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office FUCHI 〜オフィス・フチ〜 〈渕山知弘〉

京都 ユニバーサルツーリズム推進フォーラムin京都開催!

2024.07.10 01:35

7月5日(金)、京都市で開催された『ユニバーサルツーリズム推進フォーラムin京都』に参加しました。

フォーラムは、「NPO法人日本バリアフリー観光推進機構」(理事長:中村元)の年次総会に合わせて開催されたので、会場には加盟する地域組織の代表をはじめ、観光庁、京都府、その他全国から参加があり、当初予定していた80名の会場から直前に400名のホールに変更されるほどの盛況ぶりでした。

NPO法人日本バリフリー観光推進機構

(画像提供:伊勢志摩バリアフリーツアーセンター)

シンポジウムを主催されたのは総会の開催地となった京都で活動する(一社)京都バリアフリーツアーセンター(代表理事:中村敦美)です。

(一社)京都バリアフリーツアーセンター

中村さんの開会挨拶の後、鈴木一弥京都府副知事による挨拶がありました。

心のバリアフリーにも言及され、京都観光の質が向上しこの取組みが全国に広がるように、そして大阪関西万博では万博を訪れる世界中の方を迎えるというお話でした。

ユニバーサルツーリズムに取組む自治体では、自治体の代表が地域のユニバーサルツーリズムについて語っていただけるんですね。

その後、3名の登壇者による基調講演へと続きました。

最初は、日本バリアフリー観光推進機構の理事長であり、22年前に活動を開始した伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの理事長でもある中村元さんです。

「バリアフリー観光で増客増収の秘密」と題して語られたのは、まずは障がい者・高齢者、そこに乳幼児連れまで含めると対象となるマーケットが大きいということ。

障がい者は別コミュニティというのは過去の話で、今では障がい者、高齢者も一緒に旅をするので、1組あたりの人数も多く、それに伴い観光地、宿に落ちるお金も多くなる。

私も共感する話でしたが、特に多くの旅行会社がターゲットとする修学旅行は1人の障がいのある生徒のために学年全体で、その生徒が過ごしやすいホテルを選択する時代というのは、まさにその通りだと思っていて、セミナー等で下記の写真で解説することがあります。


(京都駅で集合する修学旅行生の中に1人車いすに乗る生徒)

令和4年度観光庁事業で私もお手伝いした「伊勢おもてなしヘルパー」のお話からは、伊勢を訪れた車いすユーザーの話などを紹介され、他の地域の障がい者から伊勢に住みたいと言われたなど、22年間の取組みで伊勢のまち全体で受入れがあたりまえになっていることを改めて認識できました。

伊勢志摩バリアフリーツアーセンター

令和4年度観光庁「伊勢おもてなしヘルパー」拡充事業

続いて、松江しんじ湖温泉「なにわ一水」社長の勝谷有史さん。

2006年から徐々に宿のバリアフリー改修をされ、今では西日本でバリアフリーの宿と言えば最初に名前が挙がる(渕山の印象)ほどで、客室の稼働率や宿泊単価の高さのお話もされましたが、印象的だったのが、「お客様にとってのバリアフリーは高齢化が進む従業員にとってもバリアフリー」という話でした。

観光地に置き換えると、「来訪者にとってのバリアフリーは高齢化・過疎化が進む住民にとってもバリアフリー」と言えるのではないでしょうか。

ハード面のバリアフリー化からさらに進化されていて、視覚障がい者向けの組子で作った壁に触れて文化を感じてもらったり、2023年11月からはアレルギー8品目に対応したアレルギー対応会席やヴィーガン会席にも着手されているとのこと。

令和5年度中国運輸局の訪日✕ユニバーサルツーリズム事業で、外国人車いすユーザーと泊まった際に、実際にホテルで体験したおもてなしを紹介しています。

令和5年度中国運輸局 訪日✕ユニバーサルツーリズム事業モニターツアー

松江しんじ湖温泉「なにわ一水」

基調講演の最後は、観光庁参事官の本村龍平さん。

国による観光立国推進計画の3本柱、①持続可能な観光地域づくり ②インバウンド回復 ③国内交流拡大、ユニバーサルツーリズムは③の重要な施策。

障がい者や高齢者の人口比率や、過去のユニバーサルツーリズム調査結果などを用いて、市場規模が大きい一方で、高齢者の39.4%がほとんど旅行に行っていないことなどを示され、施設や観光地の取組みに可能性があることを話されました。

その1つに観光庁が推進する「心のバリアフリー認定制度」があり、全国で1870施設(北海道103、東北150、関東344、北陸184、中部312、近畿289、中国115、四国84、九州254、沖縄35)の施設が認定を受けているとのこと。

※4月から申請窓口は各地方運輸局となったので、運輸局単位で認定数がまとまっています。

観光庁の補助金事業、バリアフリー化補助金、再生・高付加価値事業等でも申請に際してはこの認定が必須条件になっていることなどを話され、事例としては山梨県の石和温泉の活用事例を紹介されました。

観光庁 ユニバーサルツーリズム推進事業

心のバリアフリー認定制度

休憩を挟んで、手話エンターテイメント発信団「oioi」の2人によるパフォーマンスは、会場を巻き込んで盛り上がりつつ、少しだけ手話の勉強にもなりました。

後半の事例紹介もそれぞれ異なる立場で3名登壇されました。

最初は「トラベルwithじぇぷと」の鈴木洋平さん。

愛知県で活動する介護事業から旅行事業、旅行専門福祉タクシーと進化している事業者のユニバーサルツーリズムの事例で、最初は自社が運営する介護施設の旅行から、医療介護専門職が添乗員として同行するバリアフリー旅行を運営され、現在ではデイサービスや医療介護施設の旅行のプロデュースも手がけておられます。

定期的に旅を通じたユニバーサルツーリズム研修も実施していて、旅行をサポートする「トラベラーズパートナー」は480人、添乗員「トラベラーズマネージャー」60人を組織化できている旅行会社は、今までなかったのではないでしょうか。

愛知県から全国に広がるパワーを感じました。

トラベルwithじぇぷと

続いて、京都の老舗旅館「綿善旅館」の女将、小野雅世さん。

1830年創業、昭和59年に建てられた宿は地下1階、地上4階、27室で古くから京都に建つ旅館と同じで決してバリアフリーではない。

そんな中で「お客様を謝らせてはならない(フロントに人が不在で「すいませ~ん」と言わせることも)」という思いで、ここが居心地の良い場所か?を考え、できることからコツコツと着手したとのこと。

2022年5月には、心のバリアフリー認定を受けられました。

京都市のバリアフリー基準は、他の自治体に比べて高いハードルで設定されています。

黙っていても観光客は来るから、わざわざバリアフリー化まで手が回らないという観光地もありますが、国内外から多様な方々が来訪するからこそユニバーサルツーリズムを「できることからやる」という女将の言葉、重要ですよね。

綿善旅館

最後はフォーラムの主催者(一社)京都バリアフリーツアーセンター 代表理事の中村敦美さん。

2018年に京都バリアフリーツアーセンターを立ち上げ、車いすレンタルや介護ヘルパー手配などに着手された。

バリアフリーの情報を求める旅行者と観光施設や旅行会社の間に入って相談にのっていたが、福祉や介護ではあたりまえのことなども、観光業に伝えることに苦労され、ならば自分で旅行会社を作ろうと2020年コロナ禍真っただ中の時期に旅行会社を立ち上げ、シニアツアー、サイレントツアー、ブラインドツアーなどの着型ツアーを実施。

昨年12月には、健常者にも車いすユーザーのことを知ってほしいという思いで、全席車いすのカフェ「スプリング」をオープンされました。

京都バリアフリーツアーセンター

Wheelchair cafe SPRING

日本バリアフリー観光推進機構に加盟する全国各地の相談窓口です。

先月開催されたユニバーサルツーリズム推進シンポジウムin静岡に参加された団体も含めると、今や全国には多くのバリアフリー観光相談窓口があります。


まずは、自治体、観光事業者、旅行会社等がこのことを認識し、各地の窓口と連携することでユニバーサルツーリズムはさらに加速すると私は思っています。