命日の箱庭にて
2018.12.16 02:28
自分の命日に閉じ込められた。
雨上がりの輝きもそのままに、セミも時を止めている。
区切られたのは僕の生活空間であるこの街周辺だ。
こんなに明るいのに僕は影を落とさない。
この角を曲がると、走る子供が宙に浮いている姿があって、ここにはあくびをする猫で、あそこには林檎を落とす女の人、ブランコから飛ぶ高校生…
気が付いたら僕はいつも街の大道路にいる。
そこには野次馬と、ひしゃげた車、潰れた僕と無事な猫。
僕が最後に見たそのままの黒い煙、そして僕の手を握る君の姿。
僕がどれだけ近くで見ても、君の顔は動かない。
乾いた太陽の光に輝く、その涙が美しくて。
君のその顔を見飽きる事が出来たなら、僕はここから解放されてしまうのだろうか。