【THE SHOKUNIN】住む人が気持ちよく過ごせる空間になるように
【塗装職人】本夛重成さん(45歳)
リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは塗装職人の本夛重成さんだ。豊富な塗装スキルと、尽きない探究心で、リフォーム会社や施主から絶対的な信頼を得ている。
世界に1つだけの色づくり
施主のこだわりを実現
本夛さんが仕事をする上で大切にしているのは「住む人が少しでも気持ちよく過ごせて、いつでも帰ってきたいと思う空間にする」ことだ。「塗装は色を悩むお客様が多い。そんな時は趣味は何か、お子さんはどんなスポーツをしているかなどを聞いています。
海が好きな方なら、塗料に青色を加えるなどの提案しますね。こだわりを形にすることで、家に愛着を持ってもらえ、帰りたくなる家になると思っています」
あるリビングの塗装では、施主のこだわりにとことん寄り添った。日本の塗料メーカーの色サンプルでは希望の色がなく、イギリスの塗料メーカーから10色ほどサンプル塗料を購入。本夛さんが実際に10色を壁に試し塗りをして見てもらった。それでも決まらず、話し合いをしながら、その場で色を作り決定。世界に1色だけの壁の色に、施主も大満足だった。
昔の職人から
塗装技術を引き継ぐ
本夛さんの強みは通常の塗装だけに留まらず、特殊塗装やリペア、アート作品のような壁画の作成もできること。「その中でも、古い職人に教わった刷毛の技術は自慢できるかな」と話す。実は鏡面のような仕上がりにするのは刷毛の方がいい。そうした技術を、父や昔ながらの職人から引き継いでいる。
本夛さんが現場で心がけているのは「ケガをしない、させない」ことだ。「これは初代社長の父親の時代から。ケガをしない環境づくりが大切です」と本夛さんは話す。
「ホンダ塗装」では、夕方5時には仕事を終え、現場を出るのが基本だ。「僕は人生において『時間』が一番大切だと思っています。職人達にも定時に家に帰って自分の時間を使ってほしいです。心のゆとりがケガの防止につながります」
本夛さんは、職人を増やすため「職人地位向上」をテーマに、YouTubeをはじめ、SNSで情報発信をしている。「目標は大きく、週休2日で年収1000万円。塗装職人を子どもがなりたい職業にランクインさせたいんです。塗装職人を憧れの仕事にしたい」と夢を語ってくれた。
▲ゴルフ好きな人の家の外装を手がけた時には、アクセントにゴルファーの絵も描いた
▲大宮にある氷川神社の鳥居の塗装も手がけたことがある。漆ではないが、まるで漆を塗ったような光沢が美しい仕上がり
▲大人の隠れ家的な和食居酒屋には、壁に龍の絵を刷毛で描いた
マスコットのサービィーくん
ホンダ塗装の社用車で、マスコットでもある「サービィーくん」。サビ塗装にしたのは、どこまで再現できるか挑戦するため。また、違和感のある見た目にして「アレなんだ?」と思わせる宣伝効果も狙っている。「古いアメ車が好きなので、それ風な色合いにしました。塗装としては、テーマパークなどの建物で使う材料や技術を使っています」(本夛さん)
推薦の言葉
モノツクリ 代表取締役 丸山廣道さん
東京・武蔵小山で地域密着型のリフォーム会社を運営しています。本夛さんに初めて仕事を依頼したのは約3年前。割烹料理店から「店内の壁に店のロゴを模写してほしい」と言われたものの、施工できる職人がおらず、知り合いから本夛さんを紹介してもらいました。壁に忠実に模写する本夛さんを見て、「こんなことができる職人さんがいるんだ」と驚きました。もちろん、お客様にも満足していただけました。
本夛さんの素晴らしいところは、いい材料や道具があれば、すぐに試して試行錯誤するところ。考えが柔軟で、探究心が旺盛なんです。塗装知識も豊富で、施主様との打ち合わせでは、物腰柔かく、丁寧に説明してくれるので助かっています。
本夛さんからリフォーム営業担当者にメッセージ
「こうしてもらうと嬉しいなぁ」
お客様、営業さん、設計デザイナー、現場監督、職人が同じ立ち位置・立場で段取りや仕上がりを決めていく業界になってほしいと思います。もちろん、お金に関してもです。
あと、わからないことは職人に相談してほしいです。例えば和室の古い繊維壁の塗装は、営業さんが思っている以上に手間がかかります。実は剥がして全部やり直した方が、上から塗装するより安い場合もあります。判断を迷う時には、職人に聞いてもらえたらと思います。
リフォマガ2023年12月号掲載