WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の解釈の仕方
【WISC-V検査の解釈方法】
WISC-V(Wechsler Intelligence Scale for Children-Fifth Edition)は、子どもの知能を多面的に評価するための知能検査です。
WISC-Vの解釈は、検査結果を総合的に分析し、子どもの強みと弱みを把握し、適切な支援を提供するための基礎を築くために行います。
以下に、WISC-V検査の解釈方法と具体例を挙げて説明します。
《1. 検査の構成》
WISC-V(ウィスク5)検査は、10の主要下位検査と5つの主要指標(指数)から構成されます。
これらの指標は、異なる認知領域を評価します。
《主要指標(指数)》
1. 言語理解指標(VCI):言語的な推論能力、言語概念の理解、語彙の知識。
2. 視空間指標(VSI):視覚-空間関係の理解、視覚的および空間的な問題解決。
3. 流動性推理指標(FRI):抽象的な推論能力、新しい問題への適応力。
4. ワーキングメモリ指標(WMI):短期的な情報保持と操作能力。
5. 処理速度指標(PSI):視覚的な情報処理の速度と正確性。
《2. 全検査IQ(FSIQ)の算出》
全検査IQ(FSIQ)は、5つの主要指標のスコアを総合して算出され、子どもの全体的な知能を示します。
FSIQは一般的な知能の指標として使用されますが、各指標のスコアも重要な情報を提供します。
《3. 個別指標の解釈》
言語理解指標(VCI)
言語理解指標(VCI)は、言語的な推論能力や言語知識を評価します。
VCIが高い場合、子どもは語彙が豊富で、複雑な言語概念を理解する能力が高いことを示します。
具体例:
高い言語理解指標(VCI):子どもは語彙や言語理解に強みを持っており、説明や論理的な議論を得意とする。
低い言語理解指標(VCI):言語的な指示を理解するのが難しいため、視覚的な補助や具体的な例を使った説明が有効。
視空間指標(VSI)
視空間指標(VSI)は、視覚的な情報を理解し、操作する能力を評価します。
視空間指標(VSI)が高い場合、子どもは視覚的な問題解決や空間認識に強みを持っています。
具体例:
高い視空間指標(VSI):子どもはパズルや建設玩具、図形の認識に優れている。
低い視空間指標(VSI):視覚的な情報を理解するのが難しいため、具体的な手順や段階的な説明が必要。
流動性推理指標(FRI)
流動性推理指標(FRI)は、新しい問題に対する適応力や抽象的な推論能力を評価します。
流動性推理指標(FRI)が高い場合、子どもは新しい状況に迅速に適応し、問題を解決する能力が高いことを示します。
具体例:
高い流動性推理指標(FRI):子どもはパターン認識や推論を得意とし、新しい概念を素早く理解する。
低い流動性推理指標(FRI):抽象的な概念や新しい情報に対する適応が難しいため、具体例や繰り返し学習が有効。
ワーキングメモリ指標(WMI)
ワーキングメモリ指標(WMI)は、短期的に情報を保持し、それを操作する能力を評価します。
ワーキングメモリ指標(WMI)が高い場合、子どもは複数の情報を一度に処理する能力が高いことを示します。
具体例:
高いワーキングメモリ指標(WMI):子どもは指示を一度に複数受けて、それを正確に実行できる。
低いワーキングメモリ指標(WMI):情報を一度に多く受け取るのが難しいため、指示を分けて提供することが有効。
処理速度指標(PSI)
処理速度指標(PSI)は、視覚的な情報を迅速かつ正確に処理する能力を評価します。
処理速度指標(PSI)が高い場合、子どもは短時間で多くの情報を処理する能力が高いことを示します。
具体例:
高い処理速度指標(PSI):子どもは時間制限のある課題を迅速にこなすことができる。
低い処理速度指標(PSI):時間がかかる作業に対してストレスを感じやすいため、余裕を持ったスケジュールや作業環境が必要。
《4. 指標間の差異の分析》
指標間に大きな差異がある場合、その差異がどのように子どもの学習や日常生活に影響しているかを分析します。
例えば、言語理解指標(VCI)が高く、処理速度指標(PSI)が低い場合、言語的には優れているが、処理速度が遅いために時間がかかる課題に対してフラストレーションを感じることが考えられます。
具体例:
言語理解指標(VCI)が高く、処理速度指標(PSI)が低い:この場合、子どもは言語的な課題に強いが、試験や宿題などの時間制限のある課題には苦労する可能性があります。
指導者は、タイムマネジメントのスキルを教えたり、余裕を持たせたスケジュールを設定することで、子どものストレスを軽減させることができます。
《5. 個別の強みと弱みの特定》
各指標のスコアを詳細に分析することで、子どもの強みと弱みを特定します。
これにより、教育的支援や介入のための具体的な戦略を立てることができます。
具体例:
強み:高い言語理解指標(VCI)を活かして、読書やディベート、言語を使った活動を推奨。
弱み:低い処理速度指標(PSI)に対しては、時間制限を緩和し、段階的な指導を行う。
《6. 総合的な解釈と報告書の作成》
最後に、WISC-V(ウィスク5)検査の結果を総合的に解釈し、保護者や教育者に対する報告書を作成します。
この報告書には、子どもの認知プロファイル、学習や行動に対する具体的な提案、さらなる評価や介入の必要性についての情報が含まれます。
具体例:
報告書の内容:各指標の詳細な説明とスコア、強みと弱みの特定、具体的な教育的支援の提案、追加の評価が必要な場合の推奨事項。
《WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の解釈のまとめ》
WISC-V(ウィスク5)検査の解釈は、複数の指標と下位検査の評価点を総合的に分析することで、子どもの認知的な強みと弱みを明確にし、適切な支援を提供するための基盤を提供します。
これにより、教育者や保護者は、子どもがその潜在能力を最大限に発揮できるよう支援することができます。
解釈の際には、具体的な事例を基にした分析を行うことで、より効果的な教育的介入が可能となります。
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