無化調。
ある晩、家内が何気なく言いました。
「ラーメン屋さんで拘り強い所ってあるやん?あれ苦手やわ。
この味の為に何々を使って、とかどうでも良いやん、美味ければ。」
お・・・おぅ、そうやな。美味いか不味いかが全てやわな。
しかし作り手には目的とする「味」があり、そこに至る内容というか道程というかを説明するのも一種のサービスでは?
そう考えてしまうのは己自身が自転車について日々ガタガタぬかしているからでありましょう。
という訳で本日もガタガタ参りましょう。
顧客様から幾つかの要件のみお伺いし、「あとは任せた!」とバトンを頂いたSurly/Crosscheck。
色々な自転車にお乗りの方ですから一筋縄では行かない、というか行かせたくないという勝手な思いから、
直球の解答とは違う捻りを入れつつも真っ直ぐストライクを狙う「魔球」で勝負に出た今回。
お題目の内に「シングルスピード」とありましたので変速関係は一切考える必要無いのですが、
じゃぁクランクは?となると・・・方向性としてはスギノが最有力。
しかしスギノのクランクは価格改定により価格帯が上にググイと迫り上がりまして、
定番のRDでさえ¥15,500(アームのみで!)、小綺麗な仕上げのマイティーでは¥2万超えと少々お高い。
そこまで資金突っ込むなら思い切ってホワイトインダストリーズのENOを選びたい所なれど、
今回の車両の全体像を思うとホワイトは少しやり過ぎというか輝き過ぎというかで・・・。
結果選んだのはディズナのラ・クランク。
スッキリとした細身のアームと程々の仕上げが醸す絶妙な存在感の薄さが高感度高し。
BBはアウトボードなのでガタつきや軋み音に煩わされる事も無いですし、アーム単品¥15,000という程々な価格もグー。
ブレーキは性能・コスト・メンテナンス性と実を取る方向ならばVブレーキを使うべきなのですが、
普通のVでは味気ない、さりとてPaulのVとかではやり過ぎというのはクランクと同じ流れ。
しかし、落ち着いた外観とリニアなブレーキタッチのカンチブレーキで!となっても、
カンチはカンチでスポーティーなモノか安物かの二極端な状況・・・だけれどコレがある。
老けて見られるけど実は若い、そんなヨシガイの昔風新型カンチブレーキ「DC980」。
昔懐かしな形状ながらシューはカンチシューではなくVシューが使えるのでメンテ楽々。
ただ標準付属のシューは流石にチョッと・・・なのでシューのみKoolstopのサーモンシューに。
何よりグランボアさんの玉千鳥が似合う、というのが非常に重要。
その他、細々とした所にも捻りを入れまくった間違い探しの様な一台になっている事に加え、
全体を通じて「裏コンセプト」的なモノが御座いましてですね。
と申しますのも今回塗らせて頂いたお色は写真では上手く映らない微妙〜な色合いなのですが、
「薄い水色」に「銀色のパーツ」、そして要所要所に「黒色のパーツ」を差し込んだ結果、
こういった系統の車両に興味をもつ方ならきっと思い浮かべるであろうイメージがあるかと。
それは「日東/Nitto」、一歩離れて見れば日東の広報車両みたいな事になってる気がします。
「故に」というべきかはよく分かりませんが、今回の車両には「日東製品を一切使わない」という縛りを設けてみたのです。
実際問題、日東製品やスギノ製品を使えば簡単にピシッと纏まります。
しかし何もモノを作らない自転車屋がそればかりに手を出すのは安易というか広がりが無いというかで・・・、
「こんな選択肢もありです!」という提案こそが商品足り得るのでは?と思ってみた次第。
勿論、オーナー様に満足頂く事が唯一最大の目的ですから遊び半分のデタラメではいかんです。
地味ながら永く乗っても飽きない面白みを「有りそうで無い」立ち姿に納めた積りなれど、本当の所はオーナーのみぞ知る。
まぁホンで日東外しで組んでみて改めて思うたですよ、日東という会社があって本当に有り難い、と。