Another 白蝶草―一緒に居たい―
終焉を唄う者を倒し、アーテリスを救ったガウラ。
それから暫くは、1人であちこち飛び回っていたが、日に日に疲労の色が見え始めていた。
それに気がついた恋人アリスは、心配で声をかけていたが、当の本人は"大丈夫だ"としか言わず、本心をさらけ出してはくれなかった。
今日も、疲労の色を見せながら彼女は帰宅してきた。
「ガウラ、おかえり」
「あぁ、ただいま…」
アリスの心配そうな顔を見て、溜め息を吐く。
「毎日そんな顔して、大丈夫だって言ってるだろ」
「心配するに決まってるだろ。もの凄く疲れた顔してるんだから」
「…………」
アリスの言葉にガウラの言葉が詰まる。
「なぁ、疲れの原因は英雄の肩書きか?」
「…………」
ガウラは図星で何も言葉が出てこない。
その様子に今度はアリスが溜め息を吐いた。
「やっぱりな…、なんで打ち明けてくれないんだよ…」
すると、ガウラは感情が爆発したかの様に叫び出した。
「僕だってどうしたいか分からないんだよっ!ただ、困ってる人や問題を解決してただけなのに、みんな僕を英雄扱いしてっ!英雄なんて呼ばれたくないのにっ!僕はただ、世界をみたいだけの冒険者なのにっ!!」
ガウラの瞳は潤んでいるが、涙が落ちることは無い。
「僕を誰もガウラとしてみてくれないっ!僕は英雄じゃないっ!僕はっ…僕は旅がしたいだけっ!!でも、英雄と呼ばれたくないっ!!もう、どうしたらいいのか分からnー」
「ガウラっ!!」
感情がぐちゃぐちゃで、纏まらない言葉で気持ちを吐き出しているガウラを、アリスは力強く抱きしめた。
「辛かったよな…。もっと早く打ち明けてくれれば良かったのに。俺、そんなに頼りない?」
「………」
アリスは優しい声で言葉を紡ぐ。
「俺さ、ガウラの恋人なんだよ?ガウラを支えたいんだ。それとも、弱音を吐いたら俺が幻滅すると思った?」
アリスの言葉に、ガウラは黙ったままだった。
「俺、ガウラから離れないよ?ずっと一緒に生きて行きたい」
そう言ってアリスは身体を離すと、ポケットから清純の指輪を出した。
「?!」
「俺の奥さんになってくれる?」
ガウラの瞳から、やっと涙が零れた。
そして、くしゃくしゃの顔のまま、何度も頷いた。
「へへっ、良かった!」
アリスは再びガウラ抱きしめた。
「暫く休もう。エタバンして、新婚旅行しよう。2人でいれば、空気読んで声掛けてくる人も少ないだろうしさ」
「うん……うん……っ」
アリスの胸で泣きながら頷く。
その彼女の頭を、泣き止むまで優しく撫で続けた。