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全国翻訳ミステリー読書会

第20回福井〈時を戻そう〉読書会レポート(執筆者・藤沢一弘)

2024.07.29 03:00

第20回福井読書会は、ジリアン・マカリスターの『ロング・プレイス、ロング・タイム』(小学館文庫)を課題書に、訳者の梅津かおりさんをお迎えし開催いたしました。


本書は、目覚める度に過去へ過去へと遡っていく主人公のジェンが、息子が犯した殺人を止めるためにその原因を探るというタイムリープものでありながら、ミステリーでもあり、家族小説であります。


今回は訳者である梅津かおりさんをゲストにお迎えする事ができただけでなく、小学館の担当編集者の皆川裕子様からも本読書会に向けて温かいコメントも頂戴することができ、読書会自体もいつも以上に盛り上がりました。梅津様、そして皆川様にはあらためて御礼申し上げます。


そんな盛り上がりを見せた読書会ですが、初参加の方、翻訳ものは普段はあまり読まれないという方、常連さん、そして訳者の梅津さんを交えて様々な意見や感想が飛び交いましたので、その中からいくつかご紹介させていただきます。


・先が気になり一気に読んだ。

・読みやすい上に、後味が良かった。

・ミステリー読みとしては著者の仕掛けに気付くところはあった。

・途中で読むのを止められない。

・ミステリーとしてよりもSFとして楽しんだ。

・この手のものを読んだ事が無かったので、面白いんだけど、最初は一体何を読まされているんだろうと思った。

・一体どこまで戻ればいいのか。生まれたこと自体が問題なのかもと思いながら読んだ。

・家族の関係性の描き方に共感するものがあった。

・伏線が回収されていく様子が気持ち良かった。

・一度目で分からなかった事も、再読ですとんと腑に落ちるものがあった。

・タイムリープものとしては、ひたすら過去に遡っていくだけという設定が新鮮だった。


「とにかく面白く、先が気になって一気読み」と、参加された皆さんが共通して感じたようですが、家族の在り方、関係性に注目された方もやはり多かったです。


その中で意外に思えたのが、主人公のジェンが母親としての自分を責め過ぎなのではといった意見が、実際に母親という立場である参加者の皆さんから多数出たこと。


もちろん、母として息子を想う姿に共感はしつつも、そこまで自分を責めなくてもいいのではとか、子育ては母親だけで無く父親とするものだから自分だけが責めを負う必要は無いんじゃないかとの意見も。


単純に母が子を想う姿に、かつて子供であった(というか親にとっては今でも子供ですが)自分を重ね、逆に子の立場から自省するところがあると感じていた者としてはハッとさせられる意見だったなと思います。


また、家族が抱えていた秘密については、もっと自分を信じて欲しかったんじゃないだろうか、愛する家族といえども嘘をつかれていた事は許せるのだろうか、といった意見も。


これに関してはたとえ相手を責めたとしても、目が覚めると過去に戻ってしまうので、相手も責められた事を覚えていないというか、そもそも責められていなかった事になっちゃうのも問題ですね(笑)。


さて、今回、訳者の梅津さんから色々と興味深いお話をお聞きすることができて楽しかったです。

中には答えにくい質問などもあったかも知れませんが、率直にお答え下さるそのお人柄、とても素敵でした。

ちなみに、本書を訳している時、ちょうどプライベートで重なる部分も多く、他人事とは思えないほどジェンの姿に共感されたそうです。

また、本書は持ち込みで出版にこぎつけた作品で、作者も訳者も、編集者も、そして本のデザイナーも、みんな女性で作り上げたものであるというのも感慨深かったそうです。


また、小学館の担当編集者の皆川様からは、最初は翻訳ミステリーファンからどう受け取られるか不安だったものの、出版後は反響があり、嬉しいと同時に驚いたとのコメントを頂いていたんですが、この読書会において福井の翻訳ミステリーファンからもやはり好評でしたし、ジャンル、そして読者の性別関係無く、魅力的な作品であったことを再認識できました。


そうそう、最初は図書館で借りて読んだものの、あまりに面白く一気読みだったので、あらためて本屋さんで購入したという参加者も。

本書の面白さや魅力を表しているエピソードで嬉しくなりましたが、どうです?

まだ読んでいないという方も読みたくなってきたでしょ(笑)。

気になった方、損はさせませんので、是非とも手に取ってみて下さい!


さて、感想や意見などの他にも、普段はミステリーを読まれない方からの「なにをもってミステリー?」という疑問や、沢山読まれている方からはタイムリープもののおすすめ作品について、そして梅津さんからは本書の翻訳時の裏話などなど、色々なお話が飛び出す中、気付けば閉会の時間に。


そして本会終了後は有志で懇親会へ。

こちらも盛り上がり、更に一部は二次会へとなだれ込むなど、ゲストの梅津さんを始め、参加者の皆様のお陰でなんとも楽しい一日となりました。ありがとうございました!


さて、次回の福井読書会は9月21(土)に開催予定です。

詳細が決まりましたらご案内させていただきますので、お楽しみに~。



福井読書会世話人

藤沢一弘(X(旧ツイッター)アカウント @shaolon_wang)


福井翻訳ミステリー読書会

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