傷つきたくないから自分を低く見積もる
こんにちは、
ドクターかよです。
傷つかないために
自分を低く見積もる。
それはときとして
自分を守ってくれるけど、
同時に
自分を傷つけている。
というお話です。
社会人の方が
わたしの外来に訪れました。
(特定されないよう配慮しています。)
「仕事で何度も失敗してしまう。」
と言われます。
「先日はついに
会社に迷惑がかかる
大きな失敗をしてしまった。
会社に行くのがつらい。」
とも言われます。
今日は何を失敗するのだろう、
上司から何を言われるのだろう、
とビクビクしながら
毎朝出勤するそうです。
わたしはふと
「もしかして
『自分はダメなやつだ。』
『どうせ失敗する。』
と思っていませんか?」
と聞きました。
この方は
「そうです。
思っています。
『わたしは仕事ができない』
と、自分を下げていた方が
楽なんです。
できると思っていたら
できなかったときにつらい。
プラスからマイナスに下がると
落差が大きい。
だったら
最初からマイナスのほうがいいんです。
落差が小さいからです。
ミスをしても
『ほらやっぱりできなかった。』
と、ダメージが少ないんです。」
と言われます。
わたし
「それは人からの評価もですよね?
人から期待されるとします。
期待に応えられないと
相手から
ガッカリされる。
だったら
最初から期待されない方がいい。
ダメな奴だと
思われていた方がいい。
なぜなら
そちらの方が楽だから。
無意識にミスをして
自分の評価を下げる。」
患者さん
「……………そうですね。
その通りです。」
この方はこうして
自分を守ってきたのだと思います。
でも
自分を守ると同時に
傷つけてもいる。
続けると
心が蝕まれてしまいます。
この方に心理検査を
受けてもらうことにしました。
自分の得意不得意が分かることで
職場で応用できないかと
考えたからです。
心理検査の結果、
この方の能力は高かった。
平均を軽く超えている。
耳で聞くより
目で見る方が
得意なことも分かりました。
指示を耳で聞くのではなく
紙に文字や絵で書かれた方が
理解しやすいのです。
職場に重要な指示は
紙に書いて渡してもらうよう
お願いしました。
ご自身でも
・大切なことを言われたときは
メモを取る。
(ぜんぶ書くのではなく
要点をまとめる。)
・分からなかったときは
「これはこういうことですか?」
と聞き返して正しく理解する。
をしてもらうことにしました。
少しはミスが減るはずです。
しかしこの方は
「変わらないと思います…」
と弱気です。
わたしは言います。
「〇〇さんは今まで
『自分はダメなやつだ。』
と思うことで
ご自身を守られてきました。
最初に自分を傷つけることで
自分に期待しないように
相手から期待されないように
していました。
一見いいように見えるけれど
これは傷が浅いだけ。
繰り返せば繰り返すほど
傷は積み重なり深くなります。
〇〇さんは
自分をダメと言いますけどね、
心理検査の結果を見ると
ぜんぜんダメじゃないですよ。
むしろ
胸を張っていい結果です。
良くできている。
数字に出ています。
それでも
〇〇さんが自分をダメだと
思いたいのであれば
それでもいいですよ。
この場合
職場でいくら工夫しても
ミスは減らないと思います。
『自分はダメだ』
という現実を作り上げます。
『自分は最高だ!!
素晴らしい人間だ!!』
なんて思えなくてもいいですけど
(わたしも無理www)、
『自分は
ダメじゃないかもしれない。』
くらいには
思っていいんじゃないですか?
だって
心理検査が証明しているから。
心理検査をお守りにして
やってみてくださいよ。」
わたしは続けます。
「それでも
間違えるときがあるかもしれません。
『ミスをする』
=
『自分はダメだ』
ではありません。
人格の否定に繋げてはいけません。
『ミスをする』
=
『そのやり方は間違っている。
次からはこうする。』
です。
ミスをするたびに
自分を傷つけなくていいです。」
この方はハッとしたお顔をされ
「できることをやってみます。」
と言われました。
追加のアドバイスとして、
職場でできる
身体へのアプローチも
お伝えしました。
「間違えないように。」
となると
身体が緊張します。
緊張すると慌てるため
リラックスを
心がけてもらいました。
また、
できていないことに
目を向けがちなので
できたことに注目するよう
お願いしました。
自分を低く見積もる生き方を
これまでされていたので
急には変わらないかもしれません。
『やっぱりわたしはダメだ。』
『いやそうじゃない。』
『ダメだ。』
『今日はこれができた。』
『もう無理。』
『意外と大丈夫だった。』
と、揺れながらも
前に進んでほしいです。
夜道を自転車で
走っているとします。
先は暗闇で何も見えません。
見えるのは
自転車のライトで
照らされた
数メートル先だけ。
見える
その数メートル先のことをやるのです。
目の前にあること、
分かることをやり続ける。
やった分だけ
必ず先に進んでいる。