1つの役所で戸籍が取得できる(戸籍広域交付)制度
戸籍の広域交付制度
相続手続きには、原則、被相続人の出生から死亡までの戸籍(転籍、婚姻、改製等により調製された除籍、改製原戸籍、戸籍等一切)が必要となります。従前は、戸籍謄抄本の請求は本籍地市区町村の役場に限られておりました。郵送でも取得可能ですが、時間と労力がかなり必要でした。そこで、令和元年の戸籍法改正により、一定の条件のもと、本籍地以外の市区町村の役場の窓口において、戸籍謄本を取得することができるようになりました(新戸籍法120の2)。令和6年3月1日から施行されています。
戸籍の広域交付の特徴
➀ 1つの市町村の役場で取得が可能です。本籍地の役所にかぎりません。
➁ 窓口直接申請交付となります。郵送不可です。
➂ 請求者は戸籍に記載されている本人(原則その戸籍から除かれた者含む)又はその配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、又は子、孫等の直系卑属の戸籍の謄本も取得が可能です。なお、兄弟姉妹と同じ戸籍に請求者本人または請求者の父、母が記載されていなければ兄弟姉妹の戸籍は請求できません(改正戸籍法120の2、10条)。
➃ 上記③の本人からの請求のみです。委任状よる代理請求や司法書士等士業からの職務上の請求は認めらていません。
⑤ 磁気ディスク化された戸籍謄本(全部事項証明書)が取得対象となります。何らかの理由により、紙ベースでのもの、一部の者のみの抄本、住所の変遷を辿る戸籍の附票は取得できません。従来どおり本籍地の役所で取得することになります。
現在の運用状況
2024年6月現在で、お客様が戸籍の広域交付制度で取得した状況をお聞きすると、役所の対応、各ご家庭の戸籍の変遷の歴史等により時間がかからないケース、時間がかかるケースはマチマチで、場合によっては、即日取得できないケースもあるようです。ですが、以前の郵送等の面倒さ、時間、依頼コストを考えると、ご本人でとれるところまで取得していただくのが第一選択としてはいいのではないでしょうか。
相続の上での注意点
戸籍の広域交付で取得した場合で、一番注意しなければいけないのは、相続人が確定できたわけではないということです。しっかり戸籍を見て次のことを確認しましょう。
1 被相続人の出生~死亡まで戸籍があるか(操作の手違い、渡し忘れ等あるかもしれません)
2 養子や認知の子がいるのに見逃していないか(なぜ、認知の子に気がつかないのか)
3 相続開始がいつか(死亡日によって法律の適用が違う場合があります)
相続人を確定するには
1 法務局で法定相続情報一覧図を取得しましょう。取得することで、相続放棄をした場合等一部の例外を除き、相続人を確定することができます。
2 司法書士、行政書士、弁護士、税理士等相続を専門とする事務所で相続人を確認するしてもらうのもひとつの方法です。上記専門家は、1の法定相続情報一覧図も代理で取得できます。
戸籍の広域交付制度と法定相続情報証明(一覧図)をぜひご利用ください。
(今回一部引用) 日本法令
相続のご相談は、
川崎市麻生区新百合ヶ丘・稲城市
司法書士田中康雅事務所