売れるお店の「コンセプト決め」
個人経営で飲食店を開業するならば、事前に独学で勉強することが大切です。
勉強というと、経営、売上、管理、原価、人件費、立地など、難しく考えてしまいがちですが、
ここではシンプルに、
「地域に愛されるお店とは、どんな店だろう。」
ということに焦点を置いて、お話しします。
店舗経営のテクニックではなく、
その地域について理解を深めるということです。
立地の良いところなら、なんでも売れる。
美味い店なら、なんでも売れる。
そんなことは、あり得ません。
「何かしら」をお客さんが求めているから、入店するわけで、
立地が良くても、お客さんがそこに寄る理由(なにかしら)とマッチしていなければ、二度目の来店はないからです。
美味くても、知ってもらえなければ来てもらえませんし、
知ったあとにも、もう一度行く理由(なにかしら)がなければ行きませんし、足は遠退きます。
お客さんにとっての「美味しい店」は、他にもたくさんあるからです。
この地域に必要な飲食店とは、なんだろう?
もしくは、
この地域なら必要とされるかもしれない。
そんな感じで、自身のお店とお客さんのマッチングから考え、お店のコンセプトを固めていきましょう。
「必要なところに、必要なモノがある。」
これは、売れる秘訣というか、仕組みです。
駅前に、タクシー乗り場があったら助かる。
階段に、てすりがあったら助かる。
高速道路の出入り口に、ガソリンスタンドがあったら助かる。
当たり前のことかもしれませんが、
元々そこになかったならば、作れば必ず喜ばれます。
「ここに居酒屋があったら仕事帰りにフラッと寄るのになぁ。」
「この時間に空いてるラーメン屋があれば、友達連れて行くのになぁ」
と、多くの人に必要とされる店として出せれば、売れて当たり前となります。
求められる数が多ければ、ジャンルでダブっても大丈夫です。
都心のコンビニの近さが、何よりの証明です(笑)
コンセプトとは、お店の基本的な理念や概念。
中華料理、洋食、うどん屋など、
「出したい料理」が何なのかは、なんとなく決まっていると思います。
「本がいっぱい並んだ、図書館みたいなカフェにしたい」
「地元の食材を使った、こだわりの料理を提供したい」
「話題のスイーツを取り扱った、女性に人気のお店にしたい」など、
どういったイメージのお店の外装、内装にするか。
どんなメニューを出すか。
どんなお客さんにきてほしいか。
などを決めていきましょう。
自分の好きなお店や、テレビや雑誌、SNSで取り上げられているグルメや、話題のスイーツなど。
いろんな飲食店の情報をチェックして、自分がどんなお店を開いてみたいのか、イメージを膨らませていきます。
しかし、
トレンドを追うだけではいけません。
トレンドは時代と共に変わるものですから、
昔から愛されているもの、新しいものなど、広く浅くでいいので学びましょう。
5W1Hとは、よく耳にしますが、それに当てはめて形にしていくと、自分の出したいお店が浮かび上がってきますよ。
○WHY (そのジャンルにしたい理由)
自分がなぜ、そのジャンルの飲食店を開業したいのか、考えてみましょう。
その道の料理を学んできたからなのか、そんな料理を取り扱ったお店が好きだからなのか、などです。
○WHAT (何を売るか)
レストラン・カフェ・ラーメン店・専門店などのおおまかなジャンルが決まれば、どんな商品を提供するのかを考えます。
定番人気のメニューはもちろん、お店独自のメニューを開発することは飲食店成功の秘訣です。
お客様がお店をリピートする理由で一番多いのは、そこの料理が好きだから。面白いから。です。
要するに、「この辺ではここでしか食べられないんだよねー」という声が聞こえてくるかどうかです。
また、お店の居心地もリピートされる理由の上位に入ります。
やっぱりここが一番落ち着くなぁ、とか
あなた(店員さん)に会いに来てるんだよ、とか
そんな声が聞こえてきたら、嬉しいですよね。
○WHO (どんな人に売るのか)
誰に求められているか。求められたいか。を明確にします。
幅広い層の顧客をターゲットとしてもいいのですが、具体的にメインとなるターゲットを設定することで、より良い(求められる)お店になっていきます。
ターゲットを設定する際は、性別だけでなく、
「20代後半のOLで、スイーツ好きな女性」
「ランチは40分以内に安く済ませたい。男性サラリーマン」
といったように、具体的に考えるとイメージが付きやすくなります。
年齢・性別・職業・家族構成・飲食店を訪れる時間帯の5つを決めておきましょう。
具体的なターゲットが決まると、価格設定やメニュー作りもしやすくなります。
○WHEN (どの時間帯に売るのか)
どの時間帯をメインに営業するのかで、自分達の生活リズムも変わってきます。とても大切なことです。
飲食店の場合は、清掃にかける時間や、仕込みの時間も考慮しなければなりません。
その時間、誰が来てくれるのかを考えたり、実際に通行人の何割がどんな人なのか、リサーチしましょう。
ちなみに、吉○家とマク○ドナルドは、お店を建てる前にそういったリサーチを行ってから建てています。
そして、それを知っているチェーン店では、
自分達はリサーチをするコストを省き、間や、近くに店を建てまくっています(笑)
○WHERE (どこで開業するのか)
立地条件は、めちゃくちゃ重要なポイントです。
最初にお話した通り、美味い店ならなんでも売れるわけではありません。
また、しっかりとしたコンセプトが合っても、お店の雰囲気に合っていない土地柄や、人が全く気が付かない場所で開業しても、基本的に顧客は集まりません。
メインターゲットや、時間帯を考慮して、より顧客を得られる場所を探しましょう。
ビジネス街なら、美味さよりもスピードや安さが優先される時もあります。
それに合った大きさの店(席数)なのか。
ピーク時に出来るだけお客様を待たせずに、しっかりと回転するお店の作りなのかなど、立地によって全てが変わってくると言っても言い過ぎではありません。
待たせるということは、悪い印象を与えるということですから、リピーターが付きにくいということです。
ロードサイドのお店は、駐車場の広さ。止めやすさ。寄りやすさ。
その辺りを考慮して、場所選びをすすめてください。
○HOW (どんな風に売るのか)
まずは、接客について目を向けてみましょう。
接客におけるお店のルール(マニュアル)を決めたり、お店の雰囲気に合わせたスタッフの振る舞いは、どんなものがベストかを考えましょう。
チェーン店でもいいので、なんとなくのモデルを持ってとりかかると良いかと思います。
メインターゲットに受けの良い接客方法が何なのか、自分自身はもちろん。
それをスタッフに情報を共有して、良い店づくりを常にこころがけましょう。
飲食店は、チームワークです。
お店に入ってからは、接客やPOPですが、
お店に入るまでは、広告ですよね。
広告が「自分達をどう魅せるか」を握っています。
看板を用意したり、ホームページの作成。グルメサイトなどの情報を充実させるなどの宣伝も大切です。
広告にはお金がかかるので、予算を考えながらお店に合った広告方法を探しましょう。
アナログな方法ですが、
確実なのは、メインターゲットがよく訪れそうな場所にチラシを配ったり、看板を設置するなどです。
ここでもメインターゲットを意識して考えます。
~具体例~
アイデア「アメリカンテイストのカフェにしたい」
WHY アメリカに住んでいたことがあり、アメリカ文化に詳しい
WHAT 本場のインパクトのあるメニューを日本の食材でアレンジして提供する
WHO トレンドが好きな20代前半の学生・30代の男性でガッツリメニューが好きだけど健康も気になっているという既婚の男性
WHEN 11時から17時まで
WHERE 昼も夜も人通りが多いビル街
HOW アメリカらしく、元気のある接客。広告はインパクトのある看板を目立つ場所に設置・ネットでもHPを作ったりfacebookページを作って宣伝する。
ここまでコンセプト作りが進めば、大体の骨組みが出来てきましたね。
ここからそれぞれの項目に矛盾がないか、整合性が取れているかどうかをチェックしていきましょう。
他の人に意見を聞いてみるのもいいですね。
そして、このコンセプトを元に、メニューの価格設定や内装や外装など、細かい部分を決めていきます。
アイデアが固まってきたら、それに向け行動あるのみ!です。
初めての飲食店経営は、分からないことだらけで、不安も多いかと思います。
それでも、ここまでコンセプトを絞り込めたなら、あとは行動しながら修正していけば、イメージしたものに近いお店が出来るはずです。
お店の立地が決まれば、その周囲の競合店となるお店を一度は来店し、リサーチしておくことも忘れないでください。
お店の雰囲気や、どんな人がお客さんとして訪れているかなど、勉強になることも多々あります。
そこで気づいた事があれば、自身のお店作りに活かしてください。
ともあれ、飲食店の原点は、
お腹を空かせた人を満足させること。
そこに、アミューズメントを加えていくのが基本です。
皆様の「祝・初店舗」が、地域の皆さんに必要とされ、
満たし、満たされるお店になりますことを祈りながら。
僕にお手伝いできることがあれば、お声がけください。
料理写真家 岡本 光城