ベトナムの美容室事情。「'海外美容師'という生き方。」その四。
日本とベトナムでは、やはり気候や生活環境の違いからか、ヘア事情もやはり違っている。
まず、多くの日本人は1日に1〜2回、シャンプーをする。女性ならば1日1回、男性またはショートヘアの方ならば寝癖落としの朝シャンもしくはプレーンリンス(流すこと)をしている人は多いかもしれない。少なくとも1日1回はシャンプーをしている人が多い。
ここベトナムでは、いや、ベトナムに限らず外国人で毎日毎日シャンプーをしている人は、日本人ほどは多くない。
2〜3日に一回。家賃の安いの家はお湯が出なかったりするので、ハノイのように冬は寒くなるエリアでは、1週間に一回だったりする人もいる。
なので、カラーの色持ちは外国人は良い。日本人はその生活習慣から、最もカラーの色持ちが悪い民族だという人もいる。
シャンプーブロー、ヘッドスパ、エステ、トリートメントなどのサイドメニューのみでのご来店が非常に多い。
僕がベトナムに来て働き始めた時に、シャンプーブローだけでこんなにお客さん来るんだ!と言う衝撃を受けた。
そして、海外では、ブロー仕上げの需要がとても高い。日本人的な感覚で言う、コテで巻いて仕上げる様なスタイルも、ブローで仕上げる。アイロンはやだ、と言うお客様も多い。ローカル美容院に行き慣れているお客様はもちろん、ローカルのブロー仕上げを受け慣れている。当然日本から来た美容師さんだからにはという期待値もある中で、初めはこのブローにとても苦戦した。
ガチのコテ巻き仕上げみたいなカーリースタイルをブローで仕上げる経験はほぼ無かった。ドライヤーの出力も高く、日本では見ない様なブローワークが多く感じた。もちろんローカルでも上手い人と下手な人がいるが。
ブローには自信があったのだが、それはあくまで日本の環境、日本のスタイル、日本の道具、日本のお客様だったからという事を痛感した。アイロン仕上げ、波巻きの仕上げのベトナム人はほぼいないので、アイロンワークは日本で身に付けて来るべきだが、ブロースキルに関しては海外に来ることで確実にレベルアップできる。
また、デジタルパーマの需要が高い。日本では、ゴールドパーマやエアウェーブと、デジタルパーマの比率はどうだろうか。デジタルパーマといえば髪に負担がかかる施術というイメージが強いと思う。日本で僕が担当してしてきたお客様の種類別パーマの比率は、ゴールドパーマ、エアウェーブ8割以上、デジタルパーマが2割以下、圧倒的にデジタルパーマは少なく、強くかけたい人、パーマがかかりにくい人用、というような位置づけみたいな感じだった。
しかしベトナムではその比率は逆。デジタルパーマが8割超えだ。
ここも最初は苦労した。
日本人はわざとらしい仕上がりを嫌う。ナチュラル志向と言うか、クルクルは嫌なのだ。セットをしてウェーブを出した時に標準を合わせるイメージ。
ベトナム人のお客様は、ノンブローの状態での仕上がりのリッジ(カールの強さ)を求めてくる。そんなにしっかりかけるんだ!みたいな。
日本人的な感覚でベトナム人を施術すると当然、パーマが弱い、となる。その上、ベトナム人の髪はアジアンヘアーで、一見すると日本人の髪とそれほど変わらないように見える。事実カットはそうだ。が、パーマはまるで別。キューティクルの枚数が多くて、髪質がしっかりしている。薬液の放置タイムは長く、加温もする。スーパーハードの薬で40分置いたりする。日本ではまず見ない光景かと思う。
デジタルパーマの機械の使用も日本と違う。
例えば今当店で使っているデジタルパーマの機械。ロッドの温度は120度、140度、160度の3段階。
日本の設備のみの営業経験の美容師は果たして、どれくらい髪を軟化させ、120度のロッドで何分加温すれば求めるリッジになるかということがわかるだろうか。日本のデジパーのロッドの温度は90度前後位までが上限の機械が多かったイメージだ。
こればかりは経験を積まないと分からないと思う。僕もそう。素直に、先輩美容師に聞くか、現場の設備を使ってトレーニングをして克服するしかない。
後進国では技術的に学ぶことが無い。と言っていたある人の事が脳裏によぎりながらも、僕はまだまだ日々成長している。スキルの向上を実感できる喜びって、美容師なら分かると思う。
もちろん先に挙げたブロー、パーマのスキルは圧倒的に向上した。他にも新生毛の扱いや外国人のヘアの扱い。
学べることはまだまだ本当にたくさんあります。
〜to be continued 〜
ベトナム ハノイ 日系美容室 オーブジャパン
伊藤星太。
「’海外美容師’という生き方。」
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