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中村鏡とクック25cm望遠鏡

伊達英太郎氏の太陽観測(9)

2024.06.30 04:55

プロミネンス観測(5)

(カルバー8インチ反射鏡と同架されたアーウィング鏡)

(58)1926年7月31日 スコフィールドより中村へ

 あいにくの曇り空で、4.1/4インチをプロミネンス観測に使うことができませんでした。また、8 1/2インチでは方位角微動装置のバックラッシュが大きく、スリットのコントロールが難しいので、4.1/4インチをグレゴリオ架台にマウントして使うかもしれません。今日の午後、22日以来初めて2インチでプロミネンスの観測をしましたが、黒点が多数あるにもかかわらず、目立ったものはありませんでした。

(61)1926年10月2日 中村よりスコフィールドへ(手書き)

 天文台では12インチのクック屈折望遠鏡を注文しており、1927年初頭に届く予定です。A.ヒルガー氏のプロミネンス分光器2台が山本博士の元に届きました。単体で£6.7sとかなり安いのですが、グレーティングのグレードが低いためか分散力がかなり低いようです。興味深く使います。

(62)1926年10月5日 スコフィールドより中村へ

 最近、こちらでもシーイングが非常に悪く、8.5インチはほとんど使えず、6.5インチが原則で、5インチしか使えないこともしばしばです。また、プロミネンスでは2インチに戻さざるを得ませんでした。

 2台の太陽分光器を受け取られたと聞いて、非常に興味を持ちました。私はそのうちの1つをここで試してみたいと思います。

(63)1926年10月7日 中村よりスコフィールドヘ(手書き)

 9日はS.A.F.の会合で神戸に行きます。ヒルガー分光器を持参し16時にお伺いします。火星についてお話できればと思います。

(64)1926年10月15日 スコフィールドより中村へ

 ここのシーイングは最近ひどいです。6 1/2インチでシーイング4-5はまれな瞬間のみで、原則として全く何も見ることができません。1924年10月の間は非常に良かったのですが。

 日曜日に数分間、あなたの太陽分光器を試してみましたが、画像の大きさは私のものと全く同じです。スリットが片側だけだと精細にならないので、反対側に色相を合わせなければなりません。紙でできた円形部品が使えるように、縁に少し切り込みを入れてもよろしいでしょうか?

(66)1926年11月6日 スコフィールドより中村へ

  3日付で、依頼のあった太陽分光器を書留で返送しました。図のようにスリットに焦点を合わせると、より鮮明に見えると思います。

 もし円形部品を付けるのであれば、私のためにも余分に作っておいてください。(もちろん、代金はお支払いします。)円形部品を付ければ、日本中の観測が同じ基準になります。シーイングが悪いので、最近はもっぱら2インチを使っていますが、全体として、この種の観測には屈折鏡の方が良いと思います。シーイングが悪いと、ご存知のように、反射による収差が反射鏡では2倍になってしまいますから。

(68)1927年2月19日 スコフィールドより中村へ

 来月から太陽プロミネンスの観測を再開したいと思います。よろしくお願いします。

(69)1927年2月22日 中村よりスコフィールドへ(手書き) 

 普通の望遠鏡では、プロミネンスの観測は非常に困難であることがわかりました。現在、3インチ反射望遠鏡(焦点距離25インチ)を製作中です。4月からは、プロミネンスの観測に非常に役立つと思います。

(70)1927年3月4日 スコフィールドより中村へ 

 私は忙しくて、まだ太陽プロミネンスの観測を再開できていません。しかし、4月からは再開したいと思っています。この観測のために、特別な3インチ反射鏡をお作りになるつもりでしょうが、私の経験では、シーイングがよほど良くない限りは、この種の反射鏡は使えません。私は2インチ屈折望遠鏡で最良の結果を得ており、それはちょうど私たちが使っている特殊なタイプの小型分光器に合っているようです。

(71)1927年3月9日 中村よりスコフィールドへ(手書き)

 私の3インチ反射鏡は、ヒルガー分光器に合わせて特別に焦点距離25インチの短焦点にしたものです。

(72)1927年5月5日 中村よりスコフィールドへ(手書き) 

 最近、プロミネンス観測用の3インチ反射鏡が完成し、すでにいくつかの実験観測をしました。小型反射鏡は成功したようで、使いやすく、太陽の縁を一周観測するのに15分程度で済みます。焦点距離は25インチですが、やや長すぎたような気がします。小型反射鏡は6.5インチのエリソンと並列同架していますが、なかなか使い勝手が良いです。

(76)1927年10月3日 スコフィールドより中村へ

 最近、大阪に行くことが少なくなったので、昼の1時間をプロミネンス観測に充てようと思っています。この非常に興味深い分野の観測の報告を続けることができないことを非常に残念に思っています。もし再開できるようであれば、またお知らせします。

(出典)

「山本天文台資料より」

(参考文献)

冨田良雄. 暗号コードと火星 --R.スコフィールドの見た夢--. 第6回天文台アーカイブプロジェクト報告会集録 2016, 6: 32-38