第20話 新しい仲間達。
太陽と蟒蛇。太陽は言わずとしれた恒星である。そして蟒蛇は酒豪とも関連付けられる大蛇の事。
「凄いものを司るな」
今までだって、普通に生活するだけなら途方も無いほどに凄い影響を及ぼすものだらけだった妖精たちの司る対象に突然として「存在そのものが」凄いものが加わってしまった。
「ちょっと! 何やっているの!」
そして理由は分からないがペスティがポカポカと俺を叩いてくる。
「何だよ」
「どうして上位妖精と契約しちゃうのよ! 最初にあなたの上位妖精として契約するのは私だって決めていたのに!」
「仕方ないだろう。契約できるって出てきたんだから」
「もう! ちょ! あなた達何よその『ニヤニヤ』した顔と『あーあ』って呆れた顔は!」
いや、まあそのままだと思うし……何なら中級妖精を微笑ましく見ているとかありそうだなと思ったが。
妖精としての位が高くなると精神的にも成熟するのが妖精の特徴のようなので、多分ペスティ基準で見れば少なくとも子供っぽいところに見えるペスティよりは大人っぽくなるのではないかなと思ったが。
「よろしいでしょうか」
「はい」
「こちら、私の連絡先でございます」
「は?」
「御用があればお店の方でも此方でも、好きな番号にご連絡下さい」
申し訳ありませんがお時間が迫っておりますので。そう言って店長さんは連絡先の書かれた紙を渡すと家を後にする。
「なんだったんだ」
「なあ、誠。時間大丈夫か」
「もうすぐ騎士団長の人に呼ばれた時間」
「あっ、もうか!」
「さっきぶりだね」
「何で先に帰っているんですか、ベルモットさん」
「なに、客人を迎える側としては、な」
別に飛竜まで持ち出してあんな騒ぎを起こしたのであれば今更一緒に来ても俺は良いと思う のだが。 しかし、何か事情があるのか一度詰所に一人だけで戻ってきた騎士団長は笑顔で俺たちを出迎えてくれた。
「じゃあ、早速会ってもらおうか」
第三会議室に通された俺を待っていたのは中々様々な見た目の人たちである。
「あ! 来たのです!」
「その方が」
「な! 何処が強いんだ!」
「……」
「へー、お宝見たいな」
「ニャハハ、よろしくねー」
翼が腕に生えた人、眼鏡を掛けた男性、背の低い少女、ロボット……? そして……ドラゴン? そして最後に猫耳の女性。とにかく、沢山の人? だよながいた。 いや、外見は人なのである。しかし、尻尾があるとか翼があるとか、色々こう……何かが微妙に違う。
「あの、この人たちは」
「私から説明します」
そこで、メガネを掛けた男性が話しかけてくる。
「初めまして。私はカツラ。王国の一等学院にて魔物学の教師をしております」
「どうも」
「そして、彼女は小人族の生徒で私の研究室の助手をしてもらっているマリオンです」
「マリオンよ」
先程の身長の低い女性が話しかけてくる。
「それで、何を」
「ずばり、私たちの願いは魔物の生態研究。ダンジョンの攻略についての研究です」
「その協力者として、あんたが推薦されたってこと」
「あの、話が」
何が起きているのか、そう思うとベルモットさんが説明してくる。
「ああ、君に遂行してもらうミッションだよ」
「ミッション?」
「私から説明します」
今度は、受付嬢さんが話を引き継ぐ。
「私達の村にいた頃にはレベルも低いため特にありませんでしたが、冒険者には一定以上の強さがあるとミッションという課題の達成が課せられます」
「それは私の場合には治安維持と戦力の増強、という形で成されるのだが」
「俺の場合は……魔物の研究への協力」
「じゃあ、次スズがお願いするのです!」
そして、スズという鳥と人の両面性を持つ少女(マリオンさんよりは少し大きい)が話に入ってくる。
「私の願いは立派なレディになる事! ママみたいな大人になる事です!」
「ママ」
「因みにその少女のママは『スカイクイーン』の二つ名を王国から受け継いでいる、ジェネラルハーピーの一族の当代女王だ」
まて、オロガが今とんでもないことを口走ったような。
「そして、次に依頼したいのはその人形の願いをかなえることだ」
「人形」
「まあ、そもそも適性検査にクリアできないなら意味が無いのだが。まあクリアするだろう」
「正気? カールバンシリーズの七十二番より前のナンバーの自動人形よ。悪魔の人形とも言われる中でも、ソロモンシリーズと呼ばれるいわくつきの人形よ。それがこんな男に」
「マリオンの言葉は良いから、まずは前に行ってみてくれ」
俺はそうベルモットさんに言われて、人形の前に向かう。すると、人形は動き始めた。
「起動シークエンス、正常。ターゲット・アビリティ・オールグリーン」
人形は起き上がると、俺の前にお辞儀をして喋り始める。
「おはようございます。新たなるマスターよ。私の名はクローセル。よろしくお願いいたします」
「は、はい」
それを見た瞬間に、周囲の空気が変わった。
「にゃはは、本当に人形が動くなんてね」
「魔物図鑑が埋まるどころじゃないですね」
「ねーねー、これ凄いの?」
「そんな、ありえないわ。私には見向きもしなかったカールバンシリーズが……跪くなんて」
「さて、クローセルを従えることが出来た以上人形の願いも叶えないとな。と言っても、あくまでもカールバンシリーズの願いは主である事。人形の認める主でい続ける事だから簡単だな」
「え、あの」
「ねー、そろそろ私もお話ししたい」
そこで、小さなドラゴン? のような少女が話しかけてくる。
「私、飛竜のビアニカ! よろしくね。お仕事は、お宝集めを手伝ってくれる事!」
「お宝集め?」
「ドラゴンは生涯をかけて価値のある物を集める習性がある。そしてドラゴンにとっての価値とはすなわち魔力だ、長年使い古された武器。珍しい秘宝、その他なんんでも言い。それらを集める事だ」
「よろしくね」
「よろしく、お願いします」
「最後に私だけれど、まあ私の願いが一番大変だと思うよね」
「あなたは」
「私はメッセル。しがない釣り人だよ」
「はい」
「でね、私の願いは妖精のお手伝いをすること」
「妖精」
「ただし、私の妖精は『大海原の妖精』という上位妖精なんだよね」
上位妖精。
「そして、彼女が一度は大海原で釣りをしているところが見たいって言うから、それを叶えてあげたいんだ」
「それなら、船があれば」
「君、内陸国で海まで行くのに別の国を通らないといけないし、何より魔物がいて大きな船を出しても安全に帰ってこられる保証のないそれを叶える事の大変さが分からないのかい?」
ああ、そう言う。
「まあ、そう言う訳でよろしく頼むよ」
ベルモットさんは簡単に言うが、これは大変だな。