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THINKERS(シンカーズ)

学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2第2回の報告と予告

2024.06.09 06:40

こんにちは。

学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)第2回(2024年6月3日@Google Meet)の報告をします。

メンターは、産業エコ系VTuber KIWAMU(きわむ)さんです。

第2回のテーマは、再生可能エネルギーを使った発電

工学研究科 博士課程後期修了のメンターが、わかりやすいスライドで説明します。


前回、エネルギーや、仕事の原理といった、中学の理科の教科書に出てくる言葉の定義をきちんと確認するところから始めたので、今回も、まずは定義の確認から始めましょう。

再生可能エネルギーとは、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの(エネルギー供給構造高度化法より)。

ムム、「再エネ」などと省略して軽い気分で使っていましたが、厳密に定義するとちょっと難しそうですね。

でも、ポイントを押さえれば大丈夫。

前回フォーカスした火力発電は化石燃料を使った発電でしたが、化石燃料は大昔からの堆積物なので、いつかは枯渇してしまうと言われています。

そうではなくて、エネルギー源として永続的に利用することができることが、再生可能エネルギーのポイントです。


代表的なものを見ていきましょう。

まず、水力発電

河川にダムを設置するなどして水の位置エネルギーを貯え、それを用いて水車を回転させることで発電する方式です。

前回見たように、日本は戦後まもなくまでは水力発電の割合が多い、水主火従という発電構成でした。

現在でも、カナダや南米、北欧に多い発電方式です。

前回あれこれ例を考えたエネルギーの変換で言うと、位置エネルギーから電気エネルギーへの変換となります。

そのため、水資源はもちろん、山など水を蓄えられる場所があることが必要になり、これが可能かどうかは土地柄次第です。

前回、化石燃料を使った発電は、燃料を燃やす際に排ガスとして、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(GHG)を排出するので、環境への影響が問題となっているという話をしましたが、水力発電では何かを燃やすわけではないので、発電自体では二酸化炭素を排出しません。

エネルギー源として永続的に利用できるか、という点で言うと、まず長いスパンで考えた場合、水を貯めて、山から流して、電力を得て、水は最終的に海に合流したり地下に潜ったりして、その後蒸発して、空気中に水分が溜まり、山に雨が降り、山から水が下りてきて…と永続的に利用することができます。

短期的にも、夜間、電力の需要が少ないときに余った電力で、揚水といって、水を山に汲み上げておくことで、永続的な利用可能性を高めています。


風力発電は、風を受けて風車などが回転し、そのエネルギーを発電機に伝えることで電力を生み出す方式です。

運動エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、風は地球の自転などから生まれるものなので、地球がある限り、エネルギー源として永続的に利用できます。

場所は、山などの地上のほか、洋上もあります。

洋上風力発電についても、設備を海に浮かべるものだけでなく、海底に土台を建てるタイプもあります。

デメリットとしては、風のあるなしで発電量が変わる、設備が金属でできているので、潮の影響で錆びるのが早い、火力や水力に比べて、風車自体の寿命が短い、といった点が挙げられます。


太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電気に変える方式です。

シリコンや化合物などの半導体でつくられており、ソーラーパネルに光が当たると、半導体の中で電子が動き、電流が生じ、日射強度に比例して発電します。

水力、風力に比べて、設置できる場所が多いのがメリットです。

いわゆるメガソーラーだけでなく、建物の屋上に置くことも一般的になってきました。

次世代エネルギーと言われる「ペロブスカイト系太陽電池」は、街中にあるビルの窓全部で太陽光発電を行うことができる可能性がある、と言われています。

メンターは、いつかノーベル賞を獲ってほしい、と力説していました。


その他の再生可能エネルギーについても、簡単に触れておきましょう。

地熱発電は、地下のマグマなどによって熱せられた高温の水や水蒸気の力を用いて行う方式です。

火力発電同様、熱エネルギーを最終的に電気エネルギーに変換するもので、火山国である日本の特色を生かした発電方式と言えます。

太陽熱発電は、太陽光のエネルギーを、熱として取り出してタービンを回転させる方式です。

中国やアフリカの砂漠のように、遮蔽物がないところで行われている例があります。

バイオマス発電は、動植物などの生物からつくり出されるエネルギー資源のうち、石油などの化石燃料を除いたもののことで、それを燃焼またはガスにしたときの熱エネルギーを用いる方式です。

動植物などの堆積物である化石燃料を燃やすと二酸化炭素が排出されますが、バイオマス発電でも二酸化炭素は排出されます。

ただ、例えば植物が育つ過程では、光合成によって二酸化炭素を吸収します。

二酸化炭素を吸収したものを燃やして発電した結果、二酸化炭素が排出されても、プラスマイナスゼロ、という考えから、化石燃料と区別されています。

速く育つ植物や動物を用いれば、枯渇する心配もなく、エネルギー源として永続的に利用することができます。

日本でも、いろいろな火力発電所が研究をしているところです。


再生可能エネルギーを使った発電のメリット、デメリットをまとめておきましょう。

まず、メリットです。

・純国産のエネルギーであり、エネルギー自給率の改善につながること

なぜエネルギー自給率が重要かと言うと、他国からエネルギー源を輸入していると、その国と仲が悪くなったり、輸入先の情勢が不安定になったりしたときに、輸入が途絶えてしまうリスクがあるからです。

・二酸化炭素をほとんど排出しないこと

日本を含む120以上の国と地域が、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること(カーボンニュートラル)を表明しています。

・水力発電については、余剰な電力を揚水にまわすことで、電気の無駄が出ないように使えること

・枯渇のリスクがないこと


次はデメリットです。

・コストが高いこと

これは、火力発電のコストが安過ぎるとも言えます。

・導入に時間がかかること

・土地利用や生態系等の環境への影響リスクが存在すること

二酸化炭素が出ないから再生可能エネルギー万歳、ということではありません。

この点は次回、詳しく見ていきます。

・電力供給が安定しない

この点は、再生可能エネルギーの発電が十分なときに火力発電の稼働を減らして、不十分なときに火力発電の稼働を増やす、という調節が考えられています。


ここで、原子力発電についても見ておきます。

原子力発電は、ウラン燃料の核分裂の際に生じる熱を使って水を水蒸気にし、その力でタービンを回して発電する方式で、いうなれば化学エネルギーを電気エネルギーに変えるものです。

火力発電のように、化石燃料を燃やすわけでないので、二酸化炭素は出ません。

ただ、自然に存在しない反応を用いるため、再生可能エネルギーではありません。

ちょっと不思議な立ち位置とも言えます。

ウラン235の原子核に中性子が当たると、陽子と中性子を結び付ける力が不安定になり、膨大な熱エネルギーとともに核分裂が起きて中性子が出てきます。

中性子1個をぶつけると中性子が増えて、その中性子がさらにウラン235にぶつかると、核分裂が起きてエネルギーと中性子が出てきます。

最初の中性子を投げ込むと、ウラン235が存在する限り、自動的に反応が進んでいくので、エネルギー効率が大変良いです。

もしこれが安全に使えるのであれば、非常に有効です。

メリットとしては、以下が挙げられます。

・資源の安定供給が可能なこと

ウランは、石油のように中東に産地が固まっているわけではなく、世界のいろいろな場所で採れます。

・二酸化炭素をほとんど排出しないこと

・得られる熱エネルギーが莫大なので、結果として電気代が安価になること

デメリットもあります。

・事故が起こった際の被害が大きいこと

水力発電でダムが決壊した場合などを考えると、原子力発電だけの問題とは言えないと思いますが、チェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原子力発電所事故、福島第一原発事故を見てもわかるように、後世まで影響が残る点は無視できません。

ただ、福島第一原発事故の後でも原子力発電所が稼働できているのは、関係各社が防護策を十分に採っていること、原子力規制委員会が厳しめに審査していること、があるのだろうと考えています。

・使用済み核燃料の処理が問題となること

・初期投資にお金がかかること


このように、原子力発電は難しい問題なので、しっかり議論をして、それぞれの立場で正しく決断を下すことが必要だと考えます。


最後に、世界各国の電源構成を見てみましょう。

さきほど言及したように、カナダやブラジルは水が豊富なので、水力が多いです。

フランスは、70%が原子力なのが特徴的です。地震や津波、火山、地盤などの点で災害リスクが低いからだと考えられます。

前回見たように、日本は、石炭・石油・天然ガス(LNG)など化石燃料への依存度が84%です。

世界全体で見ると、石炭を含む化石燃料の割合は60%程度です。

先進国は、原子力、風力、太陽光の割合が大きく、石炭が少ない傾向にあります。

発展途上国は50%くらいが石炭で、中国やインドはさらに石炭が多いです。

前回見たように、石炭火力発電への風当たりが強くなってきていて、COP(コップ、国連気候変動枠組条約締約国会議)では、将来的に石炭火力発電をなくす方向で議論が進んでいます。

そうした場では、なにかと日本が非難されることが多いように感じるのですが、こうして世界各国の電源構成を見ると、日本が石炭火力発電を止めたとしても、果たして他の国もすんなりと止めるだろうか…と考え込んでしまいます。

国ごとの特色、状況や、他国との関係も電源構成に影響しますし、地政学的なリスクも考えないといけません。


以上、まとめます。

再生可能エネルギーは、エネルギー源として永続的に利用できますが、それぞれメリット、デメリットがあり、さらに、地政学的な観点から適切な電源構成を考える必要があるので、例えば、火力発電を再生可能エネルギーに完全に置き換える、ということは難しいのではないかと考えています。


質問タイムには、

水素は再生エネの一つとして、先生は扱いますか?」

という最新の話題が出ましたが、メンター曰く「ものによる」そうです。

水素については、第4回で詳しく取り上げる予定です。


第3回(6月10日20:00-21:00)のテーマは、エネルギーと環境問題です。

申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。

参加費は無料、前提知識は必要ありませんので、お気軽にご参加ください。