゃった
香奈:あ、そのサンドイッチ、あそこのカフェのテイクアウト限定のサンドイッチですよね?
美里:流石、香奈ちゃん。チェック済み?
香奈:はい。いつか買おうって思ってて
美里:そうなんだ~
香奈ちゃん、最近お弁当持ってきてるからカフェとか行かなくなっちゃったのかと思ってた
香奈:(苦笑して)行きたいんですけどね。いつも仕事でお昼とかギリギリになっちゃって……
美里:は?
香奈:あっ……
美里:……ギリギリ?
香奈:あ、朝月先輩?
美里:……誰?
香奈:へ?
美里:私のかわいい香奈ちゃんに仕事押し付ける馬鹿はどこの馬鹿たれだ!
香奈:あ、朝月先輩、落ち着いてください!
美里:これが落ち着いていられるか! この前も自分の仕事は自分でって……
香奈:(遮って)だ、大丈夫ですから!
美里:……本当に?
香奈:はい、もう前みたいに無理はしてませんから
美里:(香奈をじっと見つめながら)本当ね?
香奈:はい
美里:なら、いい。香奈ちゃん、目を離すとすぐに無理するんだから!
香奈:あははは……
美里:確かに? あいつらに任せるよりも香奈ちゃんの方が仕事早いし、丁寧だし、しっかりしてるから安心できるけど……
あいつらを甘やかす必要なんてないからね!
香奈:はい
美里:(嬉しそうに笑う)
香奈:朝月先輩?
美里:なに?
香奈:どうしたんですか?
美里:ん? 安心したの
香奈:え?
美里:もう大丈夫そうだなって。あの馬鹿のこと、吹っ切れた?
香奈:あ……
美里:ふふふ、聞くまでもないかな?
香奈:……その節はご迷惑をおかけしました……
美里:気にしないで。迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないし
香奈:でも……
美里:大丈夫よ。香奈ちゃんが落ち込んでたの気が付いてたの私ぐらいだし
じゃなかったら、あの馬鹿どもあんなときに香奈ちゃんにあんなに仕事押し付けるわけないでしょ?
香奈:(苦笑しながら)確かに……
美里:だから、気にしないでよろしい
香奈:はい
美里:(微笑んで)吹っ切れたのは、そのお弁当の彼がきっかけかな?
香奈:え?
美里:香奈ちゃん、恋人出来たでしょ?
香奈:えぇ!
美里:香奈ちゃん、休憩室では静かにね
香奈:あ、すみません……えっと、私、彼のこと……
美里:聞かなくてもわかるわよ? だって、香奈ちゃん、最近綺麗になったもん
香奈:へ?
美里:前から背が高くてスラッとしてて美人さんだなって思ってたけど、最近はそれにかわいさがプラスされたよね
香奈:か、かわいさ?
美里:あれ? 気が付いてない?
香奈:全く! そもそも、私はかわいくなんて……
美里:私は最初からかわいいと思ってたよ? でも、最近はもっとかわいくなってきたよね
香奈:そんな!
美里:お弁当とか、私は健気でかわいいなって思うよ?
そのお弁当、自分一人のために作ってるお弁当じゃないでしょ?
香奈:なんで……
美里:おかずを見たら一目瞭然。ほとんど手作りのものだし、きんぴらとか日持ちする常備食も使ってる
自分一人のためにそこまで頑張らないでしょ。前までサンドイッチやおにぎり片手に昼休みですらお仕事していた子が
香奈:……知ってたんですか
美里:うん、そろそろ、あいつらしめてやろうかなって思ってたんだけど、最近それもなくなってきたし
香奈:ご心配おかけしてしまってすみません……
美里:いいの! で?
香奈:はい?
美里:どんな彼氏君なの?
香奈:え!
美里:教えてよ
香奈:いや……
美里:大丈夫、誰にも言ったりしないから
香奈:……本当に秘密にしてくれますか?
美里:もちろん
香奈:えっと……昔から知ってる人で、よく私が凹むたびに飲みに付き合ってくれて
優しくて、自分ってものをちゃんと持ってて、人のことをちゃんと考えられる人で、気遣いもできて……
美里:うんうん
香奈:……私をちゃんと私として見てくれる人です
美里:そっか、安心した
香奈:え?
美里:香奈ちゃんのこと、ちゃんと幸せにしてくれそうな人で
香奈:っ!
美里:絶対にその人のこと離しちゃだめよ?
香奈:……はい
美里:(小声で)まぁ、香奈ちゃんなら心配ないか
香奈:朝月先輩?
美里:あぁ、何でもない。私のかわいい香奈ちゃんをもっとかわいくしてくれちゃって、ちょっとだけ嫉妬しちゃうな
香奈:あ、朝月先輩!
美里:(楽しそうに笑いながら)ん? なに?
香奈:わ、私の話はいいですから、先輩は……
美里:あ、私? 別れたよ?
香奈:え……
美里:先月、別れちゃった
香奈:え、あ、すみません……
美里:気にしないで! もともとお互いに冷めてきてたし、そろそろかなって思ってたから
香奈:……
美里:もう、そんなに暗い顔しないでよ!
香奈:……はい
美里:もう! 香奈ちゃん
香奈:はい
美里:落ち込まれるくらいなら、私は香奈ちゃんの幸せな話を聞きたいな
香奈:朝月先輩……
美里:ほら、昼休み終わっちゃうよ? ご飯食べよう?
香奈:はい!
美里:香奈ちゃん
香奈:はい?
美里:香奈ちゃんには必要ないと思うけど、一個だけ先人の知恵だと思って頭の片隅にでも入れといて
香奈:はい
美里:好きって気持ちはちゃんと伝えなきゃダメよ? 思ってるだけじゃ伝わらないから
いくらお互いをわかっている恋人同士でも、一人の別々の人間。相手の気持ちまで読むことなんてできないから。ね?
香奈:はい
美里:ま、香奈ちゃんは大丈夫だと思うけどね
香奈:朝月先輩……
美里:さて、ご飯しっかり食べて、午後も頑張ろう!
香奈:はい
美里:ほんでもって今日も定時で帰るぞ~!
香奈:(笑いながら)はい
―幕―
2020.09.11 ボイコネ投稿
2024.06.03 修正・HP投稿
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