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わかば通信

今日も 晴れ 湯豆腐

2018.12.30 06:27

2018、12.29  湯豆腐

  歳末どのようにお過ごしですか。

    この2、3日またぐっと冷え込んできたので昨夜の夕食は湯豆腐に。   池波正太郎の食のエッセイ本のファンで、よく「酒肴日和」などをぱらぱらとめくっていました。

   

  池上氏は1923年(大正12年)東京浅草生まれ。昭和のはじめ頃人々が何を食べていたかや、どう料理していたかなどが書かれていて、いわば食の原点のように感じられることがあります。

   それで、お菜をつくるのにあきたときなど、ぱらぱらとめくっていると、素材のおいしさや味わいかたの原点を見るようでしんせんな気持ちになり、そのどれかをつくってみたいな、と思います。 普通の料理本を見ても、こういう感情はなかなかおこってきません。


   そんなことで昨夜は、池上氏の書いていらした湯豆腐をつくることにしました。

    夕方スーパーに行き、なんとなくうろ覚えで豆腐、ホタテ、さらには春菊などを購入。 土鍋に昆布をしいて水をはり、豆腐とホタテをいれました。貝の入った湯豆腐は煮立ってくると白くにごり湯気もなめらかで、よけいにおいしそうに見えます。薬味は醤油にショウガ、刻みネギ、酒に出汁をほんの少し。豆腐の真ん中にうつわごと入れてあたためます。


  夫には早めに食べてもらい、深夜近くに冷えた体で仕事から帰ってきた次男のためにあらためて食材を入れ火にかけなおします。 

「うまい!」 

「そう」

  得意になっていると、

 「でもこれ、ホタテでよかったかな・・・・・・」

 次男が土鍋の中を見て、首をかしげました。

 突然、「あ、ハマグリだった」と思い出しました。 記憶から完全に抜け落ちていたのですね。

 「そうだった。ハマグリだったわね」 少し照れながら言いました。

 こういうところにも、徐々に脳の退化がきているようで、次男は修正してくれたり放っておいてくれたりいろいろです。 



「×月×日 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

〔ジョニーは戦場へ行った〕の試写を見る。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

帰宅して、夕食は、蛤を入れた湯豆腐。 湯豆腐には大根を薄く切ったものを入れると、豆腐が白くふっくらと、おいしく煮える。まことに食物の取合わせはふしぎなものなり。 冷酒を茶わんで三杯。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・」

                   (池波正太郎「酒肴日和」徳間文庫カレッジ)


  老成した方のように感じられますが、亡くなられたのは67歳の時。今の私たちに比べ、だいぶ大人のように感じられます。比べて、今の私たちが幼く、いつまでも大人になれない、ということでしょうか。 

 いえ、いまの自分を見ているとまるで、大人になる前に、老化に向かう下り坂を一直線に降りているという恐怖すら感じられます。

 とりあえず日々一時一時を大事にし、食についても、命をつなぐ手段であるとともに、食文化ととらえる心の余裕を持っていたいと思います。