「星どろぼう」アンドレア・ディノト 文 アーノルド・ローベル 絵 Arnold Lobel
アーノルド・ローベルの「星どろぼう」のお話は読んでいると不思議な気持ちになります。星を盗み、捕まり、ひとりだけ願い事を叶えられなかったこのどろぼうを見ると、この絵本の中でこのどろぼうが、いちばん人間らしい存在なのではないかと思えてくるのです。
アーノルド・ローベルについては説明は不要でしょうか、がまくんとかえるんくんシリーズを始めとして数多くの絵本を出版し、人気を博している絵本作家ですね。
この「星どろぼう」は絵としては「いろいろへんないろのはじまり」と似て(同書ではそれがハッキリとしたコンセプトにまで高められていますが)、少ない色数で描かれた絵で作られています。星に照らされたような黄、オレンジ系でまとめられ、そのどれもがぼんやりとした淡い光を浴びているようです。
冒頭のどろぼうの心情を説明する語りで
「心の奥では自分だけの星をひとつ、欲しいと思っていました。
心の奥のその奥では、星という星を、全部自分のものにしたいと思っていました」
と語られます。
その後どろぼうは夜空の星を全て盗み、しかし最後に月まで盗もうとしたところ、捕まってしまいます。村人たちは星を夜空へ返そうと試みますが、何故か、星が落ちてきてしまう。どうしたら良いのかと困っていると、ある男の子が、願いを思い浮かべながら星に触れると、その星が夜空へ戻って行ったと言います。
願い事は、空の星にするものだから、星は戻っていったのだ、と。村人たちは次々に願いを込めて星に触り、星はまた夜空へ戻って行きました。すべての星がまた空へ戻り、そのとき、男の子が、どろぼうに言います「おじさん、ねがいごとが、できなくて、きのどくだね」と。しかしどろぼうは不思議な返事をして、このお話は終わるのです。
夜空の星を眺めるときの不思議な気持ちが、このお話にはひっそりと詰められているような気がします。
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