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WUNDERKAMMER

ショートショート 321~330

2018.12.24 15:11

321.「運命は奪い取るものなんだよ」

そういってソイツは笑いながら鷲掴みにした髪の毛を見せてきた。

そういえば、さっき両手でおでこを隠した坊主の女性が、泣きながら猛スピードで走っていったな…

それからというものの、ソイツが勝負で負けたことは一度もない。

・・・

322.「先生、どうして昔の人は地面を歩いてたの?」

『重力なんて目に見えないものに縛られてたからさ』

・・・

323.「…って!それだと貴方…」

「…ら、けっこ…」

「…で…て」

何処からか声がする。

テレビ下を探ってみると、埃かぶった古いビデオから声がしていた。

この声は何度も何度も、自分の夢を反復しながら眠るビデオの寝言のようだった。

・・・

324.気付いたら、天の川を泳いでいた

輝く星々の中を縦横無尽に

泳ぎ、漂い、沈む

このまま泳いでいればいずれ私は死ぬのだろう

しかし自分の命とこの風景

どちらを取るかと言われれば、

私は迷わず美しい方を取ったのだ。

・・・

325.『天使と悪魔の違いはなんですか?』

「天使と悪魔の翼はわかるかい?

羽根があるのが天使で、何もないのが悪魔だ。

天使はね、人を助けるために羽根を

1枚使うんだ。

そして全ての羽根を使い切った時、

…あとは言わなくてもわかるかな?」

・・・

326.塀の上に糸電話が置いてあった。

それを手に取り、

「もしもし」

というと

『もしもし、私は宇宙人です』

と返事が来た。

宇宙人だと?そんな馬鹿な

「ははぁ、嘘つきめ」

というと、

『 何故ばれた 』

先程とはうって変わって酷く不気味な声が聞こえた。

・・・

327.宇宙の澱みから垂れた膿は水平線へ降り立ち、それは三人の悪魔となった。彼女らは産まれを喜び、月の光の下、波の揺れと共に踊り始めた。星を瞬かせた黒と紺のドレスを纏い、目元を現世と遮断させたレースで隠している。白い肌に浮かぶ唇の赤だけが、彼女らの純真で確実な悪を示していた。

・・・

328.心の底から神を慕う貴女を、

大罪へ誘惑し、堕落させて

私と同じ喜びや楽しみを与えたいと、

貴女を神から奪ってやろうと、

心の底から思っている私は

本当の悪魔なんだろうね。

・・・

328.「大丈夫ですか?!」

倒れていた僕を女性が揺り動かした。

「あぁこれは熱中症ね」

彼女はテキパキと僕の服を脱がし、頭に濡れタオル、そして僕に水を飲ませた。

『ありがとう、貴女は看護師ですか?』

「いいえ、でも大丈夫よ。

昨日ブラックジャックを読んだの」

・・・

329.貴女が本能欲望を曝け出し、食べ物を上品に貪ろうと口を開けた時に見えた赤色を見て、ああ聖女も極悪人も、結局は皆同じ、人間畜生なのだと安心いたしました。

・・・

330.ぽさぽさと雪のように君が吐き出したのは白椿だった。

胸元を握り仰向けに、口から溢れる白椿。

椿の流れと君の動きが止まった。

我に帰り抱えると、まるでビーズを零したぬいぐるみのように口からぽさぽさと出てきて、後に残るは君の皮だけだった。

僕は今もその情景の美しさに呪われている。