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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

『○○法は現代の科学では証明できない』の誤解⑥

2018.12.31 00:39

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


何回かに分けて、 臨床研究で良い結果が出ていないものの、長い間使われ続けている理論、治療法に関して『○○法は現代の科学では証明できない』という発言に対して書いています。 


タイトルのフレーズには医学研究に対する典型的な誤解が含まれています。 典型的な誤解として6つのものを上げました。ちょっと繰り返しすぎてしつこい(?)ので今日は繰り返しません。


ご興味があれば前の記事をご覧いただければ幸いです。 


今日は最終回です。⑥に関して書きます。

⑥○○法に関する研究は現在進行中なので、間もなくエビデンスが出ます。→多分嘘です。もし講師の先生がそのことを真剣に信じているならば、その先生も本部の人たちに騙されています。 


非常に有名なリハビリ理論でこの様なことを言う団体があります。「優秀な国際インストラクター達が研究しているので間もなく、エビデンスが出るでしょう」という論調です。 こういった論調に聞き覚えのある方がいらっしゃるかもしれません。 ただ、こういった話は、私がPT養成校で学生だった10年以上前からありました。


当時からずっと「もうすぐ」、「もうすぐ」と言っていました。10年以上前に聞いたときは「ほ~、そういうものかな」と思いましたが、今は少し呆れています。恐らく、ずっと「もうすぐ」と言い続けていくんだと思います。 


「そんなことはない。水面下で研究が進んでいるかもしれないだろう!!」と考える方もいらっしゃるかもしれません。そういった疑問に関しても違いますという根拠があります。 

なぜかというと、まず、そういった有名な治療理論の中には、臨床研究によって効果が否定されているものもあります。ただし、医学は科学である以上、結論がひっくり返ることはあり得ます。完全な白黒がつくことは非常にまれで、ほぼ全ての医学に関する知見は「極端に白に近いグレー」と「極端に黒に近いグレー」の間のどこかに位置しています。 


そういった意味では、この有名な治療理論は「極端に黒に近いグレー」です。この状態から治療として有用であるとされる「白寄りのグレー」に結論を変えるためには、よくデザインされた大規模な臨床研究が複数必要です。


そしてこのような研究は研究中の不正を防ぐために手順(プロトコル)を事前に申請する必要があります。そしてそのプロトコル自体が論文として雑誌に掲載可能です。 ですが、現在、そういった臨床研究は見当たりません。  


というようなことから、 「○○法に関する研究は現在進行中なので、間もなくエビデンスが出ます。」と言っている人がもしいたら、意図的に嘘をついているか、こういったルールを把握しておらず、本部の人たちが言うことを鵜呑みにして、騙されてしまっているかのどちらかであるということがわかります。  


自分の支持する治療理論を人に勧めるために、嘘をつくのは倫理的に許されないと思いますし、もしもこの様な医学研究に関する基礎的なルールを知らないならば、その講師の先生から学ぶことは特にないと思います。 


 以上、6回に渡って書いてきました。タイトルの様なフレーズを当たり前の様に言う講師の先生であったり、団体の講義に関しては十分に注意なさってください。



今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 





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