ひつじはねむれり
クリスマスが終わると、あっという間に新年モードに!毎年、この切り替えが難しい…。もっとゆっくり長くクリスマス気分を味わっていたいですが、なかなかそうもいきません。でも、今日までは…。クリスマスの飾りつけを片付けながら、クリスマスの感動の余韻に浸ります。
今年は、賛美歌「きよしこの夜」が誕生して200年ということですが、今年、初めて歌ったクリスマス・キャロルをご紹介いたします。「ひつじはねむれり」という今から約80年前に日本で生まれた曲です。
「ひつじはねむれり」
羊はねむれり 草の床に 冴えゆく冬の夜 霜も見えつ。
はるかにひびくは 風か、水か、否とよ、みつかい うたうみうた。
(「羊はねむれり」歌詞:『讃美歌21』252番)
作曲者の鳥居忠五郎さんは1898年、北海道の貧しい牧師家庭に生まれました。小学6年生から中学時代を東京の親戚の家に預けられ、その家で使用人のような扱いを受け、こき使われましたが、忠五郎少年は一言も不平を漏らしませんでした。彼の妹が難病にかかっていたので、良心を心配させないようにと、黙って耐え続けたのです。
そんな彼の唯一の慰めが、教会で聖書の話を聞き、賛美歌をうたうことでした。暑い日も寒い日も休まず、歩いて教会に通いました。そこで触れた讃美歌の一つひとつが彼の心に刻み込まれました。
やがて彼は親戚の家を出て、学校の寄宿舎に移ることができました。その頃から音楽に熱中し、オルガンを習い始めました。その後、東京音楽学校(現・東京藝術大学)の声楽科に進学し、音楽家としての人生を歩み始めました。そんな彼に、賛美歌の作曲依頼があり、「ひつじはねむれり」が誕生しました。
神の子であるイエス・キリストが自分を救うために人となって生まれ、しかも、貧しい飼い葉桶の中に、人知れず生まれてくださったこと、そして、貧しかった羊飼いたちが救い主の誕生を知って賛美したことなどを、苦しかった自分の生活と重ねながら作曲したのではないでしょうか。
(参考『賛美歌・聖歌ものがたり』大塚野百合著、創元社)
クリスマスの恵みの中で、さあ、新年へと向かっていきましょう!God bless you!