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ERRC

教育における、クロスエデュケーションとは

2017.11.23 07:30

クロスエデュケーションとは

 皆さんは、クロスエデュケーションという言葉をご存知でしょうか?体の片側だけトレーニングを行った際に、何もしていないはずの反対側にもトレーニング効果が見られるという現象のことです。


 脳卒中による運動障害においても、その有効性が報告されています。例えば、脳卒中による右側の片麻痺が見られる人の場合、動く方の左側の手足を使って筋力トレーニングを行います。そしてこれを続けた結果、左側しかトレーニングしていないにも関わらず、麻痺のある右側の手足も少しずつ動くようになるというのです。非常に興味深い話ですね。


 脳卒中におけるリハビリというのは、ゴールの見えない辛くて長い修行のようなものです。”動かない” ”できない”、という過酷な現実に向き合いながら地道に継続するためには、精神的な強さが必要になります。しかしこのクロスエデュケーションが有効であるならば、動く側を使ってトレーニングするわけですから、”できない”という挫折感を味わうことが減り、精神的な負担が少なくなります。さらに重度の麻痺の場合、リハビリを行うこと自体が困難ですから、クロスエデュケーションによるリハビリ方法はまさに画期的です。


 この「できることを発展させながら、できないことを克服する」という考えはリハビリだけでなく、あらゆる分野で重要な考え方です。まさに、教育にもあてはめることができるのではないでしょうか。私たちERRCは、ST気質の名付け親である森薫先生とともに、この ”教育におけるクロスエデュケーション” を推進しています。



教育への応用

 まずは、なぜ教育において、このクロスエデュケーションの考えが重要であるかを考えていきたいと思います。


 日本の教育では、まんべんなく全教科で平均以上の学力を維持する、ということにこだわる傾向があります (ブログ:悩みを抱える子どもたち) 。つまり、スペシャリストよりジェネラリストを重んじています。この考え自体を完全に悪いものだとは思いませんが、日本の場合は明らかに偏っています。


 事実、ほとんどの学校では、得意な教科を伸ばすことよりも、苦手教科の克服を第一に考えることが多いのではないでしょうか。最近では少しずつこのような考えにも柔軟性が生まれてきてはいるようですが、教育の根本が変わらない限りは結局同じことでしょう。


 ここで何が言いたいのかというと、このような「平均主義」はそれぞれの個性をつぶしてしまう危険性をはらんでいるということです。平均主義には欠かせない苦手教科の克服は、確かにある程度は必要かもしれません。しかしスペシャルタレント (ST) 気質に代表されるように、発達の凸凹がある子どもたちにとっては、ただの苦痛でしかないですし、苦手を克服すること自体が不可能な場合もあります。このような苦痛を強いられれば、やる気や意欲を失い、彼らの本当の才能をつぶしてしまうことになりかねません。


 いきすぎた平均主義は、完全に時代遅れです。これからは、学びの場にも個性を尊重した、自由な環境が必要です。好きなことを見つけたり得意なことを伸ばすために、教育はもっと自由に選択できる時代にならなくてはなりません。


 さて、このようなことを考えてみると、先ほどの脳卒中におけるリハビリの状況と似ていると思いませんか?動かない手のことばかりに集中していると、挫折感や疲労感を感じやすくなることでしょう。ST気質の子どもたちにとっても、苦手なことばかり強制されれば、同じような気持ちになるはずです。


 しかし、「できることを発展させながら、できないことを克服する」というクロスエデュケーションのように、動く方の手を使う、つまりできることから始めるということは、精神的にも大きな違いがあるのではないでしょうか。ST気質に関わらず、子どもの意欲ややる気は想像以上の可能性を生み出します (ブログ:意欲ややる気が子どもを育てる)。


 さらに周りから「すごいね!」という評価があれば、自己肯定感が高まり、苦手分野にもチャレンジするという新たな一歩にもつながります。まさに、”動く手足を使ってトレーニングすると、なぜかトレーニングしていないはずの動かない手足も動くようになる”、というクロスエデュケーションの効果なのではないでしょうか。


私たちERRCは、家族支援メンタルサポート協会の森薫先生とともに、この”教育におけるクロスエデュケーション”を推進しています。

皆様からのご意見をお待ちしております。

E-mail: errcjapan@gmail.com