【男1女1不問1】TRANSER《トランサー》【10分~】
《ジャンル》
ファンタジー
《あらすじ》
久しぶりのデート。話題のアイスを食べに繁華街へ。
どこぞのアトラクションかよ、と思うほどの待ち時間を経て、ようやく買えた。写真を撮って、食べようかなと言う時、大きな爆発音が…。
逃げ惑う人々。暴れる見た事もない生き物。私達も逃げなきゃ。そう思ったのに、怪物の前には逃げ遅れた子供。ばかな私は、「離れよう」という彼の言葉を無視して飛び出してしまった。
終わった。
でも子供助けられたなら、それも悪くないのかもな、とか妙に冷静な自分に驚きつつも目を、強く瞑る。
だけど
衝撃が、来ない。
目を開く。
彼が…化物と対峙していた。
勝てるはずなんかないのに、化物に対して何か言い合いながら、戦っている。
でも
一方的にやられていく。ボロボロになっていく。
もうやめてほしかった。私のせいで…彼が…。
《登場人物》
【レイト】ひょんな事から化物に変身できるようになってしまった男性。普段から隠して生活している。
【ユナ】レイトの彼女。普通に普通の女の子。
【怪物】元人間。衝動のままに暴れまわっている。
おまけ:以下は、おしまいの後のおまけです。演者様方に余裕がありそうならぜひ!配役は《A》《B》で分けるといい感じかと思いますが、ご自由に振り分けていただいてかまいません。(ユナ役の方はユナ役のまま、おまけも続行でお願いします)
【司会】ニュース番組の司会。エセ関西弁。《A》
【広報】ニュース番組で司会の質問に答える政府の特別対策課の広報担当。《B》
【謎の男】突然、家に来た、やさしそうなおじ。お兄さんでも可。なんでも可《A》
【対策班】特別対策として立ち上げられたチームの人。リーダーぽい人のみ《B》
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レイト:「変身」
ユナ:その言葉が聞こえて来ると同時に一瞬まばゆく光り、彼は異形の姿へと変わっていた。
レイト:「これで対等だ…」
怪物:「く、くくっ、ははははっ」
レイト:「…」
怪物:「なんだよ、おめぇも同じなんじゃねぇかよ」
レイト:「俺は…違う…」
怪物:「違うものか!見てみろ、お前の守ろうとした女の目をなぁ!!」
ユナ:「…ぁ、、ぁ」
レイト:「…っ」
怪物:「ほらなっ、おめぇも一緒なんだよ!」
ユナ:私は、酷いことをした。頭ではわかってる。彼が私を助けようとしてくれたこと、彼が私を襲うわけがないってことを。なのに、この身体は、震えて、声もでない
レイト:「…それでも」
怪物:「あ?」
レイト:「お前とは」
ユナ:彼が跳ぶ
レイト:「違うッ!!」
ユナ:泡のように膨らんだ右腕がアイツの顔面へと撃ち込まれた
怪物:「ぐぶぉっっ…………ィってーなぁ!!」
レイト:「…。」
ユナ:アイツが振り払うように腕を振り回す、が彼は既に後ろへと跳躍していた。
怪物:「つぅ…おいおい、この重さ…おめぇ、昨日今日、そうなったってわけじゃねぇな?」
ユナ:「…ぇ?」
レイト:「どうでもいい」
怪物:「どうでもいい?はっ、おめぇは化物のくせにぬくぬくと人間として生活をしてたってことだよなぁ?」
レイト:「だからなんだ」
怪物:「こっそり喰ってたんだろ、おめぇもよぉ。こうなっちまったら抑えられなねぇもんなぁ。。。あぁ…ははっ、そうか、その女もそういう」
レイト:「違う!!!」
怪物:「おお、こわいねぇ。だけど…その力は一人二人喰ったからってわけじゃねぇだろ、おめぇも充分化物じゃねぇか」
ユナ:知らない…。そんなわけない…ずっと一緒だったのに
レイト:「俺は…」
ユナ:「ぁ、そ、そんなわ、けない」
レイト「ユナ…」
怪物:「はぁ?なんて?」
ユナ:「ず、ずっと、一緒、だった、から、そんなわけが」
怪物:「お嬢ちゃんよぉ、おめぇが寝てる間は?あんたに予定があった時は?そもそもずっとなんて無理だろ?抜け出すことなんていくらでもできる」
ユナ:「…ぁっ」
怪物:「ははっ、ほらな、心当たりがあるだろ?」
ユナ:「で、でも…」
怪物:「でもじゃねぇ!!」
ユナ:「ひうっ」
怪物:「こいつがオレと同じくらいの強さって時点で2桁…いや3桁に到達しててもおかしかねぇな、そんぐらいやってるぞ」
ユナ:「ぇ、ぁ…」
レイト:「ユナ…ありがとう。遠くに離れてて」
ユナ:「ぅ…け、けど」
レイト:「いいから、お願い。」
ユナ:「…ぁ」
レイト:「早く」
ユナ:今までお願いなんてしてきたことなかった。私のわがままをいつも…。
レイト:「…大丈夫だから。」
ユナ:「…うん。」
怪物:「いいのかぁ?今見失ったら二度と喰う機会ないぞ?」
レイト:「違う」
怪物:「あんな上玉、そうそういないだろ」
レイト:「違う」
怪物:「そうかよ。。あぁ、後ろ姿もたまんねぇなぁ、おめぇがいかねぇならよぉ…
ユナ:ドン、という音に、振り返る。アイツが目の前まで迫り、気持ちの悪い大きな口が開いて
怪物:「オレが喰っ」
レイト:「だまれ…!!!」
ユナ:彼が脳天から押しつぶす
怪物:「ぐぎぎぎ…やっぱおめぇ…おかしい、ぞ」
ユナ:押さえつけられた拳をアイツは振り払う
レイト:「…お前は俺を怒らせた」
怪物:「はぁ?どこの漫画だ…ぉべぁっ」
ユナ:彼の姿が見えない
怪物:「ぐふっ、があっ、な、んっ、だ、これ、がぎゅぁっ」
レイト:「…。」
怪物:「はぁ…はぁ…っ…この強さ、速さ、まさか…!お前、、、同族喰いだろ!!!」
レイト:「…。」
ユナ:また彼の姿ブレて
怪物:「ま、まて!!まってくれ!!」
ユナ:アイツの言葉で止まった
レイト:「なんだ」
怪物:「お、俺もやり過ぎたし、言い過ぎたよ、おめぇが噂の同族喰いなら、俺なんかが敵うはずがねぇ…た、たのむ、見逃してくれ」
レイト:「…。」
怪物:(へっ、ばかがよぉ、明らかに優男風だったからな、、、、俺の全力をくらいやが----)
レイト:「ハァッ」
怪物:「ぶべぇええええええ」
レイト:「許すとか、見逃すとかねぇよ。」
怪物:「く、くそが…逃げるしか………ッ!?お、俺の、俺の足がぁあ」
レイト:「…今、楽にしてやる」
怪物:「やめ、や、あ、くそっ、俺はまだ、喰いてぇんだ!!く、くるなぁああああ」
レイト:「うるさい」
ユナ:その言葉が聞こえて来る同時に一瞬まばゆく光り、彼の腕がさらに膨張した。
ユナ:そして
ユナ:アイツを呑み込んだ。
レイト:「…。」
ユナ:「ぁ、あ、そ、その」
ユナ:声をかけなきゃ、私の中の何かがそう告げた、けど、彼は
レイト:「…ごめん」
ユナ:そう俯き…空を見上げ、跳んだ。激しい突風が吹き荒れる。砂煙が晴れた頃に、彼の姿は無かった。
ユナ:後に残ったのは、遠くから聞こえるサイレンの音と、泥と混じってぐちゃぐちゃになったバニラアイスだけ。
ユナ:「私のばか…」
0:おしまい
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:
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0:おまけ
ユナ:翌日、あの時の事がニュースで取り上げられていた…
司会:「ほならね、どうせいっちゅうねん、こんなの」
広報:「ええ、ですから、このような場に遭遇してしまったら、速やかに避難をと」
司会:「さっさと撃っちゃえばええやないすか」
広報:「あのですね、いろいろと準備がいるんですよ」
司会:「ほな、なんのための警察や自衛隊なん、意味ないやん」
広報:「前例の無い事ですから…」
司会:「前例前例って、あのバケモンを倒したバケモンは、普通の人が突然、ああなったちゅー話やないの。こわいわぁ、怖くて歩けへんちゅーの」
広報:「現在調査中ですので…」
司会:「そんでこれ、バケモン食ってどっか行っちゃてるやん、どうすんの、早く駆除してえーな」
ユナ:「え?」
広報:「それに関しましては、特別部隊を編成し見つけ次第対象するよう動いております」
ユナ:「対処…?」
司会:「そうなんか、ええな、さっさと殺してもらわな、お外歩けまへんわ、ぇ?『殺す』だめ?、はいはい、駆除ね、くーじょ」
ユナ:「な、何言ってるの!?」
広報:「映像からもわかる通り、強靭な筋力に敏捷性、とても危険な存在であることが確認できております。我々はこのバケモノを『トランサー』と名付け徹底的な対応に勧めて参ります。」
司会:「とらんさー?なんじゃそりゃ、それって、、え?CM?はーい、じゃあ一旦CMでーす」
ユナ:「…なんで!!あの人は何も悪くないのに!!!おかしいよ!」
ユナ:テレビを切り、憤慨する私。そこへチャイムが鳴る。荒ぶった髪を急いで整えて、出る。
謎の男:「こんにちは、突然すみません。私こういうものです」
ユナ:よく考えもせず出てしまった事を後悔した。提示された手帳には
ユナ:「ピー、エイチ、エー…」
謎の男:「*Protective《プロテクティブ》* Headquarters《ヘッドクォーターズ》 *for《フォウ》* Advanced 《アドバンスド》*Logistics 《ロジティクス》*and《アンド》 *National《ナショナル》 *eXecution《エクスキューション》で」
謎の男:「*PHALANX《ファランクス》です」
ユナ:「ふぁらんくす…?」
謎の男:「ええ、昨日の事をお伺いできればな、と」
ユナ:「まさか!ニュースの!?何も言う事はありません!帰ってください!」
謎の男:「いえいえ、あれとは違います」
ユナ:「ち、違う…?だとしてもです!」
謎の男:「私としては帰ってもいいのですが…立川ユナさん。あなた、逮捕状が出てるみたいですよ?」
ユナ:「へ?」
謎の男:「たぶん、そろそろ…」
ユナ:「え、さ、サイレン?近付いてきる…!?」
謎の男:「ああ…囲まれてますね、マンションごと」
ユナ:「ええ!?」
対策課:「『聞こえるかー!立川ユナ!!貴様は包囲されている!』」
ユナ:「な、名指し!?」
対策課:「『トランサーと共謀して暴れまわってくれたようだな!!今すぐ出てこい』」
ユナ:「な、なにそれ!?」
謎の男:「まぁ、そういうことですね」
ユナ:「そういうことって!?」
対策課:「『居るのはわかっている!!出てこないのならこちらから行かせてもらうぞ』」
ユナ:「え、えぇ…」
対策課:「発砲の許可はもらっているからな!!』」
ユナ:「発砲!?」
謎の男:「さて、どうしますか?」
ユナ:「どうするって!?」
謎の男:「逮捕されるか、撃たれるか、それとも、、、私と来るか」
ユナ:「そ、そんなのって…ぁっ!話せばわかってくれるかも!」
謎の男「いきなり囲んできて、拡声器であなたの名前を叫んで、さらに撃ちますよ。なんていう人達がわかってくれるでしょうか」
ユナ:「うっ…」
対策課:「『警告の無視を確認!今から突撃する。』」
ユナ:「え!?」
対策課:「『お前ら、かかれー!!』」
ユナ:「うわわわ」
謎の男:「ふむ、私ならあなたを安全な場所へお連れできますが?」
ユナ:「あーもう!わかったわかった!ついて行くわよ!!」
謎の男「かしこまりました」
ユナ:「でも、どうするの?逃げ場なんて…きゃっ」
謎の男:「いわゆるお姫様抱っこで失礼します」
ユナ:「ちょ、なに考えてんの!?まさか…ま、待って、ここ6階…」
謎の男:「では、行きます、よっ」
ユナ:「はぁああああ!?うそでしょぉおおおお!?!?」
0:おしまい