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紅く色づく季節

お子様な理想

2024.06.06 13:45

【詳細】

比率:男2

現代・その他

時間:約5分



【あらすじ】

社内で人気者の男性社員、結城拓海。

拓海に憧れている後輩の涼介は彼に恋愛について相談しようとしますが……


こちらは『かわいいシリーズ』の番外編でございます。

時間軸は、『かわいいが嬉しくて』と『かわいいのち大好き』の間のお話でございます。



【登場人物】

結城拓海:(ゆうき たくみ)

     社内で一番人気の男性社員。

     仕事も出来て、気遣いも出来て、高身長。


北山涼介:(きたやま りょうすけ)

     拓海に憧れている後輩。

     常に明るいムードメーカーだが、恋愛には疎い。



●社内・休憩室

   拓海が弁当を食べている。


涼介:あ、結城先輩!

拓海:おぉ、北山、お疲れ

涼介:お疲れ様です! もう、こないだどうして俺のこと置いて帰ったんですか?

拓海:え?

涼介:忘れたとは言わせませんよ! この間、せっかく先輩と飲みに行けて嬉しかったのに!

拓海:あぁ……お前の失恋癒し大会になった回か

涼介:うっ……

拓海:泣きながら、「俺の何がいけなかったん…

涼介:(遮って)その節は失礼しました!

拓海:あんだけ飲んで、ぐでんぐでんになってたのにそれはちゃんと覚えてるんだな

涼介:そりゃ覚えてますよ……俺、そのことが相談したくて結城先輩を飲みに誘ったんですから……

拓海:そうだったのか?

涼介:そうですよ! それなのに、ちゃんと相談する前に先輩いなくなってるし、同期の高橋には次の日苦情言われるし…

拓海:苦情?

涼介:俺のこと家まで連れて帰ってくれて、いろいろ世話してくれたらしいんですけど……

   他にもいろいろやらかしたらしくて、「今度からは飲み方を考えろ!」って怒られました……

拓海:あぁ、高橋らしいな

涼介:先輩! なんで俺のことあいつに預けていったんですか! 

   あいつ、いろいろ口煩いのわかってるじゃないですか!

拓海:あぁ、わかってたよ。でも、面倒見がいいのも知ってるからな

   お前のこと最後まで世話してくれるって

涼介:うぅ……

拓海:俺からも後で高橋にお礼言っとくから

涼介:はい……じゃなくて!

拓海:ん?

涼介:結城先輩、今度いつ空いてますか!

拓海:いつって?

涼介:今度こそ、俺の相談聞いてほしいんです!

拓海:……あぁ……

涼介:なんですか! そのあからさまにめんどくさそうな顔は!

拓海:めんどくさいな。正直、この間のこと考えると……

涼介:(遮って)今度はあんな酔っ払い方しませんから! 誓います!

拓海:(苦笑して)誓うって……

   わかったよ。でも、俺じゃなくても恋愛関係の相談ならもっと適任がいるだろ?

涼介:俺は結城先輩に聞いてほしいんです!

拓海:物好きだな?

涼介:物好きでもなんでもいいですから、お願いします!

拓海:わかった、わかった。ちょっと待っててな


   拓海、スマホを取り出してスケジュールを確認する。

   涼介、テーブルの上の弁当箱に目がとまる。


涼介:あっ!

拓海:ん?

涼介:美味しそうですね。その弁当、先輩の手作りですか?

拓海:そんなわけないだろう

涼介:え? じゃあ……

拓海:……彼女だよ

涼介:えぇ!

拓海:うるさい。休憩室で迷惑だろ

涼介:あ、すみません。でも、彼女って……先輩、いつからですか!

拓海:ちょっと前くらいからかな

涼介:……うそ……

拓海:はぁ?

涼介:だって、結城先輩ですよ! あの、社内のどんな女性社員のお誘いも、秒で断る堅物で有名な先輩が彼女ですよ?

拓海:……堅物?

涼介:いや、俺が言ったわけじゃないですよ!

拓海:(ため息)別にいいけど……

涼介:その結城先輩に彼女なんて……

拓海:悪いか?

涼介:いえ!

拓海:……

涼介:それで……

拓海:ん?

涼介:どこのどなたなんですか?

拓海:お前が知らない人だよ

涼介:社内の人じゃないんですか!

拓海:そう

涼介:どこで知り合ったんですか!

拓海:知り合ったというか、昔馴染み

涼介:えぇ! 王道パターン!

拓海:だから、うるさい

涼介:す、すみません……

   でも、結城先輩がまさか王道パターンの恋愛をされているとは思わなくて

   俺、てっきり、大人な出会いをして、お付き合いってパターンの方かと……

拓海:なんだそれ

涼介:いや、とにかくめっちゃびっくりってことですよ!

拓海:そうか?

涼介:それで?

拓海:何だ?

涼介:どんな方なんですか?

拓海:は?

涼介:だから、どんな方なんですか?

拓海:なんでお前に教えなきゃいけないんだよ?

涼介:だって、気になるじゃないですか!

   うちの社内のプリンスの結城先輩を射止めた女性がどんな女性なのか!

拓海:(苦笑して)なんだそれ

涼介:とにかく、気になるんですってば!

拓海:はいはい

涼介:やっぱり可愛らしい方なんですか?

拓海:そうだな

涼介:そうですよね! 彼女にするなら、小さくてかわいい子がいいですよね!

   ふわふわしてて守ってあげたくなるような。で、出来ればボンキュボンの子で、料理も上手でいつもお弁当とか作ってくれて。ちょっとドジっ子の要素とかあったらなお良しですよね!

   あ、もちろん年下で!

拓海:(ため息)

涼介:結城先輩?

拓海:お前、そういうところだぞ……

涼介:え? え?

拓海:そうやって理想に囚われてるから、いつも泣くはめになるんだぞ

涼介:結城先輩?

拓海:ちゃんとその人の内面を見ろ

   簡単に取り繕える外見と自分の理想にだけ目を向けてると、大事なものが見えなくなるぞ

涼介:はい?

拓海:(ため息)近々飲むか

涼介:はい!

拓海:お前にいろいろ説教したいことが出来たしな

涼介:え……

拓海:あ、高橋にも声かけておけよ

涼介:えぇ! 俺、またあいつに怒られるじゃないですか!

拓海:そうならないように頑張れよ、じゃ


   拓海、弁当箱をしまい休憩室から出ていく。


涼介:ちょっ! 結城先輩!




―幕―




2020.09.10 ボイコネ投稿

2024.06.06 修正・HP投稿

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