person 38 作・草場あい子
2018.12.13 09:35
20代。男。電車。結婚式帰り。座らずに壁に寄りかかって外を眺めている。
今日祐介の結婚式だった。
高校時代から付き合ってたコと。
相原さん。
大人しくて、あまり感情が顔に出ない、目立たないコ。
祐介は高1の時、相原さんを好きになった。
一目惚れで。相原さんに振り向いてもらえるように頑張っていた。
相原さんも次第に祐介に心を開くようになった。
そんな相原さんを見て、俺は相原さんのことが好きになった。
誰にも言ってない。
俺の秘密。
相原さんは俺に似ていた。
あまり感情を表に出さない所とか。冷たい奴って誤解される所とか。だから独りでいる所とか。
でも、祐介はそんな相原さんを救い出した。
俺の時と同じように。
だから言えなかった。相原さんに。祐介にも。ほんとのこと。困らせたくなかったから。
今日、2人とも幸せそうだった。
嬉しい。…ことなのに、上手く笑えなかった。
俺はまだ相原さんのことが好きだった。
こんなことなら告ればよかったのだろう。
けど、もし今高校時代に戻れたとしてもきっと告らない。
だって。僕が好きになった時には、相原さんの目には祐介しか映っていなかったから。
告らなかったこと、後悔はしてない。これからもしない。2人が幸せならそれでいいって思うから。
けど、これは自分への言い訳なのかもしれない。
傷つくのが怖い、自分への言い訳。
2018年12月13日
草場あい子