ショートショート 241~250
241.寝たきりになった人の脳波を読み取り、その夢を書籍化出来るようになった未来では、人気作家は皆眠っている。
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242.「これは消したい自分を殺せる銃です。頭に突きつけてバン!っとね。
でも使い過ぎはいけませんよ。」
まず痛い時期の自分
次は振られた自分
失敗した自分
あの自分
この自分
あとは
バン!!!
「忠告したのに。全ての自分を殺してしまったようだ」
僕は放心した男を尻目に店を閉めた。
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243.今や声優はボーカロイド化され、
その声優が亡くなっても永遠に声だけは在り続けるようになった。
アニメーションと声優の時間的感覚は失われたが、100歳を過ぎる祖母の好きだったアニメの声優が、今私の好きな声優なのは少し感慨深いものがある。
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244.彼は声を売ったらしい。
筆談で話す老いぼれた老人に今声は何処にあるのか聞くと「そこら中」と答えた。
ああそういえば自動販売機や電子広告、至る所から爽やかな青年の美声が聞こえる。
これが自分の声だと老人は言い張っているが、真偽がわかる事は一生無いのだろう。
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245.皆が寝静まった頃、僕は一人和室へ向かう。
四方を囲む襖絵は、それ全てで一つの桃の大木になる。
そんな絵の中で、子供達が遊んでいるのだ。
桃を食べ、戯れ遊び、寝転んで…
それを見るのが楽しい。
ただ一つ、帰ろうとすると子供達が此方を向いておいでおいでをするのだけ、少し怖い。
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246.「叶わない願い事をするのには
もってこいの流れ星だなあ」
大きな大きな流れ星が
僕の頭上に流れ着く
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247.「な、なんだ!?真っ白だぞ!」
「あれ!?なんだ!何もな」
実験室にいた男が叫び出したと思ったら、消えてしまった。
「博士これは…」
「うむ。これは彼という存在を五分早めたのだ。
これで宇宙五分前仮説が仮説ではなくなったぞ!」
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248.恐竜を復活させた日本人が次に研究したことは、
恐竜の美味しい調理法だった。
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249.A国で異様に落ちている紋章入りの鉄の塊と、同じようなものがB国にも見つかったので「古代、我々の国は兄弟だったかもしれない」として友好関係を築き、とても仲良くしているのだが、
その大昔、A国とB国は敵対しておりその鉄の塊は互いに打ち合った大砲の弾だと言うことは、神様しか知らない事だ。
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250.地面に大きな穴が空いた。
それは只管に暗く、また石を落としても何の反応も無い。
更にそこへ降りた勇敢な冒険家はもれなく一人も帰ってはこなかった。
そして遂に冒険家の端くれの僕も降り立った。
暫く降りると突然下が輝いて、そしてある声が響いた。
「ようこそ!地球新ステージへ!」