『○○法は現代の科学では証明できない』の誤解③
おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
ここ何回かで、 臨床研究で良い結果が出ていないものの、長い間使われ続けている理論、治療法に関して『○○法は現代の科学では証明できない』という発言に対して書いています。
タイトルのフレーズには医学研究に対する典型的な誤解が含まれています。
その誤解は下記です。
① 臨床研究は、「○○法の真偽」に関しては調べていません
②『○○法を勉強したことがない人間が意見を言うのはおかしい』→治療成績のデータに関して話すなら、全くおかしくありません。
③ 個別化されたプログラムなので臨床研究にそぐわない→誤りです。個別化された治療法も臨床研究で効果を調べることができます
④ ○○法は動作の『質』を改善する。臨床研究には『質』を評価する術がないのだから、○○法は評価できない。→誤りです。質の評価も可能です。また、そもそも質を評価する術がないなら、○○法を支持する人はどうやって「質」を評価しているのかわからなくなってしまいます。
⑤ ○○法はアートなので、わかる人にわかって頂ければいいんです。→医学においてはそのような姿勢は許されません。
⑥ ○○法に関する研究は現在進行中なので、間もなくエビデンスが出ます。→多分嘘です。もし講師の先生がそのことを真剣に信じているならば、その先生も本部の人たちに騙されています。
今回は③に関して書きます。
③個別化されたプログラムなので臨床研究にそぐわない→誤りです。個別化された治療法も臨床研究で効果を調べることができます
『○○法は、個別化されたプログラムで、提供する人によって注目する動作が違う(人によっては寝返り、別の人は歩行)というように、内容や目標も個別なため、臨床研究では評価のしようがない。』というようなことを聞くことがあります。
まず、個別化されたプログラムを臨床研究で評価することは出来ます。実際に、個別化されたプログラム群対通常のリハビリ群というような研究はあります。
また、リハビリの目的は、『日常生活動作能力(ADL)の向上を通じた生活の質(QOL)の向上』に集約されます。 日常生活動作全体を含めて評価できるバッテリーも複数存在しています(リハ専門職の方はおなじみのFIMやBIです)。
仮に個別化された目標設定がなされるために、一つの動作に着目した評価バッテリーでは評価できないとしても、これらのような日常生活動作全体を大まかに含む評価バッテリーで効果判定は可能なはずです。
上記の評価バッテリーが全ての動作を含めているわけでは当然ありません。ですので、患者さんにとって目標となる動作を網羅していない可能性はあります。ですが、基本的な動作の自立度に関しては一通り揃っています。ですので、各患者さん特有の目標を設定しても、行うリハビリに効果があれば、上記の評価バッテリーの得点も改善します。
この様な理由から、個別化された目標設定や、プログラムのため、臨床研究では○○法は評価できないという話は、勘違いです。
長くなりましたので次回に続きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
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