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足圧宗家

落語 綾音先生の足圧指南

2024.07.08 07:34

「綾音先生の足圧指南」

ちょいと昔

とある長屋に YO!圭一郎という四十がらみの男が住んでおりまして

最近どうにもこうにも全身がだるくて仕方ない

朝起きると 
まるで古びた風船がしぼんでいくように体が重くて動けない

「これはたまらん」と思いながら床に倒れ込むと

まるでぬかるみにハマった靴のように体が動かない

ある朝

圭一郎が キノコの生えた熟柿臭のせんべい布団から起き上がれないでいると

長屋の大家さん 末吉爺さんが訪ねてきました

「おい、ケイっつぁん。最近顔見ないが、どうしたんだ?」

「いやぁ、末吉爺さん。全身が重くて動かないんですよ。まるで鉛を背負ってるみたいで...」

「それは大変だな。実は、最近長屋に引っ越してきた綾音先生という足圧の名人がいてね、評判が良いんだ。一度診てもらったらどうだ?」

「ほう、それはいいことを聞いた。早速お願いしてみるか」

そこに末吉爺さんの嫁さん おみつが口を挟みます

「何をごちゃごちゃ言ってるのよ!ケイっつぁん、そんなに身体が重いなら、さっさと綾音先生のところに行きなさいよ!ほら、これで行ってきな!」

おみつの勢いに押され ケイっつぁんは重い腰を上げて綾音先生の家に向かいました
途中 呉服問屋の放蕩息子 雪之丞が通りかかります

「おう、ケイっつぁん。どこに行くんだい?そんな顔して」

「いやぁ、雪之丞さん、実は全身がだるくてね。綾音先生という足圧の名人に診てもらおうと思ってさ」

「ほう、それは面白い。俺も興味があるからついて行ってもいいか?」

「もちろん、どうぞどうぞ」

二人は綾音先生の家に着き トントントンと玄関をたたきます

「す、すいやせんすいやせん、ごめんください。」

「あら、何か御用かしら?」

品のある女性 これが噂の綾音先生です

「初めまして、綾音先生。こちらがケイっつぁんで、最近どうも全身がだるくて困っているんです。診ていただけませんか?」

綾音先生はニッコリと笑い

「もちろんです。どうぞこちらへ」

とケイっつぁんを招き入れます

ケイっつぁんは緊張しながらも 先生の指示に従って横になります

「じゃあ、始めますね」と綾音先生が言うと

足の裏でケイっつぁんの身体を丁寧に踏みほぐしていきます

最初はびっくりしたケイっつぁんでしたが 次第にその心地よさにうっとり

「えへへ、いやぁ、こりゃすごい!まるで雲の上にいるみたいだわ!」

「気持ちいいでしょう?でもまだまだこれからよ」と綾音先生は笑顔で応じました。

その様子を見ていた雪之丞も

「いやぁ、ケイっつぁん、いい気持ちそうだな。俺も今度お願いしてみるかな」

と感心しています。

全身がほぐされていくうちに ケイっつぁんの体からは

まるで錆びついた機械がオイルを差されたように動きが軽くなっていきます

肩のこりも 首の痛みも どんどん解消されていきます

「ふぅ、終わりましたよ。どうですか?」

と綾音先生が声をかけると

ケイっつぁんはニコニコと答えました

「いやぁ、こんなに体が軽くなるなんて!まるで新しい自分に生まれ変わったみたいだわ。先生、ありがとうございますぅ!」

しかし ここで終わりではありません

「ところでケイっつぁん、何か他にも悩みがあるんじゃないですか?」

と綾音先生が問いかけます

「ええ、実はですね、うふふ、最近財布の中もガラガラでしてね。それも疲れの一因かと...」

綾音先生はクスクスと笑いながら

「それなら、ちょっとした仕事を紹介しましょうか?」

「まあ、それはありがたい!」

なんと 綾音先生は足圧の名人だけでなく 

ちょっとした商売のアドバイザーでもあったのです

彼女のアドバイスを受けたケイっつぁんは 小さな商売を始めることになり

次第に財布の中も潤ってきました

ところが その商売がケイっつぁんの期待を大きく上回り 大成功を収めました

ケイっつぁんはそのことを長屋の末吉爺さんに報告に行きます

「いやぁ、末吉爺さん、おみつさん、綾音先生のおかげでぇ、もう体も心もお財布もぉ、すっかり元気になりました!商売も大成功ですぅ♪!」

末吉爺さんがニコニコしながら

「それは良かったな。ケイっつぁん、これで一安心だな」

と言うと おみつが鋭い眼差しで続けます

「でもね、ケイっつぁん、ちょっと聞きたいことがあるの。あんた、どんな商売始めたの?」

ケイっつぁんは自信満々に答えました

「いやぁ、これがですね、足圧マッサージの出張サービスなんですのよ!アチキも綾音先生にお弟子入りして、あっちこちで踏んでますぅ!」

末吉爺さんとおみつが顔を見合わせ

「ケイっつぁんが踏むってか?ハハハ、それは、それで需要があるのかねぇ?」と大笑い

その笑い声に釣られて雪之丞がやってきて

「おう、ケイっつぁん。お前さんもとうとう名人になったんだな。じゃあ、俺のことも踏んでくれよ。お代は吉原で払うからな!」

とニヤリ

ケイっつぁんは

「あらぁいやぁ、吉原で踏むとは思わなかったわ、こりゃ面白い話になりそうね!おほほ」

と また皆で大笑い

それ以来 ゲイっつぁんの足圧マッサージは大繁盛し 長屋の皆も幸せに暮らしましたとさ

これでおしまい おあとがよろしいようで

ラッチー