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ユダヤ古代誌1

2024.07.13 04:55

  ヨーロッパの歴史について勉強しようと思うと必ずでてくるのがユダヤ人の歴史です。ご存じの通り最初に旧約聖書があり、その教えからユダヤ人のイエスが新派のキリスト教を興し、それがやがて新約聖書のお話へ分かれていく・・。そうやって、古代からの神とその信仰の物語が紡がれていきます。。


       ところで皆さんは、旧約聖書とか新約聖書のお話って興味あるでしょうか。。。私はとても興味があります。人は生きていてどのような人生を歩んでいくのか、日々努力を重ねていくのか、、毎日刹那的な生き方をしていくのか、、もちろん人は楽をしたい、、人から良く見られたい。。幸福でありたい、、いろいろな願望を心のうちに秘めていますが、やはり、そんなことを思いながら、刹那的な生き方人生をしていても、ある日、人生をやり直そうと決心しても、PCゲームのように、ボタンのスイッチ一つで人生をリセットできるわけでもない。。やはり毎日のプレッシャーで押しつぶれそうになっても人生が続く限り、生活は維持していかなければなりません。そうやって人は「昨日より今日、今日よりは明日を良くしていきたい、」、というように毎日の向上を目指し、人生を建設的に考えていくとき、人は心のどこかに神様の存在や宗教の意義を考え始めるのだと思います。

  

  つまり、昔からの人々が、どのように前向きに生きようと真剣に考え、神様を思い、信仰していったのか、、心や魂の向上を願い、その思いを語ってるのが旧約聖書であり、新約聖書であり、更にはコーラン(や仏教の法典など)であったりするのだと思うのです。今では、科学が発達し AI とか、テクノロジーの発達は目を見張るものがあり、昔ほど神様の存在を真面目に人々が論じることもないかもしれませんが、(でも現在でも世界情勢を見ると宗教がその原因になっていることはご存じの通り。。)科学の発達してない昔の人々にとってはなおのこと、神様という存在は、己の存在と密接なつながりを持つ、人生にとって何よりも重要な精神的支柱であったはずです。このような訳で、人間について興味ある自分としては、いつか旧約聖書、新約聖書も通読したいと思っていましたが、この夏、運よくヨセフスさんという切り口を見つけたことで、ユダヤ人の歴史について読む糸口ができました。それがこの「ユダヤ古代誌」です。(以下、Wikipediaによる「ユダヤ古代誌」の解説を記します。)


  「ユダヤ古代誌 (ユダヤこだいし、ギリシア語: Ἰουδαϊκὴ ἀρχαιολογία, Ioudaikē archaiologia; ラテン語: Antiquitates Judaicae)とは、ユダヤ人の歴史家であるフラウィウス・ヨセフスによって書かれた、天地創造からユダヤ戦争の直前までが記述されている全20巻のユダヤ史書である。フラウィウス・ドミティアヌスの治世下のおよそ西暦94年もしくは95年に書かれた。ヨセフスの後援者である非ユダヤ人のためにギリシア語で書かれている。始めの10巻はヘブライ語聖書のモーセ五書から歴史書の範囲が、後の10巻は聖書の範囲を超えてユダヤ戦争直前までのユダヤ人の歴史が綴られる。その全20巻という構成とユダヤ古代誌というタイトルは、ディオニュシオスのローマ古代誌に倣ったとされる。ヨセフスのもう一つの著作であるユダヤ戦記とともに、ユダヤ古代誌は初期のキリスト教や1世紀のユダヤ教の理解を望む歴史家に対して価値ある背景を提供しており(ただし、キリスト教徒が一番知りたいイエス誕生から処刑までの時代はちょうどヨセフスの主要参考にした資料の途切れ部分らしく、前後に比べるとやや密度が薄くなっている。)、ヨーロッパのキリスト教徒や知識人階級によって聖書に次いで多く読まれてきた書物である。」


  Wikipediaの通り、本書「ユダヤ古代誌」は、前回のブログで紹介したヨセフス(ティトゥス・フラウィウス・ヨセフス)さんによるユダヤ人の通史で、今回紹介する【ちくま学芸文庫版】は、その内容を6巻にまとめ、その第一巻では、神が天と地を創造してからアダムとイブ、バベルの塔、ノアの箱舟、アブラハムの子孫の諸地域での繁栄。、そして、出エジプト、モーセの律法制定とその律法の内容、そしてモーセの死までのお話が書かれています。実は、今ポール・ジョンソンさんの「ユダヤ人の歴史」(上巻)も読んでいますが、この二人の著作を読み比べていくと、二人の著述内容が互いに補完され、ユダヤの人々の歴史がより多面的に理解できます。彼らユダヤ人は、「契約」という概念を考え、発展させ、道徳、労働を尊び、同じ仲間同士(民族間)で助け合いながら民族の文化を発展・継承していった人々であることがよくわかります。また、歴史的には、キリスト教もイスラム教もそのオリジンはユダヤ教にあったこと、また、言説としてユダヤ人がイエスを殺したとか、彼ら独自のネットワークを駆使し、金融や商業世界を牛耳っているというような言説が流布したその歴史的背景や理由もよく理解できました。


  ここでは、旧約聖書に登場するエピソードについて詳述はしませんが、いくつか今回の読書でわかったことを以下に書いてきたいと思います。


1.人間の長寿について

  このユダヤ古代誌を読んで不思議に思うことの一つに、昔の人間が異常に長寿であることがあります。ノアの享年は950歳 (P54)、アブラハムは175歳。なお、彼と侍女ハガルが子供イシマエルを授かったのが彼が86歳(P80)の時、妻のサラが子供を授かったのが彼が100歳の時です。サラは127歳で死去(P96)。アブラハムの後に登場する指導者モーセでさえ120歳(P429)まで生きています。ではどうして旧約聖書の(最初の)登場人物たちの寿命はこのように長かったのでしょう。。

  ヨセフスは次のように説明します。「第一に彼らは神に愛された者、神ご自身によってつくられた人々であり、彼らの食べ物も長寿に適していた。そのため、彼らがそのような長寿であったのもきわめて自然だったのである。また、彼らのなした天文学や幾何学における諸発見の利用を奨励するためにも神は長寿をお与えになったのである。なぜなら、大年の完全な一周期である六百年を生きるのでなければ、彼らは何ごとも正確に予知できなかったからである。」(P54)「その後、人間の寿命はしだいに短くなり続け、モーセ以後、神は人間の寿命を(モーセの寿命と同じ)120歳と定められた。」(P68)


2.へブル(ヘブライ)人について

  ユダヤの歴史を読んでいくと、ユダヤ人をへブル人とか、イスラエル人という呼称で書いているのがわかります。はっきりした意味の違いはよくわからないのですが、旧約聖書の始めにおいてユダヤの人々は、「へブル(ヘブライ)人」と呼ばれています。そして、彼らがパレスチナ近辺の土地に落ち着き、彼らの 12部族が南北二つにわかれてから北の部族をイスラエル人、南の部族をユダヤ人として区別していったようですが、そのもともとの総称である「へブル人」という呼称の起源についての記述があります。

  「へブル人の起源について話そう。シラはアルパクサデ(*1)の子で、シラの子は、エベルである。ユダヤ人はエベルの名にちなんで、古代からへブル人と呼ばれていた。」アルパクサデの父は、セム。セムの父がノアです。そしてノア、セム、アルパクサデと、ノアから数えた十代目がアブラハムになります。(P66,67) 一般的には、アブラハムが、ユダヤ人(へブル人)の始祖であるとしていますが、ヨセフスさんは、アブラハムの数代前のご先祖をへブル人の始祖と考えいます。


3.アラブ人の祖先

  「ノアの箱舟」のお話以降、アブラハムの子孫が世界中にちらばっていきます。その子孫の一人のイシマエルの子供たち(全部で12人)が、「彼ら自身の武勇とアブラハムの名声を記念して、アラビアの民族と各部族に彼らの名を与えたのである。」(P90)更に、ヨセフスさんがユダヤ人の独特な習慣である割礼について説明しているところでは次のような記述があります。「なお、アラブ人たちはこの儀式(割礼)を十三歳の時に行う。それは、アブラハムの妾(ハガル)から生まれたこの民族の始祖イシマエルが、その年齢で割礼を受けたからである。」(P88) これにより旧約聖書では、アラブ人の始祖はへブル人と同じアブラハムである、としています。


4.割礼について

  ユダヤの人々の独特な習慣に割礼(*2)がありますが、どうしてユダヤの人々の間にこの習慣が起こったのでしょうか。。本書(ユダヤ古代誌)には、「アブラハムの最初の嫡子イサクの誕生後の八日後、割礼を施した、それ以後、ユダヤ人たちは生後八日目に割礼を施すことを習慣にしている。」(P88)「神はアブラハムの子孫が他の民族と混交しないようにとの配慮から、彼らの性器に割礼をはどこした。」(P81)という記述があります。旧約聖書において、ユダヤ人は他の民族や外国人と土地や文化の共有を避ける(忌避する)記述がいくつかあります。それはどうしてかというとやはり、自分たちの信仰する神(ヤハウェ)こそが、唯一の神であり、他民族・外国人の信仰する神々は異質で相容れない神である、という考えが根底にあるからだと思います。そこから他民族の異性と同衾する際に一目でわかる目印として考え出されたのが割礼なのだと推量します。


5.バベルの塔のあった場所

  神ヤハウェに対する人間の慢心の象徴であるバベルの塔。この塔はどこにあったのでしょうか。。ヨセフスさんによると「彼らが塔を建てた場所は、かつてはすべての人が理解できた最初の言葉に混乱が生じたので、現在バビロンと呼ばれている。というのもへブル人は混乱のことをバベルと呼んでいるからである。」(P57)とバビロンにあったことがわかります。


6.ぶどう酒の起源 

  「洪水の後、地が自然の状態に戻った時、ノアは仕事をはじめ、地にぶどうの木を植えた。ぶどうの実が熟すと彼はそれを取り入れた。ぶどう酒ができると、ノアは犠牲を捧げて祝宴を張った。そして酒に酔って前後不覚の眠りに陥った。」(P65)これはおそらくぶどう酒(ワイン)が記述された最も古いものかも知れません。よく中世ヨーロッパの本を読むと教会や修道院などでぶどう酒をつくって、神父さんが食事と共に供した、という話がでてきますが、実はぶどう酒の歴史はもっと古かったんですね。。ノアがぶどう酒を飲んだ最初の人類だったんでしょうか。。。日頃、なにげなく楽しむワインも元をただせばユダヤの人々の文化に負っているようです。


7. 犠牲について 

  旧約聖書においては、アブラハムが息子のイサクを神の犠牲として祭壇へ捧げるなど、重要な式際の時に「犠牲」を用意する場面が描かれます。この「犠牲」にはいくつかの違いがあります。一つは個人によるものと共同体によるもので、前者は犠牲に供される動物を焼き尽くしますが、後者の供犠は、神への感謝を表し、それを供えた人々の祝宴を準備するために行われます。「犠牲」は感謝をささげるためだったり罪を贖(あがなう)ために供される場合があり、その犠牲に供される動物は、主に雄牛、仔羊、仔ヤギ、鳩であったようです。尚、犠牲に供する家畜の肉や内臓の処理の方法には細かい規定があり、ユダヤ教の大祭時には犠牲として供される動物の量も多くなり、このような時には祭司たちは、家畜の畜殺役も担ったのです。


8. 出エジプト  

  モーセの「十戒」で、ユダヤの人々がモーセをリーダーとしてエジプトを脱出するエピソードがありますが、そもそも、どうしてエジプトではユダヤ人が多くなったのでしょう。。 実はモーセ以前の旧約聖書のお話にヨセフのエピソードがあります。ヨセフは父ヤコブと母ラケルとの子で、ヤコブはヨセフの兄弟(10人の異母兄がいた)中、誰よりもヨセフを愛していました。しかし、兄弟たちのねたみを買い、彼らによって隊商に売られエジプトへ連れていかれます。ヨセフは、自らの苦難にめげず己の機智・機転を活かし、エジプトのファラオに認められて出世します。彼からツァフェナト・パネアという名をもらい宰相として、エジプトを国難から救うなどして政治手腕を発揮。その後、父ヤコブ、兄弟たちとの再会・和解を果たし、彼はヨセフであることを明かし和解します。

  ヨセフがエジプトの宰相であったことから、その後ユダヤ人のエジプト移住が容易になり、また、他民族に比べ生活面でも優遇されたことが容易に推測されます。これがエジプトにおいてユダヤ人が多くなった理由なのでしょう。


9.モーセの律法と統治原理

  ユダヤ古代誌(1)の最後には、モーセの規定したさまざまな事柄、規則、禁止事項などが語られています。モーセが書き残した書は、十戒を記した二枚の石板を入れた箱と共に司祭たちへ引き渡されます。この十戒を記した石板を入れた箱(*3)は、この後の旧約聖書の記述に幾度となく登場します。


(*1)アルパクサデ:ノアの三番目の息子セムは五人の子を持ちます。その息子の一人がアルパクサデ。洪水後の第十二年に生まれ。(P67)エベル:アルパクサデの子シラの子。「エベルの子ペレグには息子リウが誕生した。リウからはセルグが、セルグからは息子ナホルが、またナホルからはテラが生まれた。そしてテラはアブラハムの父である。アブラハムはノアから数えて十代目にあたり、洪水後の第九九二年に生まれた。」

(*2)割礼:男性器の包皮を切除すること

(*3)この箱を題材に作られた映画がスティーブン・スピルバーグ監督の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》(原題:Raiders of the Lost Ark)」(1981年製作)です。

( ↓ ユダヤ人の歴史/上巻)