三代目❤夢小説 『NAOTO編36』
沖縄本島から船で1時間、珊瑚礁に囲まれた渡嘉敷島に着いた。
フェリーを降りると、エメラルドグリーンの波間にウミガメが泳いでいるのが見えた。
ダイビングスポットとして世界的にも有名な美しい慶良間諸島。
ゆっくり休日を過ごしたい気分だが、今はそれどころではない。
「東京からお越しの片岡様!」
「民宿マリン」と書かれた白いバンの横に立つ濃い顔の男性が目に入った。
「はい!片岡です」
「めんそーれー、さぁ!どーぞ」
「急な予約に対応していただいてありがとうございます」
バンの後部座席に乗り込むと、男性が人懐っこい笑顔を見せた。
「今はシーズンオフなので予約も少なくて」
「そうですか」
「ダイビングですか?」
「あ、いえ…知り合いを探しに来ました」
「渡嘉敷にですか?島の人間ならすぐに見つかると思いますよ」
民家もまばらな一本道をバンが走る。
対向車もなく、道をゆく人もいない。
運転席に座る50代くらいの男が民宿の主人だとすぐに想像できたが、まりあのことを聞くべきか悩んでいた。
結婚を控えているなら尚更だ。
東京から一人でやって来た男が娘に会いに来たと言えば、普通の親なら心配するだろう。
顔だけ見て無事が確認できたらそれでいい。
そんなことを考えていると白い平家が見えてきた。
『民宿 マリン』
まりあの実家だ。
「車止めて来ますのでどうぞ中にお入り下さい」
「はい」
車を降りると、入り口の横に無造作に置かれているダイビングのボンベや器材が目に入ってきた。
ドアが開いて中から長い髪を後ろで束ねた女性が出てきた。
「めんそーれー、お疲れでしょう、さぁどうぞ」
二重まぶたで彫りの深い女性を一目見て、まりあの母だと直感した。
入ってすぐに長いカウンターがあって、コーヒーのいい香りが漂っている。
靴を履いたままコンクリートの床を進み、部屋に案内された。
靴を脱いで中に入ると、6畳のスペースに小さなテレビとエアコンだけが設置されてあった。
「お荷物置かれたらシャワーのご案内しましょーね」
両側に同じような部屋がいくつか並んでいて、中央に共同のシャワー室とトイレがある。
「ウェルカムコーヒーでもどうぞ」
カウンターに案内されアイスコーヒーを注文した。
「お夕飯は18時ごろでよろしいですか?」
「はい、ここから海は近いんですか?」
「すぐそこの小道を抜けるとビーチですよ、今の時期はなんにもありませんけどね」
そんな会話をしてると主人が戻ってきた。
「まりあは?ウジャか?」
ドキッとした。
「出かけたさー」
喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
コーヒーを飲み干すと席を立った。
「ちょっと散歩してきます」
つづく
不定期更新になります。