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日韓「書」文化交流展、大阪韓国文化院にて開催!韓国のハングル書芸家チェ・ルシア氏による書パフォーマンスに感動!ハングルカリグラフィー・ワークショップ体験記

2024.07.20 14:29

大阪韓国文化院で、7月12日(金)から、韓国のハングル書芸家であるチェ・ルシア氏と日本の書道家である寺田白雲氏、両氏による日韓「書」文化交流展、「「書」の調和」が開催中だ。作品の展示及び7月13日(土)に開催された両氏による「書」パフォーマンス、続いて行われたチェ・ルシア氏によるMeet Lucia ハングルカリグラフィー・ワークショップの模様をお届けする。

韓国では日本の書道にあたるものを書芸と呼ぶ。今回の韓国と日本の共通の文化である「書」の文化交流展では、韓国のハングル書芸家であるチェ・ルシア氏と、日本の書道家である寺田白雲氏の両氏が、自身の「書」に対する価値観に基づき、デザインや造形の観点から作り上げた「書」作品が披露された。


初日である12日(金)午後、大阪に現地入りしたその足で大阪韓国文化院、4階ミリネギャラリーへ。日韓「書」文化交流展の入口前では、両氏の写真が並んでお出迎え。


会場入口へ。展示会場の左側半分がチェ・ルシア氏の作品、右側半分が寺田白雲氏の作品だ。


15年前からソウルと大阪を行き来しながらハングル書芸を広めるために尽力してきたチェ・ルシア氏は今回の展示で「ハングルに出会う」というテーマで作品を制作。

ハングル創製の歴史に思いを馳せながら鑑賞。


「한글」(ハングル)

韓国語の文字である「ハングル」を美しく力強い筆致で表現。ハングルへの並々ならぬ思い入れを感じさせる作品。

「하늘 /땅 /사람」(天(・)/地(ㅡ)/人(ㅣ))

ハングルの母音の成り立ちの原理である「天地人」の基本文字を視覚的に表現。

会場の正面左には、「月」「地」「光」「星」「雨」「山」という自然を表す一文字の漢字と、それに対応するハングル、そして漢字とハングルに挟まれた真ん中に、その言葉にまつわるチェ・ルシア氏のメッセージが並ぶ。チェ・ルシア氏の心の中に息づく美しい言葉の世界を形にした作品たち。全体から眺めると、統一感のあるひとつのアート作品のよう。

「ハングルの母音と子音の間の空間はソウルの路地」とチェ・ルシア氏。

迷路のような入り組んだ路地に迷い込んだかのような錯覚に陥る。

달(月)

나의 바람을 너의 바람을 묵묵히 들어주는 달 고마워

私の願いを あなたの願いを 黙々と聞いてくれる月 ありがとう

땅 (地)

두 발을 땅에 디디고 어깨를 펴고 세상을 향해 걸어본다

両足で地を踏みしめ 背筋をピンと伸ばして 世界に向かって歩いていく

빛(光)

밖에서 빛나는 빛이 아닌 내 안에서 빛나는 빛

外から照らす光ではなく 私の中で輝く光

별 (星)

반짝이는 나와 반짝이는 너가 만나 반짝이는 세상을 살아보자

輝く私と 輝くあなたが出会い 輝く世界を生きていこう

비 (雨)

창문에 흐르는 빗방울 속에 우리들의 추억을 담아본다

窓に滴る雨粒の中に 私たちの思い出を込めてみる

산 (山)

산을 오를 때에도 내려올 때에도 한걸음 한걸음 신중하게

山を登る時も 下る時も 一歩一歩 慎重に

入口正面。


寺田白雲氏の作品「心」とチェ・ルシア氏の作品「사랑」(愛)が展示。

一夜明け、13日(土)午後1時、日韓「書」文化交流展開幕式。チェ・ルシア氏、寺田白雲氏による挨拶のあと、寺田白雲氏の特別揮毫により2作品が披露された。

1作目

「誠信交隣」

朝鮮通信使の儒学者雨森芳洲の言葉で、互いに欺かず争わず真実をもって隣国と付き合うことが一番大事だということを表す言葉。

2作目

「みんなが 爆弾なんかつくらないで きれいな花火ばかりつくっていたら きっと戦争なんか起きなかったんだな」

山下清の言葉。

段ボールで花火を描くといった斬新なアイデア、書と絵の美しい融合も目を引いた。

続いてチェ・ルシア氏のハングル書芸パフォーマンスがスタート。


韓国の伝統的な音楽である国楽の厳かで神秘的な調べに導かれるかのように、画仙紙に触れた姿勢からゆっくりと動き出したチェ・ルシア氏は数メートルに及ぶ長い画仙紙を自ら広げながら、ゆっくりとした歩みで自らの舞台を作り上げていく。大筆を手にすると、豪快に筆を躍らせた。真っ白い画仙紙に漆黒の線が舞い、「벗(友)」が完成。筆を持ち替え、滑らかな筆致で「아름다운 우정(美しい友情)」を一気に書き流した。


まっさらな大筆に持ち替えると、観客席に向けて凛とした姿で筆を構える動作を披露しながら、自身の生み出した作品空間を完成させた。「静と動」が混在する音楽とダンス、書芸パフォーマンスがひとつに溶け合った、魂の息吹を感じさせる舞台。観客は時間が経つのも忘れ、美しいハングル書芸パフォーマンスの世界に酔いしれた。


「「書」の調和」が今回の文化交流展のテーマであり、チェ・ルシア氏、寺田白雲氏両氏は何を調和させるのかということを考えながら当日を迎えたという。作品を展示しながら話を交わしたふたり。日本と韓国、国も違えば、使う文字も違うが、ハングルと漢字、ひらがなという文字や内容といったものだけでなく、「線」を共通にして、時間を共有しながら自分を表現することで調和を目指すことで意見が一致したという。


「違ったままでいい。それぞれの個性をぶつけ合おう」

今回の交流展の展示作品、そして揮毫及び書芸パフォーマンスを通じて、両氏の書に対する真摯な姿勢と、日韓の書の異なる魅力を肌で感じることができた。このような文化交流の機会がさらに増えることを期待したい。


続いてヌリホールで開催された【Meet Lucia ハングルカリグラフィー・ワークショップ】では、チェ・ルシア氏が講師を務め、抽選で選ばれた参加者たちにハングル・カリグラフィーの世界を紹介。


まずは参加者らの席を回りながら、ひとりひとり名前を確認してはチェ・ルシア氏がカードにハングルで名前を記入。参加者らに好きな言葉を問いかけると、7つの韓国語の言葉が挙げられた。単語を覚えましょう!と何度も声に出して練習したあと、チェ・ルシア氏によるミニパフォーマンス開始!


「친구」「산책」「할 수 있어」「시작」「책」「우리」「사랑」

7つの単語を参加者らが伝えると、チェ・ルシア氏は真っ白な画仙紙に流れるように単語を披露。その度に喚声が上がる。


チェ・ルシア氏のこれまでの作品紹介に続いて、筆で書くカリグラフィーのレッスンへ。まずは縦線と横線を引く練習、模様を描く練習をしたあと、自身の名前をハングルで書いていく。母と子と同じように、ハングルの母音と子音では母音を大きく書くことや、母音と子音の間に適当な空間を空けることなど、基本となる法則を分かりやすく解説。

字を見ればその人がどんな人か分かるというチェ・ルシア氏。字には書き手の個性が現れる。チェ・ルシア氏の字体はこれまでの人生で培ったものであり、私の字体を真似するのではなく、自分自身の字体で書いてほしいという言葉が印象的だった。


最後には、はがきに自分だけのオリジナル作品を作り、完成!終始笑顔溢れる賑やかなイベントとなった。

◆素晴らしい書芸パフォーマンスに感動しました。パフォーマンスで使用された曲は韓国の国楽だそうですね。書芸パフォーマンスの世界観と調和し、厳かで神秘的な雰囲気を醸し出していました。

ルシア:コンミョン(공명)という打楽器グループの「鮭物語」(연어이야기)という曲です。もともとこの曲が好きだったのですが、偶然グループの代表であるチェ・ユンサン氏とお会いする機会があり、この曲のファンであることをお伝えしたところ、書芸パフォーマンスをする際にご自由にお使いくださいと許可をいただきました。それ以来、パフォーマンスを行う際によく使用させていただいています。


◆「가은」という雅号だそうですね。

ルシア:漢字で「佳恩」です。人々から受けた美しい恩を忘れずに人生を歩んでいこうという意味が込められています。


◆日本で活動を始められてから15年という節目を迎える中、日本の友人たちとの思い出がいっぱい詰まった大阪の地で、日韓「書」文化交流展が開催される運びとなりました。展示は27日(土)まで続きますが、開幕式のパフォーマンスを終えた今のお気持ちをお聞かせください。

ルシア:15年間、ソウルと大阪を行き来しながら、本の出版記念会(*1)やカリグラフィー・コンサートを企画し開催するなど、日本の友人たちと交流しながら友情を育んできました。今回も日本全国からたくさんの友人たちが応援に駆け付けてくれました。感謝の気持ちでいっぱいです。日本での活動15周年を迎えたこの記念すべき年に、大阪韓国文化院で日本の書道家である寺田白雲先生と日韓「書」交流展を開催し作品の展示やパフォーマンスを披露するとともに、近畿大学でもハングル書芸ワークショップを開催することができ、ひときわ感慨深い気持ちです。

友人たちに会い、お互いを大切に思い合うその心に触れるたび、幸せな気持ちに包まれます。今後も、ハングル書芸を通じて私たちの友情は深まっていくことでしょう。それぞれの人生を歩みながら、お互いへ送り合う応援のメッセージは、今この瞬間を全力で生きる原動力になると思います。今回のイベントに熱い声援を送ってくれたすべての友人たちに、改めて心からの感謝の気持ちを伝えます。

(*1) チェ・ルシアさんのエッセイ「멋글씨의 3가지 비밀(カリグラフィーの3つの秘密)」(2014年)


(text &translation:Akane Tanaka)


日韓「書」文化交流展とパフォーマンス

「書」の調和

書道家&書芸家

寺田白雲(Terada Hakuun)

チェ・ルシア(Choi Lucia)

○会期:2024年7月12日(金)~7月27日(土) ※日曜・祝日休館

○時間:10:00~18:00  ※土曜は17:00まで

○場所:大阪韓国文化院 ミリネギャラリー ※入場無料

大阪府大阪市北区中崎2-4-2-4階

地下鉄谷町線「中崎町」駅、2番出口徒歩3分

○主催:駐大阪韓国文化院

○協力:一心書道会

○後援:毎日新聞社、書団 響


プロフィール

チェ・ルシア(최루시아)

1968年10月23日生まれ、韓国・忠清北道(충청북도)清州(청주)出身。

大学1年から「漢文書芸」「ハングル書芸」を本格的に学び始める。

焼酎ラベル「좋은 데이(Good day)」(2006年)を始めとする広告作品や書籍のタイトル文字などを数多く手掛ける。ぺ・ヨンジュン主演映画『スキャンダル(스캔들)』(2003年)では女主人公チョン・ドヨンの手の代役を務めた。

2007年から日本で定期的に書芸ワークショップを開催。以後、台湾、香港、ベトナム、シンガポール、オーストラリアなど海外でも書芸パフォーマンスやワークショップなどを開催した。

2021年には日本12地域を旅するオンラインイベント「Meet Lucia 12 in Japan/ハングル書芸ワークショップ」を毎月開催。2022年からは伝統的なハングル書芸である「宮体(궁체)」「板本体(판본체)」と「カリグラフィー」を学ぶオンラインイベントを毎月開催。

2023年10月には香港で、地下鉄をハングルでアートする作家と、韓国と香港のポーセリン・ペインティング交流展である「CONNECT- Traveling HK MTR with Hangeul」「SUNFLOWER- Searching for Happiness」の展示に参加。精力的に活動を繰り広げ、ハングル書芸の魅力を世界に向けて発信し続けている。

2024年7月12日(金)には近畿大学にてハングルカリグラフィー・ワークショップを開催。

2024年7月12日(金)から7月27日(土)まで大阪韓国文化院にて日韓「書」文化交流展を開催中。7月13日(土)には「書」パフォーマンスを披露するとともにハングルカリグラフィー・ワークショップを開催し、参加者たちと交流した。