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全国翻訳ミステリー読書会

第12回東東京読書会レポート(執筆者:島村浩子)

2016.06.30 16:05





 去る5月29日、第12回東東京読書会が無事に終了しました。当日お集まりくださったみなさま、告知からTwitterなどでご協力くださったみなさま、ありがとうございました。本日は当日の様子を少しご報告いたしますね。第12回の課題書はスティーヴン・キングの『ゴールデンボーイ』。映画化されている「刑務所のリタ・ヘイワース」(映画邦題〈ショーシャンクの空に〉)と「ゴールデンボーイ」の二篇が収められています。



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<文庫裏表紙の紹介文(旧版)>


トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い……不気味な二人の交友を描く「ゴールデンボーイ」。30年かかってついに脱獄に成功した男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。キング中毒の方、及びその志願者たちに贈る、推薦の一冊。



 毎回ディスカッションの前に自己紹介/簡単な感想タイムを設けているのですが、今回はこの時間から大いに盛りあがりました。キング作品を初めて読んだという方から長年のファンの方までいらして、バラエティに富んだ感想+鋭い指摘がいくつも!



 ディスカッションに入ると、長さやインパクトの強さもあってか、「ゴールデンボーイ」に関する発言が多かった印象です。以下に当日の発言や指摘のあったポイントのうち、ネタバレにならないものをご紹介します。



・話としては「ゴールデンボーイ」がおもしろかった。でも、読み返すなら「刑務所のリタ・ヘイワース」。


・ホラーは怖いけれど、心理サスペンスは大丈夫(読める)ということがわかった。本書も好き。


・「刑務所のリタ・ヘイワース」が短いのはアンディの話をレッドが語る構成だから。


・ビールのエピソードがよかった(「刑務所のリタ・ヘイワース」)。


(以下は「ゴールデンボーイ」について)


・数字の「3」が頻出する。これは第三帝国を意識してだと思う。


・トッドが両親を殺しちゃう話かと思ったら違った。


・ブリジット・オベールの『マーチ博士の四人の息子』を思い出した。


・トッドは成績が落ちてしまうところがヌルい。本物のエリート・サイコパスではない。


・老人と少年がかわいそう!


・老人にナチの制服を着せてしまうという少年の稚拙さ。


・老人と少年の力関係の変化。


・老人と少年の変化が対応しているところが様式美。



 特にトッドという少年のキャラクター、彼がドゥサンダーに会わなかったらどうなっていたかという点については活発に意見が出ました。大きく分けると「トッドはドゥサンダーに影響されてああなった」派と「ドゥサンダーと出会わなくても似たような道を歩んでいた」派ということになりますが、細かいところでは考え方に幅がありました。みなさん、自分と異なる解釈にも「へえ〜」もしくは「なるほど」と耳を傾ける雰囲気だったので、発言がしやすかったかなと思います。



 ここでアンケートに寄せられた今回の読書会に対する感想もご紹介します。



・ネタバレを気にせず話ができる場所がこんなに楽しいものとは!


・読書会は初めてだったが、発言もしやすく、とても楽しい時間を過ごせた。


・キングをホラーと思って避けていたのを反省。


・とても楽しかった。キングはたくさん積んであるので読もうと決心。


・知らない世界に出会えるのが読書会の魅力!


・キングのおすすめ本を教えていただけてよかった。


・はじめは人数が多すぎて話しにくいのではと心配だったが、いろんな読書経験の方の話を聞けてとても面白かった。


・読書の幅を広げるよいきっかけになった。



 当読書会の人数ですが、いまは世話人も含めて約20名、グループに分かれずディスカッションしています。初めての方も発言しやすかったと書いてくださっていて、嬉しいかぎりです。口頭では「垣根が低い」という感想もいただきました。初めての方もリピートの方も、ぜひ次回以降の参加をご検討くださいね。



 そうそう、最後にキングのおすすめ本について書いておかなければ。「収容所のリタ・ヘイワース」からの刑務所ものつながりでは『グリーン・マイル』、「ゴールデンボーイ」からの老人×少年ものとしては『クリスティーン』、ほかに『ペット・セマタリー』『ファイアスターター』『デッド・ゾーン』『11/22/63』『シャイニング』などがキングファンの方々から推薦され、読む気になった方もいらしたようです。



 次回の東東京読書会は9月3日(土)開催予定です。課題書はこれから決めますが、開催1カ月前ぐらいに告知をしたいと考えていますのでお楽しみに!







島村浩子(しまむら ひろこ)


東京の下町在住。主な訳書はロビン・スローン『ペナンブラ氏の24時間書店』、スーザン・ブロックマン『薔薇のウェディング』など。好きなことはミュージカル鑑賞(含む宝塚)。ゆるめのベジタリアン生活実践中。ツイッターアカウント @rhiroko




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