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FanFic 20⚔️ ⚠️

2024.06.19 14:07
月のような闇の色は【ミコウォ】【パンウォ】サンプル

20230707


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などを指し、その基準は当サイト管理者によって判断されます。また世情によって基準が変動する場合があります。

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⚠️このページにはNSFW作品を含みます。

以下本文


こちらはサンプルです。全文ではありません。

作品にミコウォ前提パンウォを含みますがサンプルにおいては一部カットしています。また、完成品は成人向けとなりますがサンプルにおいてはミコウォのキスシーンまで載せています。

オルタ姫様(闇落ち的要素)につき、シリアスな雰囲気で進行します。

個人的な妄想捏造が甚だしく、成人向け部分を含めなんでも大丈夫なかた向けですよろしくお願いします。

サンプルぶんは間に合ってよかったです。完成品は後日。


こちらはサンプルです。全文ではありません。

作品にミコウォ前提パンウォを含みますがサンプルにおいては一部カットしています。また、完成品は成人向けとなりますがサンプルにおいてはミコウォのキスシーンまで載せています。

オルタ姫様(闇落ち的要素)につき、シリアスな雰囲気で進行します。

個人的な妄想捏造が甚だしく、成人向け部分を含めなんでも大丈夫なかた向けですよろしくお願いします。


月のような闇の色は


☆彡


 ビザンテオンはほとんど崩れて、原型もなくその残骸の広がるだけとなった。

 瓦礫の中から這い出て、痛みに震える脚でなんとか立ち上がる。視界にあるのは、地に転がる俺たちを嘲笑う魔王と、その間にひとり佇んでいる影。

「ミコト、さま、ッ……」

 主君はこちらを見ない。勇敢だった彼女の背中は、どこか陰気に見えて、ひどく困惑した。

「っあ゛、は……」

 自身の口から、血が吐き出される。自分の肋骨が折れていることに、咳をして気付いた。内臓にも傷がついているだろう。

 抱えていた小さなドラゴンには崩壊による怪我はないようだが、やはり依然として具合が悪そうだ。安定した場所に下ろして、体をひと撫でする。

「ひめ、……っ」

 ぼうっ。そのもとへ寄ろうとした俺を阻むのは、突如目の前に立ちはだかった炎の壁。これは、今、姫が出した炎だろうか。

 大丈夫かと焦ったような声が聞こえると、ふらつく俺の体が掴まれて転倒を防がれる。平気だとだけ伝えてその鎧を軽く押し返した。

 炎の壁は、ゆらゆら、ゆらゆらと不安定だ。それは使い慣れない力であるためか、ああ、それとも、貴方は、苦しいのであろうか。

 彼女はおそらく先程まで、ディアガーと対峙していた。

 おいと制止する声を無視して、少し熱くてもどうでもいい、消えかけの炎の壁を通り抜ける。そして今にも倒れる拙い足取りで、主の前まで。

「私……戻れなくなっちゃったよ」

 弱々しく発せられた声は、怯えと、戸惑いと、収まり方を忘れた憎悪が溢れていた。

 予想はしていた。敬愛する師の仇と対峙した時、彼女の中の憎しみが抑えられなくなったら、その時はもしかしたら、と。

「……姫。私は……貴方のそばにいると約束いたしました」

「……」

 色のなくなった瞳が揺らいでいる。

「姫」

「……わた、し、もう、全然、きれいじゃないよ……」

「……貴方が、どのように変わろうとも、私は貴方のそばにおります。たとえ、貴方がご自分をお嫌いになっても、私は変わらず貴方の執事です。……これではいけませんか」

「……」

「だいじょうぶ、です、姫。わたし、は、ッ、ぁ、……ッ」

 脚がもうもたなくて、体が崩れてしまう。

──ちゃぷん。

 しかしこの体は何かに包まれて支えられたようで、地に倒れ込むことはなかった。

「……ウォーレンス…………」

 彼女が触れてくれているようだが、どうしてか力が入らなくなっていくばかりで返事すらできない。

 ふっと視界が暗くなって、唇に柔らかい感触が触れる。さらさらと頬の横を過ぎていく何かがくすぐったい。そして何か体の奥底が、あたたまるようだ。

「少し、休んでいて、ウォーレンス」

──闇を封じたら、英雄の名前を捨てて、ふたりきりで旅をしよう。

 朦朧とした意識にはじゅうぶんに言葉を咀嚼できず、俺はただ、その落ち着いた声に安心して眠ってしまった。


★彡


 国王夫妻は非常に寛大であった。近衛兵や使用人、そしてもちろん国民に対し、誰もが認めるほど慈愛に満ちていた。その温情的な心はただひとりの王女にも継がれ、王族一家は皆に愛されていた。

 だから、両陛下が急逝された時、国はひどく悲しみ、長く悼んでいた。まだ幼い王女がそれを受け止めるには尚早で、突然だった。

 居住まいを正し、支給の執事服で身を隠す。初めに命じられたものは城中の掃除や食器を磨いたり単に雑事であったはずだが、どうしてかいつの間にやらかの姫君に気に入られ、両陛下の御好意により彼女の世話係を任さられることになった。慌ただしく走り回り、勉強を抜け出し、流浪のハンターと密会して城を飛び出していくことには、その時から変わらず苦労していたものである。

 しかし、朝日にきらめくブロンドを梳かす時間も、眠れるまで彼女に本を読む夜更けも、行商の菓子で我儘をあやした日も、忙しさの合間をぬって一家で過ごせる時の姫の笑顔も、愛おしく感じるには、この地が故郷でないことなどどうということもなかったのだ。

 腫れた瞼、震える体を私に押しつけ、彼女はいつか誰もがいなくなってしまうのかなんて、不安を呟く。

「大丈夫です、姫。私は必ず貴方のそばにおります。

 ほら、どこかに行ってしまったりしませんよ」

 か弱い子どもは小さく頷き、眠り落ちてしまうまでしがみついていた。


☆彡


 湿気を帯びた空気と硬い床──いや、地面か。半目を開いて周囲を確認する。洞窟、と呼ぶにはやや浅いだろうか。風の当たらない奥のところで小さく焚き火が燃えていて、外は弱い雨が降っていた。

 姫はどうなった。ミコト様は、ビザンテは、仲間たちは。まさか自分だけ助かっているなんてことはないか。誰が俺を介抱していた。焦る気持ちで起き上がり、記憶を手繰る。姫が泣きそうな顔で立ち尽くしていて、それから私は、私たちはどうなったのだったか。息が詰まる。血の気が引いてく。

──あ。

 人の声が聞こえて、反射的にそのほうを見る。

「っ、ぁ……、ひ、め……!」

 現れた主君の姿に、彼女の無事を見て安堵する。

「ウォーレンス、よかった、起きたんだね」

 ここを出た時は降ってなかったんだけど、と言って彼女は苦笑する。そしてもう少し火を強くしようかと焚き火に手をかざせばその通りに、先より幾分か大きな火になったのだ。私が彼女に何か問うよりも前に、彼女は水の入った水筒をこちらへ渡して、体の具合を心配するのだった。今のところややだるさがあっても痛みはないので、問題ないことを伝える──しかし自分の記憶ではいくつか骨が折れていたように思うが、胸部などを触れてもそういった傷を感じたりもないのである。

「2日、ですか……。……、……その間の介抱をさせてしまい、申し訳ありません」

「あはは、いいの、ウォーレンスが無事で嬉しいよ」

 姫の風貌は以前とは違っていた。憂いの色を帯びて、美しく腰まで伸びていたブロンドは乱雑に千切れプラチナのように変色ししかし艶めいている。

「……姫、御髪を」

「ぁ……」

 コームで慎重に髪を解き、鋏で毛先を整える。さらさら、さらさら。そうしていると、そっと小さな声で彼女が謝罪を呟いたので、何のことかと尋ねる。

「……本当に私のそばでいいのかなって、思って……」

「ミコト様……、……寧ろ、私を貴方のそばにおいてほしいのです」

 私は貴方のための執事。どうか、私が不要になってしまうまでだけでも。

「いらなくなったりなんかしないよ……、私の、大事な、ウォーレンス」

 ありがとう、彼女は声を振るわせて言った。

 多分俺たちはしばらくの間、エルアへ帰ることができない。執政官含め城の者たちや国民、そして旅の仲間だった、彼らには、とても気の毒──それどころではすまないだろうが。とにかく今は、姫には休息が必要だった。

 出来ましたよとコームを数度通して終了する。

「ぁ……髪の色、ちょっと変わっちゃったから……」

 彼女が自分の毛束を摘んで気まずそうな顔をするので、何か気に入らなかっただろうかと問うてみれば、そんな風に言うのだ。僭越ながらと前置いて言葉をかける。

「月の色ようで、今の髪も素敵ですよ」

 いつか仲間のパーンが闇の色に染めて帰った時、彼の行ったこと、彼の身に起きたこと、彼の複雑な思いを、目の前に突き付けられたようでひどく胸が痛んだ。何もなかったことには出来ないと、向き合うことを強制されて、試されるようだった。

「あ、りがと……あはは」

 あ、やはり出過ぎた発言だった。前置いてはいたもののやはり使用人としては先の発言は不躾甚だしい。すぐに後悔がやってきて、何か、何か釈明しなければと、そう思っているうちに彼女から名前を呼ばれて、慌てて返事をする。

「申し訳ありません、その、私──」

 こちらへ体を向けた姫が、ぐ、と俺の肩を掴み、顔を近付けて、そしてふわりと唇を合わせたのだ。

「ッ!? っふ、ひめ、ッんむっ!?」

 柔らかく数度、口を食んだかと思えば、彼女の舌が俺の唇を撫でて、そのまま口内へ侵入しようとする。流石に阻止しなくてはと姫の体を押し返そうとして、しかし、

「っは、ぁ、……っ、……ふぁ、っ……、ひめっぇ、……っ」

 力をうまく入れられない。姫に触られたところから火照っていく。柔らかい肌にただ触れるだけの抵抗は、ほとんど無駄に過ぎなくて、温い舌に溶かされていってしまう。

 

「っは……あは」

 口を離した彼女がこぼす笑みが、どうも不敵に見えて、目を逸らしてしまう。それでも彼女は俺の顔を向き直させて、また深くキスをするのだった。



いまだ夢現の


☆彡


「やってごらん。ほら、想像してみて」

「しかし私は……」

 私の主人は大丈夫だよと微笑んで、私の腕に手を添えた。そして目を合わせて、揃えて深呼吸をする。

 体の奥底がふつふつと温まっていく。そうしたら言われた通りに、手の平に想像する。俺の腕に触れていた彼女の手が、血管を辿るように指先まですうっとなぞって、

──ぼぅっ。

「ッ! ぉ……あ……?」

 魔導書無しにこのような現象が起きるなんて、ただでさえついこの間イソウェルの力の話を聞くまで、無いことだと思っていたのに。

 ミコト様に補助されながら出た火はすぐに消えてしまったが、彼女はほらと嬉しそうに、さすがだねとか、やったね、すごいね、なんて言って俺を褒めるのがくすぐったい。

 真宝力と名前が付けられていることを、後に教えられた。ビザンテを倒した英雄を見てみようと、クララという女神が気まぐれにやって来て言ったのだ。本来、全ての生物がその体に保有するという真宝力。曰く、かのイソウェルがビザンテを封印した頃、魔族やモンスターら闇の勢力が収縮しほとんど必要性を失っていったために、ドリランド界の人間たちはその力を忘れてしまったのだ。忘れて、弱くなっていった。しかし忘れているだけ。力を必要としたイソウェルの力の継承者が、体の奥底からそれを呼び覚ますこと。平凡な人間がその強い真宝力に触発されて自身の力が呼び覚まされること。そうして我々人間は古の奇跡を思い出すのだ。

 森や浜辺で、街中などでもない静寂な場所で、星空の下ほんとうにふたりきりになった時のほうが彼女の機嫌が良いので、こういうくすぐったい時間も悪くないと思った。


☆彡


 モンスターの咆哮と振動に顔を向ければ、そこによく見た姿を見つけてしまう。動きの速いあのモンスターでは、彼らにはやや分が悪いだろうか。私たちのいるこの場所は崖のようになって、ここから下のモンスターを狙うには敵の隙も大きいのだが。私の主人は彼らのほうを見つめている。

「……ミコト様」

 すぐ戻りますと彼女の手の甲にキスをすれば、彼女は頷き、短くキスをして、私を見送るのだった。そうして、獣の頭部を目掛けて飛び降りる。

 真宝力を意識して使えるのならば、禁惚龍々の反動も多少緩和される──それでもやはり何度も使用するには、俺自身の真宝力の大きさが足りなすぎるのだ。

 脚部に火を纏い、力強く、モンスターの首の辺りに蹴りを落としてやる。消滅するまではいかずとも、敵はその勢いに地面に伏し、怯んだ様子である。

「っ、ウォ、レンス、さ……!?」

 直前、モンスターからの攻撃を避けようとしていたポロンはすっ転んでいて、ひとまず彼を抱き上げやや離れた場所に移動する。

「ウォーレンスさん……!」

 彼を降ろそうとするも、心配したんだよと言って俺にしがみついてしまって離れない。モンスターを倒してからにしてくれとどうにか引き離せば、その瑞々しい苺色の瞳と目が合う。少し背が伸びただろうか。

 手袋を外して、ポロンの銃を持つ手に触れる。

「……構えて、銃の先に集中するんだ」

「え……と……?」

 ふらふらと立ち上がるモンスターに銃を向けさせて、彼の呼吸に合わせる。

 真宝力が渡っていく。そして、

「っわ…………!?」

 炎の塊が標的まで吹っ飛んでしっかりと命中し、それは即座に爆発した。モンスターは咆哮をあげて黒くぱらぱらと散っていく。

 何が起きたのかと目を丸くするポロンに、できたじゃないかと声をかけて彼の頭を撫でてやれば、照れくさそうに含羞んで笑った。

「……ウォーレンス…………」

 俺を呼ぶパーンの声はひどく控えめで、何か言葉にしようとして、しかし顔を歪ませて詰まらせてしまう。そんな様子であった。どこか怪我をしたかと聞いてみても、気まずそうに目を伏せ首を振り、そして俯いてしまった。

「姫さんは一緒じゃないの?」

 ああと上のほうを俺が見やれば、ふたりも追ってそのほうを見る。ミコト様は変わらずこちらを傍観しているが、少し私を急かしたそうだ。

「パーン、お前にも真宝力を……」

「まほ……、ッえ、な、な、な、に」

「このまま、槍に集中して」

「っはぇ、え、え」

 鎧の覆っていないところの腕には手を添え、彼の首元に頭を付ける。

「……もう少し落ち着いてくれ」

「ぐ…………っ、っ」

 鼓動が速くて、呼吸が浅い。仕方ないがこれで合わせることにしよう。

 体がまた温まっていく、真宝力が彼のほうへ伝わっていく。少しぴりぴりとして、そして槍の刃先から雷が現れて前方を裂いていった。

「うお……すっげ、なんだこれ……」

「はは……よかっ……、ぁ……」

 真宝力切れだ。正直やはり、あまり向いていることではなかったと、ぼうっと考える。

 倒れそうになる俺を、そばのパーンが支えようと手を出すも、それより先に水の柔らかい塊が包み込むのだった。

「ぁ……みことさま……」

 塊は大きな手のように私を掴み込んで、主の元まで引き戻していく。気遣わしげな顔のふたりをその場に取り残して。



幻想は泥のようで


☆彡


 あのふたりが行方を晦ませてから、月の巡りを数度見た。立ち寄った街で聞き込みをしても情報はないし、エルアに戻ってきた様子もない。ふらっと姿を現したかと思えばすぐに去ってしまって、俺は、対処できない寂寥感を唇を噛んで耐えていた。暫くぶりに見た男の顔色は悪くはなくて、うまく生きながらえているのなら、良かったけど。

 そしてまた月がふたつ巡った頃だった。

 適当にとった宿のベッド。正常な呼吸で、彼が眠っている。

 山の崖の下で、彼が倒れていたのを見つけた時は、ひどく焦った。この山は霧が濃く出てしまう時があるというから、近くにミコトが見当たらないのはそのせいで逸れてしまったのかもしれない。辺りを探してみるも、ミコトが見つかるまでここにいられるほど、目の前の彼を放置できるわけがなかった。近くの町で診てもらえば、大事ないということだったので今はここで休ませている。その間、前の街で合流したブリリアンと共にポロンが、山へ行ってミコトを探している。

 彼に信頼されていると気が付いた時は、ひっそり、とても喜んだものである。求めていた強大な力を得て、だけど作戦に失敗して、のこのこと戻ったあの時。懺悔を、皆への思いを、無様に涙まで流して打ち明けた時。心配したと泣き出して俺に飛び付くポロン、闇に反転した姿も好きになると言葉を掛けてくれたミコト、呆れたみたいに、しかし柔らかく微笑んで手を取ってくれたウォーレンス。ポロンやミコトは以前とそう変わらない態度であったが、ウォーレンスについては明らかに心を開いて接してくるので、少しの照れくささもありつつ実際内心は嬉しい気持ちでいた。以前はどうも俺の一方的な信頼感だったが──とはいえ戦力としての信用はされていたようには思う──時々気を緩めて笑うようになったのが愛らしく見えて、ふと触れてみたくなったり、もしかしたら、愛し合うことだってできるような気がして、らしくもなくふわふわとした感情があった。彼は元々そう豊かに愛情を表現するほうではないから、ギャップ、とやらに揺らがされて、大袈裟に嬉しくて、だから、そういう幻想を浮かべていたんだと思う。

 瓦礫の広がる敵地。覚束ない彼の足取りは不穏な炎を踏み越えて、その先の、主人のもとへ。押し退けられた鎧の箇所に触れると、ずきずきと、体の奥が痛む感じがした。あいつが自分の主を最優先にして生きていることは承知の上だったし、勿論、俺がミコトを心配していなかったわけではない。

 俺がもっと、力が強ければ、言葉を器用に使えたら、ずっと前からあんたたちと生きていたなら。明るさを失った彼女の表情も、血を滴らせ足を引きずる彼の姿も、見ないでいられただろうか。

 布の擦れる音に顔を向けて、彼と目が合った。気が付いたのか。具合はどうだ。腹は空いていないか。困惑、動揺、不安の帯びた紫の瞳に声を掛けようとして先に、彼が口を開く。

「…………ミコト様は」

 ひと言目は、やはりそれなのか。

 俺の心配も全て虚しく、お前は自分の事よりも、主人のほうばかりを気にする。彼には当たり前なのだろうが、俺にとってみればウォーレンスの事も大切で心配だというのに。

 知らないと答えると彼は、きっ、と睨みつけるような目で、ああほら、立ち上がってすぐにでも出て行こうとするのだ。ベッドから降りるところをおいと肩を掴んで、座り直させてやる。酷い怪我ではなかったがまだそう本調子ではないはずなのだから、せめて少しでも休んでから出てはどうか、夜にはポロンとブリリアンが戻るので会ってやってはどうかと、宿のサービスで貰っていたパンと水を押し付ける。

「悪いが、すぐにミコト様を探しに出る」

 世話をかけたなと感謝を述べて、彼は扉へ向かってしまう。

 嫌だ。やっとまた会えたのに、引き戻す好機だというのに。なあと腕を掴んで無理矢理引き留め、顰める彼の瞳に訴える。

「……っ……寂しいんだけど」


中略


☆彡


 流れ星はどこへ行くんだろうと思った。探しに行きたいと言ったら、あなたは困ったように、呆れたように、それとも、愛らしいとでも言うような顔で笑って、私を寝かしつけていた。立派な大人になったら見つけに行きましょうとか、夢の中でなら流れ星にも会えるかもしれませんねとか。

 からからと小瓶を飛び出し、手の平に広がる星々のことを思い出した。きれいだと喜んだら、あなたはやっぱり、愛おしそうに微笑んでくれるのだ。連れ出すことはできませんがと私に謝って、でも星を拾えたでしょうと私をあやしてくれていた。流れ星に願い事をすると叶うと言うなら、彼は流れ星なんだと思った。星空を見上げると甘い香りがする気がした。

 両親と会えなくなって、悲しくて、寂しかったけれど、心配症な執政官、剣とハンターの師匠、そして傍を誓ってくれた彼、誰もが優しかったから、温かかった。

 でも。

 ビザンテを倒さなくちゃいけないこと。それはイソウェルの力を持つ者の使命だったから、悲しんでる暇なんてなかった。なかったけれど、師匠を失った時から、私の中ではなにか黒いものがずっと渦巻いていた。寂しい、悲しい、恨めしい。体の奥にヘドロを溜めたまま、私は、ディアガーと対峙してしまった。

 そして、私は仇を……ディアガーを殺した。その時、どろり、全身が溶ける感覚がした。憎い、許さない、そういう感情に支配されてしまってどうしようもなかった。ディアガーの持っていた憎しみが、そのまま私へ乗り移ったみたいに、自分では止められなかった。

 どこかへ連れ出して欲しかったけれど、それは多分、あなたじゃないとだめだった。

──せめて、せめて彼だけは。


 月の光が、今日はぼんやりとしていた。薄暗い中見える彼をそれでも綺麗だと思った。それが、すうと眠っている姿でも、彼から自分以外のにおいがするとしても。

 無防備な唇にキスをして、ウォーレンスのシャツを剥いてやる。適度な筋肉に輪郭を整えられた、その体に散らされた赤。ひとつずつ撫でて舐めて上書きしていく。そして今度は脚を脱がせ、全身をなぞって確認する。

「…………」


後略

サンプルは以上です。