映画『お母さんが一緒』を観て
(あらすじ)
親孝行のつもりで、母親を山間の温泉旅行に連れてきた三姉妹。ところが、始めから諍いは絶えない。
長女・弥生は「美人姉妹」といわれる妹たちにコンプレックスを持ち、次女・愛美は優等生の長女と比べられたせいで、自分の能力を発揮できなかった恨みを心の奥に抱えている。三女・清美はそんな姉たちを、冷めた目で観察している。
「母親みたいな人生を送りたくない」という共通の思いを持つ3人だが、それでも母親の誕生祝いをするために、夕食時にサプライズでプレゼントを贈る計画を立てていた。
しかし、その相談の間も言い合いは絶えることなく、母親への愚痴を爆発させるうちにエスカレートしていき、やがて、お互いを罵り合う修羅場へと発展していく。
そこへ、清美がサプライズで呼んだ彼女の恋人・タカヒロが現れ、事態は思わぬ方向へと…。
(感想など)
物語中、母は文句ばかり言う人で、娘たちもまた自分の人生がうまくいかない理由を、すべて母のせいにしています。作中、母は一切姿を現しませんが、三人娘の会話の中に確かな存在感を示しています。大きな影響力を娘達に及ぼしているのがわかります。母親は娘たちの心を縛り付けているようです。
まじめで優秀な長女・弥生は、美人の妹たちにコンプレックスを持ち続けています。母親を喜ばせたい一心で、母の言うとおりに生きてきましたが、何をやっても褒めてもらえず悲しい思いをしてきました。クセの強いイタい女性・弥生を、江口のりこが生き生きとコミカルに演じます。
次女・愛美は、優等生の長女と比べられてきたせいで、ずっと不満を抱いています。容姿に恵まれていますが、恋愛はうまくいかず、弥生と同じく独身。母や姉に反発しつつも、どこか気のよいお調子者的な面のある愛美を、内田慈が絶妙なバランス感覚で演じています。弥生と反発したり結託したりと、忙しく立ち回る姿は面白いです。
三女・清美はそんな姉たちのようにならないようにと、恋人を旅先に呼んで家族に紹介しようとサプライズを企てます。強い姉ふたりを相手に奮闘する清美を、若手演技派の古川琴音が演じています。
のほほんとした清美の恋人・タカヒロ役を演じるのは「ネルソンズ」の青山フォール勝ちです。強い女性三人がぶつかり合う中、心地よい緩衝材役を果たしています。
血の繋がった兄弟姉妹や親子について、考えさせられる映画です。笑えて、泣けます。血の繋がりゆえに、互いを罵倒し、修羅場のような喧嘩ができるのだと思います。家族が積み重ねてきた親密な時間が、個人の不満やいらだちの表出を許すのでしょう。
とても悔しかったり、哀しかったりするとき、幼い頃の家族(私の場合は父と母と妹)を、ふと思い出すことがあります。かつての家族を感じるのです。何か懐かしいような、切ないような、断ち切れないようなものを感じます。肉親とはそういうものだと思います。
どんなに派手な親子喧嘩や兄弟喧嘩をしても、「何かあったら、この人たちの味方をするんだろうなあ」とか「葬式には昔を偲んで泣いたりするんだろうなあ」と思います。それが肉親への義理だと思います。人が持つべき心、つまり孝行とか道徳というものでしょう。
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