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ChikuChiku bear

ベア小話 その4 猫と羊 そしてクマ

2024.06.25 01:51


彼女とは何年の付き合いになるだろう....。

昔、東京に「種山ヶ原」という糸紡ぎの道具や織り機などを扱うお店があった。そこで彼女が働いていたときに出会い、仲良くなった。

そのあと岩手県に移り住んだ彼女は、「はらっぱ羊」(カントリーヘッジ)を立ち上げ、ウールにまつわる仕事で生計を立てながら、羊や猫たちと共に生活している。

あれからもう30年以上が経つ。

今も細々ながら、連絡を取り合っている。実際に会ったのはほんの数回だけれど。


ある日、私が「ちくちくベアを立ち上げました」というお知らせメールを彼女に送ったら、こんな返事が返ってきた。


「中略 〜 ちくちくベアのサイトの’黒ベア’が特に好きです。4年前にやってきて3年間一緒に暮らした長毛の黒猫むんとにも似ている。 毎年冬の厳しい寒さの時期に開く『羊いっぱい展』の最中に食べられなくなり、 会期が終わって4日間見続け、2月29日に逝ってしまったむんと。 うちにいる2匹の猫(母さんと息子)はむんとを受け入れなかったので、 家の中を仕切って暮らさせていたのですが、昨年くらいから仕切りを外し、 少しずつ慣れてきたところだったのに… むんとのいない日々にようやく慣れてきた私。 黒のベアからまたむんとの可愛さを思い出していました。」


そのあとも何度かやりとりをしているうちにふと、この黒ベアは彼女のところに行くのが、互い(彼女と黒ベア)の幸せにとって一番いいのかもしれないと思いはじめた。そう思ったら居ても立っても居られなくなり、さっそくベアの首にチャームを付け、顔のトリミングをし、彼女がどういう人なのかをこのベアにこんこんと話して、「岩手で彼女や動物たちと楽しく幸せに暮らすんだよ」と言ってから、「〇〇ちゃんの小さな神さま」というカードを添えて箱に入れた。別れはいつもそうだが、少し涙が出る。

数日が経ち、彼女からこんなメールが届いた。


「思いがけない贈りものにびっくりして泣きました。 

ちいさな神さまも我が家にびっくりしているのでは… どこに落ち着いてもらえば良いのか…と うろたえたというのが正直なところです。

 ほんとにウチで大丈夫?と 肩に抱いて何度も聞いていました。 愛らしい目がきょとんとして、 なんでそんなこと聞くの?と言っているみたい。

 いまは、小さなかごに落ち着いて座っています。 心地よくいてくれる感じがしてほっとしました。 小さな収穫かごは今日入手したもので、 まるで準備したようにぴったりです。

 黒猫むんとに似ているわけではないけれど、 持っている雰囲気がむんとなのです。 きょとんと人を見つめる感じ… むんとと呼んでもよいかしら。 いっぱいお話ししながら一緒に暮らします。

 今日はよく眠れそうです。」


この日はぐっすり眠れたそうで、朝寝坊したら羊の’くるるん’が待っていたらしい。メールを読んだ私も幸せいっぱいになって涙が出た。

むんとと一緒になってはじめての朝は、かごに入った’むんと’と一緒に散歩して、交流を深めたそうだ。

’むんと’、岩手の新しい場所で、善き仕事をしはじめたね。楽しむんだよ。ありがとう。

ふたりとも、とても幸せそうだ。




誰かのために手を動かすこと。

これは人間にしかできない「幸せの種まき」だと思っています。

自分の住む世界を幸せにすることが、人間として生きる唯一の’仕事’であると信じているので、こんなすてきな物語を生み出せたことが、最高の喜びです。

人とモノも、愛でつながるのだなぁ、とつくづく。