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奉還町4丁目ラウンジ・カド

映画『あたらしい野生の地 リワイルディング』上映会+管啓次郎氏トーク 1/13(日) 14:30-

2018.12.19 08:37

世界でもっとも人口密度の高い国オランダ、その首都アムステルダムから北東50キロの海沿いに位置する6000ヘクタール程の小さな自然保護区「オーストファールテルスプラッセン」。もともとは1968年に行われた干拓事業の失敗で放置された人工の地でした。しかし、人に忘れられたその土地に、わずか45年で自然はあたらしい命を育み、野生の楽園を築きあげていたのです。都市近郊に広がる命の宝庫のようなこの土地で、生を謳歌し死と対峙する生き物たちの一年を、美しい映像で綴っていく映画「あたらしい野生の地 リワイルディング」の上映会を開催します。映画上映の後に本作品の字幕翻訳を担当した管啓次郎氏(明治大学教授、詩人)のトークがあります。


日時:2019年1月13日  開場14:00 上映14:30~

会場:奉還町4丁目ラウンジ・カド

入場料1200円+1ドリンクオーダー

予約: 1)メールhokancho4chomelounge.kado@gmail.com

           2) 086-236-8326(営業時間中)

           3)カド店頭


映画情報

映画『あたらしい野生の地 リワイルディング』

原題: DE NIEUWE WILDERNIS

製作年: 2013年 日本公開年: 2016年 製作国: オランダ

配給: メジロフィルムズ

監督:ルーベン・スミット、マルク・フェルケルク

上映時間:97分

公式サイト:http://rewilding.mejirofilms.com


舞台となる自然の楽園は、もともと人間が使おうとして埋め立てられ、そして人間の都合によって捨てられ、忘れられた場所だった。

どこまでも続く美しい平野に何万匹もの白馬たち――<ここは、映画『あたらしい野生の地ーリワイルディング』の舞台となった「オーストファールテルスプラッセン」。日本で例えるなら、東京から50km離れた場所、例えば千葉県船橋市、神奈川県横浜市あたり、6000ヘクタールという広さは東京の大田区とほぼ同じ面積だ。そうした場所<に、深い森と青々とした草原、いのち豊かな湿地が広がり、野生の馬や鹿が走り、きつねが遊び、たくさんの鳥たちが飛びまわる自然の王国がある。都市部近郊にこんなにも雄大で命の宝庫のような自然が広がっている事例は、世界的にも稀で奇跡と言えるだろう。

オランダは国土の約30<%が海面より低く、20%以上は13世紀以降の干拓(海の一部を堤防でかこって中の水をくみだす)事業によりつくられた人工的な土地だ。この自然の楽園も同様に、1968年に行われた干拓事業によってつくられた。しかし、事業が経済的に破綻をきたして放置され、人が介入することなく10年が過ぎた。沼はやがて水草で覆われ湿地帯へと変化、おびただしい野鳥が集まってきた。さらに鳥たちが整えた水際にキツネなどの小動物もやってきた。>自然がみずからの論理(緯度、日光、降水量、地形、土壌など)にしたがって、元来の動植物相を回復してゆく。これは、忘れられた土地の45年後の姿を描いたものだ。

まるで動く生きもの図鑑!小さな土地で生態系がみずからを復元し、循環させていくプロセスを学べる。

この土地でもっとも人目を引くのは、美しいたてがみをゆらして草原を駆け抜ける馬の群れ。ヨーロッパ原生種の馬にもっとも近いといわれるポーランドのコニックがリワイルディング(野生の再生)の試みとして放たれると、馬たちはこの土地に適応し、人間の介入の外で順調に数を増やしていきた。今では2000頭を優に越える頭数が確認されている。同時期に放たれたアカシカも繁殖に成功。また鳥類では、17世紀以来ヨーロッパ大陸では目撃されたことがなかったオオワシが、おそらくスカンジナビア半島から飛来して姿を見せている。

この自然保護区はゲートで囲まれており、90パーセントはレンジャーだけが入れる非公開区域だ。本作は600日にもわたる撮影を敢行し、普段は見ることができない生きもの達の姿を捉える。限られた土地の中で植生がどう移り変わってゆくのか、どこにどんな動物が戻り、他の動植物たちとの関係をつくっていったのか。湿原にはコケ類が、草原には一年生の草本が、そして森林には多年生の草木がはえ、土の性質を変えていく。水辺にはまず魚、両生類が戻り、鳥類が呼び寄せられ、それを狙ったキツネがやってくる。草原では馬やアカシカが子どもを育てる。こうした生態系復元のプロセスや自然のサイクルを美しい映像を通して学ぶことができる本作は、それはまるで動く生きもの図鑑のよう。ページをめくる毎にワクワクした子ども時代を思い出させてくれる。

なぜ「リワイルディング(再野生化)」が地球再生への希望になるのか?

一度自然界で絶滅した動物種を、ふたたびその土地に放ち、失われた生態系を取り戻そうとする試み。

日本ではまだ馴染みのない言葉だが、いま世界中で注目を浴びているのが「リワイルディング(再野生化)」だ。本質的には、ある土地の失われた生態系を復元する試みのすべてを指している。野生では絶滅した動物種を、ふたたびその土地に導入するといった例ももちろん、ある土地から手を引き見守るといった人間の行為と自然の復元力に立つ新たな生態系の構築こそ、現代に希望をもたらす新しい「野生」だ。

この映画の舞台となった自然保護区だけではなく、同じくオランダやポーランドでヨーロッパバイソンの再野生化が、アメリカのイエローストーン国立公園でオオカミの再野生化が成功したと報告されている。


参考資料

ナショナルジオグラフィック(2016.03.28掲載)

『野生絶滅から1世紀、欧州のバイソン再野生化へ』