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過敏性腸症候群すっきりプロジェクト

過敏性腸症候群の腸管運動とガス症状:事務局便り#16

2024.07.10 00:00

腸管の構造と3種類の腸管運動

腸管の運動と腹鳴(ふくめい)

*動画とブログの中身は同じです。

 本日の内容は、過敏性腸症候群における腸管運動とガス症状についての続きとなります。

本日は最初に、食事に関連した腸管の動きについて説明します。

それから、過敏性腸症候群に関連した腸管の動きと、食事の関係についても少し触れたいと思います。

空腹のとき、小腸からモチリンというホルモンが約100分ごとに分泌されます。

モチリンは小腸を強く動かして、胃液や腸液、食べ物のかすなどを肛門の方へ送る働きをします。この時の腸管の運動を「空腹期伝播性強収縮運動(IMMC:Interdigestive Migrating Motor Complex)」と呼び、空腹が続くと、90分から160分ごとに繰り返されます。

なお、モチリンについては、集英社新書プラス、知の水先案内人、脳腸相関の第4回で詳しく説明しています。

この空腹時に起こる強い収縮運動は、4つの段階に分かれています。

Phase(フェーズ)1の段階は小腸が動きを止めている状態で、「静止期」とも呼ばれ、約60から70分続きます。

Phase(フェーズ)2では不規則な運動が始まり、続くPhase(フェーズ)3では約20分間続く、規則的な収縮運動が始まります。

この運動は、腸の中に残っている胃液や腸液、食べ物のかすをきれいにするために行われます。

これは腸の掃除のようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。このためハウスキーパーと呼ばれることもあります。

この運動が行われると、腸の中の空気やガス、水分が移動しやすくなり、お腹が「グー」と鳴ることがあります。

逆に、この段階の収縮運動が少なくなると、小腸の中で細菌が異常に増えやすくなり、ガスがたまりやすくなることがわかっています。

つまり、第15回で説明したように、空腹時間を短くしてこの運動を減らしても、ガスの症状が良くならない場合があるということです。

最後のPhase(フェーズ)4は、収縮運動が落ち着いて静止期に戻る前の「減衰期」と呼ばれます。

じつは過敏性腸症候群の人では、ストレスがかかるとハウスキーパーに当たるフェーズ3の腸の運動が消えやすくなります。

そして、その代わりに不規則な動きであるOhase(フェーズ)2の運動が増えると言われています。

Phase(フェーズ)2では腸が頻繁に収縮することがあり、それが腹痛の原因となります。

では、空腹ではなく、食事をすると腸の運動はどうなるのでしょうか。

食後の腸の動きは、主に胃に入った食べ物の量や種類によって変わり、第15回で説明した、蠕動(ぜんどう)運動、分節(ぶんせつ)運動、振子(ふりこ)運動が腸管内の食べ物の量によって順に出現します。

とくに、胃の中に食べ物がある間は、約2~3時間、Phase(フェーズ)2に似た運動がつづき、胃内に食べ物が残っていればこの時間がさらに長くなると言われています。

つまり、過敏性腸症候群の方では、腹痛やガスの症状を改善するには、食事の時間をある程度規則正しくし、適度に空腹の時間を取ることで、腸の動きが極端に強くならないようにすることが大切です。

次回は、過敏性腸症候群の治療の流れについて説明したいと思います。


イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストもしくはそのイラストを使って菊池が作成

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集英社新書プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】の連載をしています。第4回でモチリンについても触れています。なお、第10回および第11回が、過敏性腸症候群についてです。

※1 柳谷 岩雄 腸管運動の生理:日獣会誌12(35):1959

※2 福土 審 運動機能からのアプローチー小腸運動の生理と病態-日本内科学会誌第100巻・1号・139-149

※3 持木 彫人  胃腸障害を理解するための消化管収縮機能 日消誌 2021;118:126―132