子の養育に関する民法等の改正について
公益社団法人家庭問題情報センター千葉ファミリー相談室です。
今回は、令和6年5月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)について、その概要をご説明したいと思います。
今回、ニュース等で注目された民法の改正は、現在放送されている朝ドラ「虎に翼」に出てくる1947年の民法の改正から77年ぶりになる離婚後の父母の子の養育に関する見直しです。
その中で、共同親権と法定養育費について説明したいと思います。
「共同親権」原則論?
改正された民法では、離婚の際に共同親権か単独親権か選択できることになりました(民法819条)。
この規定は、共同親権を原則とするものではなく、共同親権は、父母が子の重要な問題に関して双方で関与しながら慎重な意思決定を行い、父母共同で責任を負うことが望ましい場合に選択されるものです。
逆に、父母の一方が子の問題について迅速かつ適切な意思決定を行い、他方の関与や同意なく円滑に親権行使をすることが適切な場合は単独親権が想定されています。
父母の協議が調わない場合は、家庭裁判所が、共同親権か単独親権か判断することになりますが、その際、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。」
「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無」等の場合は単独親権と定めることになります。
この規定は、令和6年4月から改正法が施行された「配偶者暴力防止法(いわゆるDV防止法)」が精神的なDVに対しても対応することになったこととも通じる規定となっています。
法定養育費?
現状で、養育費の取決め率も受領率も低調です(2021年の厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」における母子世帯の調査結果では、養育費の取決め率が57.7%で受領率が28.1%)。
そこで、父母の協議等による取り決めがない場合にも養育費請求を可能にするため、改正された民法766条の3によって、「法定養育費」という制度が導入されました。
今後、法務省令で、「子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額」等が勘案された法定養育費の算定方法が定められることになっています。
その他、今回の法改正の概要については、この下のURLをクリックしてください。↓
https://www.moj.go.jp/content/001419099.pdf
この法律は、公布から2年以内に施行され、法律として実際に運用されることなり、その間に制度の運用ルールなどが整備される予定になっています。
このコラムを書いたのは・・・
内閣府認可の「公益社団法人 家庭問題情報センター」の傘下にある全国組織の団体。平成6年に、よりよい社会の形成の推進に寄与することを目的として開設され、元家庭裁判所調査官、元法務技官、臨床心理士、スクールカウンセラー、調停委員経験者などで構成される。家庭問題の解決、児童の健全育成、高齢者等の福祉の増進に資するため、後見活動、面会交流支援、相談・カウンセリング、講師派遣活動、証人活動などを行っている。