哲学とコミュニケーション学って何?
私は、オハイオ州のリベラルアーツ大学に通っており、二年の秋学期にやっと専攻を決めました。
一年生の頃は何を専攻するのか全然わからず、様々な入門授業を取っていたものです。
でもそのおかげで、さまざまな学問分野を一通り理解した上で、自分の好みに合うものを選ぶことができました。
今回は、私がメジャーに選んだ哲学とコミュニケーション学がどんな学問なのかを、紹介します。
もちろんまだ語れるほど学べていないし、間違った考えもあるかと思います。(先輩方、何言ってるんだという記述があったらぜひ教えてください。)
しかし、今私が知っていることや考えたことは全部詰め込むので、なんとなくこの二つの学問に興味があるなと思っている高校生は、本当に自分にあっていそうな学問かどうかの判断材料にして、学校選びの際に教授の数や専門分野を気にしてみてください。
学問を大きく三つに分けるカテゴリーとは(Humanities, Social Sciences, Natural Sciences)
実際に哲学とコミュニケーションの話に入る前に、大きなカテゴリー
- Humanities(人文科学)
- Social Sciences(社会科学)
- Natural Sciences(自然科学)
について説明したいと思います。
ざっくり話すと、人文科学は哲学や歴史など「人類の文化全般に関する学問の総称」です。感覚的には、実験などは行わず、文書や議論を通して人間についての理解を深める分野だと思っています。日本でいう文系ですが、経済学などは含まれません。
一方で社会科学は、経済学・国際学・心理学や、今回紹介するコミュニケーション学など「自然と対比された社会についての科学的な認識活動およびその活動によって生み出された知識の体系」です。人文科学に比べてもっと「科学」的アプローチを取り(フィールドワークや実験、文書の分析など)、社会についての理解を深めるイメージです。
最後の自然科学は、いわゆる理系分野。生物や化学、物理など「自然に属するもろもろの対象を取り扱い、その法則性を明らかにする学問」です。
カテゴリーの間にある学問もあり、例えば心理学は、脳科学的アプローチをとったら自然科学的扱いになる一方で、基本的には社会科学としてみなされます。
同じカテゴリーにある分野は基本的なメゾットや目的が似ていることもあるので、 興味がある分野と同じカテゴリーの分野を調べてみると、面白そうなものが見つかるかもしれません。ではざっくり基本情報を入れたところで、本題にいきましょう。
哲学:何を調べるべきかを考える学問
私の大学の専攻紹介ページでは哲学は以下のように紹介されています。
The philosopher is most concerned with conceptual questions, with tackling and (hopefully) "dissolving" conceptual problems. Which conceptual problems exactly? Well, it depends on the interests of the philosopher. Philosophical reasoning improves almost any inquiry, and, as a matter of fact, philosophers might inquire about law, science, art, religion, ethics, and the nature of existence and experience. (Just take a look at our courses offered.) With regard to the content of its inquiries, philosophy can be an exceedingly broad discipline.
今学期、「大学で哲学を教える意味」という議論をする場面がありました。そこで聞いたことも含めて私なりに哲学の位置付けを考えると、やっぱり学問の祖という面が大きいと思います。
例えば、科学とか物理は「世界は何でできているんだろう?」という根源的な質問から生まれているわけです。現代においても、例えば快楽を感じる脳内物質の研究は、「人のゴールは幸せ・喜びである」という考えに基づいています。その大元に取り組むのが、哲学だと思います。
つまり、人のゴールは本当に幸せ・喜びなのか。ただ脳内から物質が出て快楽を感じる状態を私たちは目指しているのか。そうじゃないなら何を目指せばいいのか。そんなことをぐるぐると考える学問。
なので、答えが出ない壮大な問題に対し、誰もが納得する理由をつけて自分の中で筋が通った論を打ち立てたいという人は、哲学に向いていると思います。幸せとは何か、とかね。
一方で、実際に目の前にある物がどうなるのか、自分が正しいと思っているいないに関わらない、絶対的な事実が欲しいという人は、社会科学含む科学に向いているのかな。
実際に哲学の授業ですること:たくさん読んで、考えて、書く
哲学といえば、リーディングが多いことで有名です。
実際どれくらいかというと、一学期の間に1000Pの教科書を読み終えて、後半は+αの資料を読むくらい。毎授業に向けて、少ないときは10P、多いときは100Pくらいの宿題が課されます。
基本的に大学で課されるリーディングは読み飛ばして要点を掴むことが多いのですが、哲学に関しては大切な一文を飛ばすとその後の話がさっぱりわからなくなることがあるので、なかなか難しいです。
でも基本的にアメリカ人であってもリーディングで哲学者の考えを理解できることは少なくて(日本語の哲学書を読んでも意味がわからないで終わる感じです)、授業での教授の説明や歴史的背景を通して、なんとか基本となるアイデアを理解します。
そのあとに、哲学者の問いや意見について、生徒が自由に手を挙げて発言するディスカッションがあることも多いです。他の授業だと、テキストに書かれている定義や説明を求められる場合も多いですが、哲学の場合は質問に対する答えはないので、それぞれが批判や賛同をしあってクラスで考えを深めます。
そして(うちの大学の)教授は、授業外でもわからなかったことを丁寧に教えてくれ、また生徒個々の生活や予定を気にしてくれる人が多い印象です。
定期試験はエッセイ形式(授業で話したディスカッション内容や読んだものを元に自分の意見を書く)が多く、ペーパーも多めです。
コミュニケーション:科学的な手法を使ってコミュニケーションの使い方や影響を学ぶ学問
コミュニケーションは新しくあまり有名な分野ではないので、結局何を勉強するの?と聞かれることが多いです。ちなみに私の大学のHPでは、
Drawing on classical tradition as well as on contemporary behavioral sciences, communication studies focuses on how people arrive at shared meanings through messages, or the symbolic processes through which meaning and social reality are created. The curriculum features courses from three basic tracks. Courses in rhetorical studies examine persuasive strategies, argumentation, verbal style, and forms of rhetorical criticism as they apply to public speaking, political discourse, issue campaigns, public relations, and other public messages. Human dynamics courses stress communication and its role in interpersonal relationships, groups, and organizations. Media studies courses focus on mass communication history, media literacy, the process of creating and distributing mass-mediated messages, and the effects of those messages.
と紹介されています。
この紹介にもあるように、コミュニケーションは大きく分けて「Rhetorical studies(修辞学)」「Human dynamics(人間工学)」「Media studies(メディア学)」の3つの分野があります。
コミュニケーションは社会科学に属するので、インタビューやアンケート、実験やテキストの分析を通して、効果的なコミュニケーション方法やどのように私たちがコミュニケーションから影響を受けているかを学びます。
私が 前学期とったGroup and Organizational Communication (Human dynamics)では、グループが効率的に働くためのリーダーシップの種類、企業が存続していく中で必要な視点や仕組みについての理論などについて学びました。感覚的には心理学と社会学・人類学からコミュニケーションに関係するものを引っ張ってきている感じでした。
わかりやすく言うと、人は生まれ持った才能でリーダーになるんだよ!という理論から、リーダーシップは後から技術的に学ぶものだ!という理論が主流になり、適したリーダーシップの形式はメンバーのやる気や知識の量で変わるんだ!という理論や、良いリーダーはメンバーの個々の力を強めることでグループをいいものにするんだ!という理論が生まれたというのを学びました。
留学生という観点で言うと、アメリカの場合、インターンシップや就職は専攻に関係があるものにしかビザがおりません。なので、コミュニケーションは分野として幅広い職に結びつけやすく、アメリカでの就労に便利だったりします。私は広告に興味があったので、それも考慮して専攻を決めました。
実際に授業ですること:グループワークを通して教科書を理解
私が今まで取った授業では、一つの授業に対して30Pほどの、教科書の一章分のリーディングを毎授業前に読むことが多かったです。
授業も教科書を中心に行われて、教科書に書かれていた専門用語の意味や、理論の説明を教授がしたり、生徒が手を挙げて答える形で進みました。
難しい理論を理解するために、授業内でのグループワーク(話し合ったり、与えられた事例に理論を当てはめたり)もたくさんしました。
試験は、エッセイを好む教授も、全てを選択肢制にする教授もいました。教授が空元気と呼びたくなるほどに明るいのもなんとなく特徴的だなと思います。笑
学校選びと専攻
哲学とコミュニケーションについて一般論のようなものを説明しましたが、試験の方式や内容も、大学によって異なると思います。
またリベラルアーツの場合、大学にいる数人の教授の専門分野によって授業の内容も大きく変わるので、気になっている学部の教授の専門分野やオファーされている授業をチェックするのも大事かなと思います。(総合大学だと細かく分かれているから、よほどマニアックなものでない限り、取りたい分野の授業がない!ということはないと思うけれど、確認するに越したことはないです。)
2019/01/25 amu