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指導者の条件

2018.12.26 23:33

   40年以上も読み継がれている、いわゆる、スタンダード版「指導者心得集」です。このブログでご紹介するのもお恥ずかしいのですが、私よりもっと若い世代の方々にも是非読んで欲しいと思い、紹介させて頂きます。

  著者、松下 幸之助氏は日本を代表する経営者(1894.11.27-1989.4.27) で、現、パナソニック株式会社(1818年創業「松下電気器具製作所」から成長し、その後「松下電器」「パナソニック」で、国民的ブランドになった。)創業者です。「経営の神様」と呼ばれました。  

  松下氏は、幼年期の貧苦の経験から、”水道哲学” を提唱し、「水道の水のように低価格で良質なものを大量供給することで、物価を安く抑え消費者へ広く容易に行きわたらせよう」という経営を行いました。また、終戦後の昭和21年、国の荒廃を憂い「万物の霊長、人間が、なぜこれほど不幸に悩み、貧困に苦しまなければならないのか。。。必ずどこかに、繁栄、平和、幸福につながる道があるはず。それを求めたい。」と、出版事業主体のPHP研究所(PHP=Peace and Happiness through Prosperity/繁栄を通した平和と幸福)を設立。さらには、1979年、70億円の私財を投じて政治塾、公益財団法人松下政経塾を設立したのです。(今日まで数多くの政治家、経営者、大学教員、マスコミ関係者等輩出しているのはご存じの通りです。)このように松下氏は会社経営のみならず、国民、国の繁栄・発展についても憂慮され、尽力されました。

  本書は、松下氏が長年「松下電器」経営者として培った経験をもとに、PHPの研究者と共に世界のリーダーの事例を研究し、「指導者はどうあるべきか」という102の「心得」を説いた「心得集」です。本書において取り上げているリーダーたるや、聖徳太子、大村益次郎、アデナウアー(元西ドイツ首相)、アイゼンハワー大統領、上杉謙信、小村寿太郎、松平定信、、、と、洋の東西を問わず、現代から過去における歴史上の名だたる人物を研究し、「指導者とはどうあるべきか?」「指導者から学ぶべきこと」を徹底的に調べ上げ、「松下流」に咀嚼し、平易な言葉で紹介しています。(「自分の言葉で語る、平易な言葉で語る」のは 、以前紹介した稲盛 和夫氏にも共通しています。)自らが大企業の祖であり、リーダー(指導者)であったことを考えると、「リーダーとは?」「リーダーにとって大切なことは?」という「問いかけ」こそが、幸之助氏が生涯にわたり、自らに突き付けた課題であったのではないかと思います。

       もちろん本書においても、世界のリーダー達を研究し、そこからさまざまな事例から「考え方」や「資質」を挙げています。 では、そういった松下氏が考える「リーダーの資質」の中でも、特に重要な「資質」とは何だったのでしょう?

  松下氏の書籍には、よく「素直な心」「あるがままに見る」「謙虚」「感謝」といった言葉が登場します。実際、本書心得の14番目「感謝する」、21番目「謙虚である」とあり、最後の102番目に「再び謙虚と感謝」というタイトルです。その102番目の「心得」でも「歴史上の指導者もさることながら、今日においてもそれに劣らない立派な指導者が各界におられる。その人々に共通して強く感じられることは、どの人もまことに謙虚であり、きわめて感謝の念にあついこと。」と語っています。

  さらに、最後の「あと書き」では、「(古今のすぐれた指導者のあり方というものに)すでに立派な教え、すぐれた手本はいくらでもある。。われわれは素直にそれをとり入れ、生かしていったらいい。『素直な心』なしには、どんな立派な教えも生かせない。(中略)(それが)指導者にとって、さらには人間として一番大切な基本の心構え。」そして、(自らも)「自分も本書の一条一条について勉強し、生かしていきたい。」と本書を締めくくっています。

  うーん、、指導者に必要な要素は本書でもいろいろ取り上げられていますが、どうやら指導者の資質でも一番のキーワードはどうやら「素直な心」にありそうですね。ちなみに、松下氏の数々の書籍の中に「素直な心になるために」というタイトルの著書があります。 人間は、一人では生きられない、社会的動物です。集団、組織の中で生活しなければなりません。その中で己の利害、感情、見栄、欲望などにとらわれず常に「素直な心」を維持するのは難しいですよね。松下氏が「素直な心」について丸々一冊の本を書いているというのは、現代人にとって「素直な心」を持つのが難しい、という証左でもあると思います。(この本についてはまた機会を見つけてご紹介します。)