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デンタルケア ① ~ 無麻酔での歯石取りについて ~

2019.03.31 03:25



こんにちは。

ベルク帝塚山の山下です。



本日は、非常に高い意識をお持ちな方と、全く意識されてない方とに分かれてしまう、『デンタルケア』について個人的意見を述べさせていただきたく思います。


長文かつ2~3部作(すみません‥)の予定ですが、是非ともお付き合いいただき、ご参考となれば幸いです。





さて、近頃は歯磨きや無麻酔での歯石取りを行うトリミングサロンが増えました。



実店舗(ドッグサロン)のベルク帝塚山でも『歯石取りや歯磨きをやって欲しい』というお声をいただきます。


こういったご要望があるということは愛犬のデンタルケアにお悩みの方が多い、ということだと受け止めています。



しかし、その都度お断りさせていただきました。

残念そうにされるお客様に申し訳ない気持ちでいっぱいです。



実際のところ、かなり嫌がる子は難しいかもしれませんが、【できる・できない】だけで言えば…できます。


『じゃあ、やってよ!』って話ですが、あえて行なっていません。



サロンで『歯石取り』や『歯磨き』を行うことで、どうしても飼い主様のデンタルケアへの意識が低くなってしまいます。


『トリマーにお任せ』、といったお考えになってしまって当然です。


しかし、それでは愛犬の口腔環境は根本的には良くならないと思っています。


お断りしている理由はそういった懸念があるから、です。




では、なぜお任せではダメなのか?




ここからは無麻酔で歯石取りを行っているサロンさんに対し、否定的な意見になってしまうのですが、全く他意はございません。


あくまでベルク帝塚山という、一店舗の偏った考えになります。




それでは、なぜ無麻酔での歯石取りや歯磨きをサロンで行わないのかを以下に詳しく述べたいと思います。



▲ 歯石がかなり付いた状態。こうなってからの処置より、こうならないようにケアすることが重要です。







ベルク帝塚山が無麻酔での歯石取りをしない理由



まず簡単に言うとトリミングサロンの範疇を超えています。


皮膚や被毛に付着している汚れを取るのとは訳が違います。

口腔内は非常にデリケートな場所です。



そして、定期的にケアせずに表面に付着した歯石を一気に取ることはデンタルケアとして推奨できません。



デンタルケアとは定期的なケア…つまり、ご自宅で行なうべき簡単な歯磨きなどの日常的なお手入れを含む、飼い主様の高い意識のことだと私は思います。




つまり、ご自宅でのケアが全く無い状態で…



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『口臭がすごい臭いし、原因であろう溜まりに溜まった歯石をどうにかしたい』

⇓ ⇓ ⇓

『歯石が固くて取れない、あるいは怒って噛んでくるから自分ではどうにもできない』

⇓ ⇓ ⇓

『病院での歯石除去手術を考える』

⇓ ⇓ ⇓

『でも麻酔が心配、あるいは経済的ではない』

⇓ ⇓ ⇓

『じゃあ、サロンで無麻酔での歯石取りを…』


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という流れが良くないと思っています。




心臓に疾患がある、あるいはかなりの高齢犬であるということなら話はまた別ですが…。



無麻酔での処置だと犬が動かないように保定し、鉗子やスケラーといった器具などを用い、歯石を【割る・砕く・削り取る】などといった方法になります。



表面に付着した歯石を削り取るだけなら相当暴れる子でない限り可能かと思います。



・しかし、歯の裏側は?


・奥歯のホントにホントの奥は?


・歯周ポケットはどうでしょう?



無麻酔では絶対に取れません。

歯茎を傷付けるリスクも増えます。


こういった部分は我々人間でも頑張って耐えないと辛いところです。

ワンちゃんなら嫌がるのは当然です。



しかし、麻酔をかければ隅々まで綺麗にできます。


本当に口腔内の環境が悪く、歯石まみれだったり、歯周病に罹ってしまっているくらいの状態なら治療も必要でしょう。


歯石を取る、歯をキレイにするといった処置だけでなく、抜歯もせざるを得ないでしょう。


これはトリミングサロンでは到底できないことです。



とはいえ、もちろん麻酔のリスクもゼロではありませんのであまりに高齢になってから慌てて歯石のことを考え出すのではなく、幼少期からデンタルケアを考えるべきです。


乳歯が残っているのかどうかなどの確認もできますし、口元を触られることに抵抗を持たれることも少なくなります。


乳歯残留(二枚歯)は歯のトラブルの元凶にもなり得るので、仔犬の時からデンタルケアを積極的に行うことは非常に重要です。



 ▲ 乳歯残留(二枚歯の)状態。



口元を触ると怒って噛んでくる…といったトラブルも幼少期から当たり前のように触れるような信頼関係を築いておけば、成犬になってからでも安心です。




とにかく、全身麻酔なんて、その麻酔のリスクを上回るようなリスクがある場合以外は、しないに越したことはありません。


つまりは、歯のことで獣医さんに処置(治療)をお願いせざるを得ない状況にしてはいけないのです。



ベルク帝塚山は、根本的に口腔環境を改善せずに、表面上、目に見える歯石を除去し、それだけで問題解決!となってしまっていただきたくないという考えです。



決して麻酔での処置を推奨しているわけではありません。






歯石除去後がゴールではなく、そこからがデンタルケアのスタート



歯石除去を行なったほとんどの飼い主様が、『除去すれば終わり』とお考えのようです。


これは大間違いで、麻酔手術であろうが、無麻酔処置であろうが、除去してからがデンタルケアの始まりです。


ただ単に歯の状態がリセットされただけです。


しかし、歯石除去を行なうと、今まで陶器のようにツルツルだった表面のエナメル質も削られることにより、ザラザラになってしまいます。


コーティングが剥がれた状態になっているようなものです。


そうなると、以前よりも速いペースで汚れが付着しやすくなります。



当然、今まで以上にご自宅でのケアが不可欠となってきます。


そうしなければ、せっかく歯石取りしてもらったとしてもわずか数ヵ月で元通りです。



こういった肝心な部分の説明をせず、表面の歯石だけをサクッと除去するといったやり方の無麻酔処置なら中途半端に期待を抱かせてしまうだけで根本的な解決に繋がることもなく、新たな問題も浮上させてしまうだけです。



その問題例を以下に挙げます。


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・表面にある歯石の内側で歯周病が進行していた。

 実は元凶である歯石そのものが歯と歯茎を固定していた状態。

 その歯石を取ったことで、ボロボロでグラグラの歯、膿んだ歯茎が現れた。


   ⇒ 結果的に抜いたほうが良い…というか本当は抜かないといけない(動物病院へ)



・歯周病に疾患しており、歯肉が腫れていて歯石取りができない


   ⇒ 根本的な歯周病の治療をしないといけない(動物病院へ)



・鼻腔に膿が溜まってしまってる場合もあるが、判断できない


   ⇒ 酷い場合は頬を膿が突き破る。早急に画像診断などで確認が必要(動物病院へ)




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以上のことが明るみになります。



これらが分かったということ自体は良いことなのですが、結局のところそこから先は病院で、しかも麻酔による処置をしてもらわないといけないのです。




つまり、どうしてベルク帝塚山で歯石取りを行わないのかというと‥、



『愛犬の口腔内を気にかけず、定期的なケア無しで溜まった歯石を取って終了』


⇓ ⇓ ⇓ ⇓ ⇓


『また歯石が付いたら、溜めてから削って除去 』


⇓ ⇓ ⇓ ⇓ ⇓


『表面に付着している歯石を取っているだけで、口腔環境は悪いまま変わらず』



… という流れを確立したくないのです。





何も歯磨きだけがご自宅での定期的なケアではありません。


歯磨きも強くし過ぎることで弊害もありますし、歯石が形成されにくい食事を与えることで口腔環境を整える方法もございます。



そういったことに飼い主様が目を向けて頂くことこそが、定期的なデンタルケアの第一歩だと考えています。




長くなってしまったので、それらの方法は次回にてご紹介したいと思います。



 ▲ 成犬の口腔環境としては理想的な状態。