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【コラム】丸山凛太朗 退団インタビュー

2024.06.12 05:09

退団インタビュー

 

丸山凜太朗[SO]

「10番の大切さを学びました」

 

「たらればですけど、あのケガがなかったら、まあまあうまくいってたシーズンだったのかなあと」

 2シーズンで退団することになった丸山凜太朗は振り返る。

 昨年12月16日、BR東京と行われたリーグワン開幕戦。丸山は15番を着けて先発した。司令塔はボーデン・バレット。バレットにとっては、トヨタに加入して初めての公式戦でもあった。試合が始まると丸山はバレットのタクトでラン、パス、キックをリズムよく繰り出し、東海大学時代から言われていた「ファンタジスタ」の片鱗を披露した。同時にチームが見せたアタッキングスタイルも、シーズンへの期待を高めるものだった。

「開幕戦では僕は15番としての仕事をやろうと思っていて、特にダブルSOということはなかったです」

 だが丸山は前半18分、足を引きずりながら退場する。タックルに入ったときに相手に乗られ、膝のじん帯を負傷したのだ。懸命のリハビリを経て第5節の花園L戦のリザーブに名を連ねた。だが先発予定だったバレットは当日朝に体調不良となり、10番はティアーン・ファルコンに。第6節のBL東京戦では、バレットとの交代出場。以後、丸山の名前がメンバーに入ることはなかった。2人が同時にピッチに立ったのは開幕戦が最初で最後だった。

「ケガが治ってから、僕自身のパフォーマンスも良くなくて」

あまりにも大きな「たられば」だった。

東海大で名を馳せた丸山がトヨタを選んだ理由は「日本人のSOを育てたい」と聞いたからだ。だが今季、10番を着けたのはボーデン・バレットとティアーン・ファルコンの2人だった。

 シーズン中に、新しいチームでプレーすることを決めた。親をはじめ周りからは引き留められた。

「このまま社員として生きていくのか、結構考えました。会社にいれば安泰。でも、“あの時出ておけばよかった”と後悔するのだけは嫌だった。別のチームでもう1回頑張ろうと」

 社員ではなく、プロ選手として生きていくことを決めた。ゼロからスタートだ。

 大学に入ったときもそうだった。入学して初めて10番を着けて出た2018年度の関東大学春季大会では、初戦で福田健太主将率いる明大に33―62で大敗を喫した。

「入るチームを間違えたと思いました(笑)」

 そこから一歩ずつ上がっていった。もう一度始めることに、ためらいはない。

「トヨタで成長したのは精神面。試合に出られない経験は初めてだったので、“ああ、こういう感じなんだ”と。その中で、自分がやれることをやった。精神面で多少は強くなったし、先輩とラグビー以外のことも色々話せて、幅は広がった」

 昨季はFBウィリー・ルルー、今季はボーデン・バレットと、世界最高峰の選手から吸収することも多かった。

「ボーディの凄いところは、プレーというよりコミュニケーション能力。プレーに関わる全ての選手に、オンフィールド、オフフィールド関係なく“こうしてほしい”とはっきり伝える。それは本当に勉強になりました。去年のウィリー(ルルー)もそう。自分のやりたいことを伝える。10番の大切さを学びました」

 新たに所属するチームは、まず試合に出られる可能性があることが最優先だ。

「自分が試合に出て、チームを強くしたい」

 ファンタジスタの新しい旅が始まった。