夏の風物詩
https://getnews.jp/archives/3005752 【「風物詩」とはどういう意味?季語とは何が違うの?】より
季節折々に聞く「風物詩」という言葉。夏は冷やし中華、秋は焼き芋など事欠きませんよね。
ことろで、この「風物」とは何のことなのでしょうか。ここでは、「風物詩」の意味、そして似た意味合いの「季語」との違いなどを解説していきます。
「風物詩」とは
まず最初に、「風物詩」という言葉の「風物」とは何か、「風物詩」があらわすものはなにかを見ていきましょう。
「風物」とは
風物詩の「風物」とは、眺めとして目に入るものや風景、季節や土地ならではの物を指す言葉です。
私たちが毎日見ている景色の中でも、若葉や花びら、秋の落ち葉の色付きなど、季節によって様子を変えるものは全て「風物」と捉えても差し支えないかもしれません。
「風物詩」の意味
風物詩とは、文字通り「風物をうたった詩」の事です。
それが転じて、季節の趣きをよくあらわしている事物を指す言葉になりました。
季節ごとの「風物詩」
風物詩は、春夏秋冬変わってきます。
ここでは、それぞれの季節毎にどのような風物詩が挙げられるのか、その一例を見ていきましょう。
春の風物詩
春の風物詩には、桜や菜の花、桃の花に、桜もちなどがあげられます。
その他にも卒業式、雛人形などもあげられます。
夏の風物詩
夏の風物詩には、海水浴、冷やし中華、ひまわりや枝豆などがあります。
夏祭りに、ラムネやスイカだけでなく、夏休みのようにまとまった期間の休みの事を風物詩としてありますね。
初夏なら鯉のぼりや梅雨も含まれるでしょう。
この時期に咲く、アヤメも初夏の風物詩ですね。
秋の風物詩
秋の風物詩には、焼き芋や栗、ススキやお月見などあげられます。
最近では、ハロウィンも秋の風物詩として加えられますね。
冬の風物詩
冬の風物詩には雪、おでん、空っ風などだけでなく、酉の市やクリスマスなどイベントも含まれます。
「季語」との違い
風物詩に似た言葉として「季語」がありますが、季語と風物詩はどのような違いがあるかを見ていきましょう。
「季語」は和歌や俳句に使うもの
風物詩に似た言葉である季語。
こちらはそもそも、和歌や俳句の世界でしか使わない専門用語と言える存在です。
季節をあらわすために、俳句や和歌の中に詠み込む言葉なので、どのようなシーンでも使うことができる「風物詩」とは違います。
また、季語というと古くからあるものばかりと思われるかもしれませんが、違います。
クリスマスやバレンタインといった行事や夏に食べることの増えるアイスクリームなども季語に追加されています。
「季語」の種類
季語には、大きく分けて「事実の季語」「指示の季語」「約束の季語」の3種類があります。
「事実の季語」は、その季節に起こる事実に基づいて決められた季語です。
春に息吹く「木の芽」、夏の暑さを忘れるために行う「暑気払」などがあります。
「指示の季語」は、どの季節にも見られるものに春夏秋冬の季節を表す言葉がついた季語です。
「夏の夜」や「秋彼岸」、「春の雨」などが挙げられます。
「約束の季語」は、どの季節にも見られるものでも古来からの約束事で季節が決まっている季語です。
たとえば、「蛙」は春、「月」は中秋の名月が有名な秋、「虫」は虫の声がよく聴こえる秋、「花」は桜の花(平安時代以前は梅の花)を指すため春の季語になります。
まとめ
風物詩とは、季節の趣きをよくあらわしている事物を指す言葉です。
桜や雪、ハロウィンなど様々なものが挙げられます。
よく似た言葉に季語がありますが、こちらはそもそも和歌や俳句の世界でしか使わない専門用語。
季節を表すために俳句や和歌の中に詠み込む言葉なので、どのようなシーンでも使うことができる「風物詩」とはまた異なります。
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202307/202307_00_jp.html 【日本の夏を象徴する様々な「風物詩」】より
和文化研究家・三浦康子さん
紫陽花と夏の富士山
茅の輪をくぐり、半年の穢れを祓う「夏越の祓」
二十四節気の「小暑(しょうしょ 7月7日頃)」~「立秋(りっしゅう)の前日(8月7日頃)」にかけて送る「暑中見舞い」
8月7日頃までの約18日間を「夏の土用」と呼び、特に「土用の丑の日」(今年は7月30日)に食べると良いといわれている鰻のお重
蒸し暑い時期を乗り越える日本らしい「すだれ」
浴衣で打ち水をする様子
ガラスの器に氷とともに盛り付け、目でも涼を取る工夫を凝らした「そうめん」
古来から四季を大切にしてきた日本には、それぞれの季節にしか楽しめない「風物詩」が存在する。夏祭りや花火といった行事、涼を呼ぶ浴衣(ゆかた)やかき氷など、日本の夏ならではの風物詩について、和文化研究家の三浦康子(みうら やすこ)さんに話を伺った。
日本の「夏」というのは、いつからいつまでを指しますか?
よく「暦の上では」という表現をいたしますが、5月初旬の夏が立つと書く立夏(りっか)から、8月初旬の秋が立つと書く立秋の前日までが暦の上での日本の夏です。旧暦の時代も、今の新暦*の時代も、二十四節気**に基づいた暦の上での四季の設定は変わりません。ただ、実際に私達が体感する季節としては、気象学上の6月7月8月が夏になります。私たちが「夏の風物詩」と呼ぶときの夏の期間はこちらになると思います。
よく使われる「風物詩」という言葉ですが、どういった意味を持っているのか、またどのように使われてきたのかなど教えてください。
風物詩というのは、景色や季節などの風物を情緒的にうたった詩歌という意味もありますが、通常私達が使っているのは、時季を特徴づけるものの総称です。日本には「春夏秋冬」がありますが、それぞれの時季を象徴するような特有の文化や風習、現象や食べ物、売り物などを指します。
夏の情緒を感じさせる物事を風物詩と呼びますので、地域や人、時代によって何が風物詩なのかは違ってくると思います。一方で、例えばお祭りや花火など、日本人なら「これが風物詩だね」という情景が共通して存在しているのも面白いなと思います。
伝統的に夏というのは、日本人にとってどのような季節として受け止められていると考えますか。
夏は太陽の力が一番強くエネルギッシュな季節です。作物が一番育つ大事な時期である一方、暮らしという観点からは、日本は非常に蒸し暑く過ごしにくい時期です。厳しい暑さを知恵と工夫で乗り切る季節、ということが言えると思います。
そのような蒸し暑い日本の夏ならではの習慣や行事、風物詩を改めて教えてください。
まず夏に向けた準備として衣替え(ころもがえ)があります。6月1日が目安になりますが、暑い季節に適切な衣服に着替えられるように、箪笥(たんす)やクローゼットの中身を入れ替える作業です。また、6月は各地で蛍が見られる時期なので、夜に涼みながら蛍のひかりを観賞する「蛍狩り」(「里山の夜を淡く照らす蛍たちOpen a new window」参照)もあります。6月末には各地の神社に設置された茅の輪(ちのわ)***をくぐる「夏越の祓(なごしのはらえ)」という行事も行われます。これは茅の輪をくぐることで、1年前半の穢れを祓い、後半も無病息災を願う行事です。
7月に入りますと、暑さが一段と厳しくなります。非常に厳しい夏の盛りに相手をいたわるための「暑中見舞い」や「残暑見舞い」を、通常、はがきで送ります。自分の周りの人たちにいたわりの気持ちを伝え、近況を知らせる大切な文化です。それから様々な「夏祭り」が地域ごとに行われます。「七夕(たなばた)」な様々な夏の行事を象徴するお祭りがありますが(「おりもの感謝祭一宮七夕まつりOpen a new window」参照)、作物の豊作や無病息災といった庶民の願いが込められています。
立秋の前日までの約18日間は「夏の土用(どよう)」と呼ばれており、特にその期間に巡ってくる丑(うし)の日は「土用の丑の日」と言われ(今年は7月30日)、蒸し暑い時期に夏バテをしないよう、鰻(うなぎ)やにがうり、きゅうりといった瓜(うり)類、うどんなど日本語で「う」のつく食べ物を積極的に食べる風習があります。食い養生とも言われていますね。
8月に入りますと「お盆」がやってきます。多くの地域では8月15日を中心とした日程で行われるのですが、地域によっては7月15日というところもありますね。お盆とは祖先の霊をまつる行事のことで、ご先祖様の霊をお迎えする期間のこと。家族みんなが集まり、ご先祖の供養をするだけではなく、今生きているご両親や祖父母にも感謝し絆(きずな)を深めるという大事な行事でもあります。なので、この時期に日本では「お盆休み」という長期休暇がありますね。また、このお盆の時期にも各地で「盆祭り」や「花火大会」(「夏の夜空を艶やかに彩る花火大会Open a new window」参照)が開かれ、多くの人が涼やかな夜の行楽を楽しみます。
冷房などの空調がなかった時に、夏を涼しくするために生まれた風物についても教えてください。
伝統的な日本の家というのは、実は夏向けに作られています。14世紀前半に活躍した歌人で随筆家の吉田兼好(よしだ けんこう)が書いた随筆集「徒然草(つれづれぐさ)」にも<家のつくりようは夏を旨(むね)とすべし>と書かれているほど、昔から風の流れを利用し、室内にこもる熱をいかに放出するかということに知恵を絞った住まいになっているのです。
そのための工夫として、まず「すだれ」や「よしず」****を屋外に付けることが挙げられます。外側に離してつけることで、家屋との隙間に日陰が生まれて空気が冷やされ、風通しも良くなります。
さらに、庭先や道に水をまいて地表の気温を下げる「打ち水」もあります。日本人の夏の暮らしに継承されている風習で、気化熱で家屋の熱が冷やされたり、風の対流を起こして冷やした空気が入ってくる効果を生みます。非常に賢いやり方ですよね。
また、風が吹いていることを知らせるのが「風鈴」(「風鈴の音を楽しむ夏まつりOpen a new window」)です。美しい鈴の音で風を教えてくれる夏らしい装置だと思います。部屋の中では「扇子」や「うちわ」など手元で風を起こす道具も風物詩のひとつです。
また、部屋を涼しげにしつらえる工夫として、「金魚鉢」に金魚を飼って楽しんだり、「釣しのぶ」と言う、いわばハンギングバスケットのような植物を軒下に吊るして、涼しさを演出することもありますね。
暮らしの中では、「浴衣(ゆかた)」*****を着て夕涼みに出かけたりしますね。浴衣は、元々はお風呂に入る際に着用する着物でした。それが湯上りに着るようになり、家でくつろぐ際の着物になり、夕方以降のカジュアルな街着に変化していったのです。最近では夏のおでかけのために新調するような、おしゃれ着になってきています。
日本人は衣服に関して、その季節季節にあった素材や色、柄を選ぶことをとても重視していました。それは自分の着心地だけではなく、見ている周りの人に対しても季節感を届けるという配慮をしているからなのです。
最後に海外の方に向けて、おすすめの夏の過ごし方、体験してもらいたい夏の風物詩などあればぜひご紹介ください。
大きな夏祭りは見ていただきたいと思いますし(「青森が誇る夏の風物詩『ねぶた祭り』Open a new window」「エネルギッシュな踊りに心奪われる『よさこい』Open a new window」参照)、機会があればその時に浴衣も経験していただきたいですね。また日本独特の繊細で美しい花火(「夏の夜空を艶やかに彩る花火大会Open a new window」参照)もぜひ見ていただきたいです。
里山にお出かけする方には、蛍狩りも経験していただきたいと思います。またちょっとしたことではありますが、風を利用する暮らしの知恵に触れていただくのも良いかと思います。
食べ物ではこの時期ならではの「ひやむぎ」「そうめん」******といった冷たくて美味しいもの、かき氷や冷奴もそうなのですが、冷たさが格別の夏の美味しい食べ物で涼をとる習慣に触れていただくのもおすすめです。
また「見立て」の文化というのでしょうか、目でも涼やかで、実際に味わうのも楽しいという遊び心が、夏の懐石料理*******や京菓子(「涼やかな夏の京菓子Open a new window」参照)などでも楽しめると思います。
日本の夏は蒸し暑く肉体的には大変ですが、夏ならではの風物詩に出会える楽しみがあります。日本人の季節を楽しむアンテナの高さを感じていただけると嬉しいですね。
* 日本は、1872年、グレゴリオ暦(太陽暦)を採用し新暦と称した。旧来使用していた太陰太陽暦を旧暦と呼んでいる。
** 1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを六つに分けたもの。今でも立春、春分、夏至など、季節を表す言葉として用いられる。
*** イネ科の草、チガヤやわらを束ねて作った大きな輪
****「すだれ」とは材料に細く割った竹や葦(ヨシ)などを用いて編んだもので、日よけや目隠しなどの目的で吊り下げて用いるもの。「よしず」は材料に葦が使われ、大型で軒先などに立て掛けて使うもの。
***** 和服の一種で木綿の浴衣地でつくられた単衣(ひとえ)の長着。
****** 小麦粉で作られた乾麺の一種であり、消費者庁所管の食品表示基準では、長径1.3mm未満の麺が「そうめん」、長径1.3mm以上、1.7mm未満の麺が「ひやむぎ」である。
******* 本来は、14世紀から発展、整えられてきた日本の伝統的な供応料理でもっとも格式が高い本膳料理を簡略化したコース料理を指すが、現在は、酒とともにいただく和食のコース料理を表す場合もある。