提案『子供の深層心理に入り込む親の技量』
今回はお母様からのご相談に回答する形で提案記事を書いて参ります。そのご相談というのは2歳のお子さんが指示を聞き入れることができないというものです。「触らないでね」と言われると触る、「開けないで」と言っても開ける、「このお菓子は明日食べるんだよ」というと目を離した隙に開けて食べるなどどこのご家庭でも起こりうる親御さんの悩みです。
子供達は成長と共に親から言われたことを素直にイメージして実行する深層心理が働いてくるのですが、1歳〜2歳場合によっては3歳までが好奇心が大きく働く年齢です。よって「触らないでね」と言うと逆に触りたくなってしまい即行動をとってしまいます。今回のご相談もそのような作用が働いていると思われます。本能や好奇心の働くままの年齢期と前頭前野が発達し理性で物事を判断できるようになる年齢期で子供の行動が変わる発達に分かれる事を認知しておきましょう。
3歳未満は「触らないでね」で育てるのではなく「見るだけね」で育てます。しかし見るだけを最初から実行できるのではないので繰り返し手を出さずに見ることを実行させます。そして「見るだけよ。」と伝えすかさず「どんな色してるかな?どんな形してるのかな?しっかり見てごらん。」と見ることに繋げる語り掛けを行います。レッスンでも季節ごとに変わる花や行事のアイテムに小さな子供たちは興味津々ですが、私は必ず「見るだけね」と簡潔に何度も伝え見るだけを実践していくと次第に触ろうとせず見るだけ行動を取ることができるようになります。五感を育てる意味では触りその手触りを確認することが望ましいとは思いますが、この世の中全て手に取ることができるとは限りません。触りたい感情を持ちつつ見るだけのものがあるんだと理解できるように促すことも必要なことです。ある意味小さな我慢をするということになります。
またこの年齢期だけではなく子育てに於いて命や怪我事故に繋がることそして躾上必要なこと以外は肯定的な言葉で言い聞かせをすることが必要です。よって「触らないでね」「開けないでね」ではなく「見るだけね」や「このお菓子は明日食べようね」ではなく「今日はこれがおやつだからね」と伝えたり、食欲のあ流お子さんやお菓子に目のない子ならそもそも見せないような対応をすることが必要だと考えます。
さて子供は親が育てたように育つという話をこれまで幾度もしてきましたが、親が子供にかける言葉がかなり重要で子供の特徴を肯定的に捉え伝え育てるとその肯定的部分が育ち、子供の欠点を悪気なく言葉にして育てていると欠点が強調した育ち方になります。なぜなら子供は親がイメージして言葉にしたことを実行しようとする深層心理が働くからです。思いは伝播する思いは通ずるという言葉がありますが、親子の間では想像以上にそのようになるので私は見えない臍の緒で繋がっているので気をつけましょうと話をよくします。どんなに子供の欠点が目立ってもその欠点をプラスに捉えるように言葉にすることや思いを心に刻むことが指1本触れずとも良い結果に導く最善の道です。思いは通ずです。
また親がイメージした子供の姿を子供にどう伝えるかによって子供の深層心理に深く働いてしまうので、親がしなければならないことは子供の中の思いや考えていることを理解することになります。子供をじっくり観察していると見えてくることはあるのですが、子供の思いや考え方を知るにはさらに一歩進んだ方法を親が実行していかなくてはなりません。今回はその方法を簡単に記していきます。子供の行動で見えてくるのは氷山の一角です。表面化していること以上に多くのことが子供の中に存在していることを理解し、子供のありのままの心理を引き出すよう努めて下さい。それではその引き出す4つの方法を記していきます。
1、傾聴に徹する
私たち大人はこれまでの経験から子供がどのように思っているのかを推し量るという事を行います。これは親であれば当然そうするでしょう。しかし子供の深層心理に気付くためには親は子供の話をただただ何も言わずに聞いてあげる事であり、子供が間違ったことを言っても口を挟まずに最後まで耳を傾ける事です。批判も否定もアドヴァイスも共感もせずにひたすら子供の言葉に傾聴する事です。子供の話を聞いていると矛盾だと感じた場合などは話を一旦止めて質問をしがちですが、そういうことは一切せずに先ずは子供が話すこと全てを受容することが必要ですから最後まで聞くことに徹し、そして子供が胸の内を開いて話ができるように意識を持ちましょう。たとえ話す子供の態度が悪くても注意せずに話を聞く忍耐力も親には必要です。
2、表情を読む
矛盾する話ですが親子であっても子供の思いを親が100%理解することはできません。できることといえば子供が何をどのように感じているのかを汲み取り程度を理解するしかないのです。子供の言葉から想像して汲み取る技術を親が獲得し、我が子の嬉しさの程度を汲み取ることや悲しみの程度に寄り添い励ましの言葉を掛けたり、苦しみの程度を緩和できるようにしてあげたりすることしかできず、子供自身が自分の力で立ち上げることを見守り待つしかないのです。子供が心のうちにあることを全て話せるような環境を作り、親がしっかりと傾聴してあげると表情を読むことができるようになります。小さな子供は特に言葉が上手く話せないのでなるべく表情を読む練習を親が積む必要があります。
例えば口角が上がれば楽しい思いが湧き上がってきているんだな、目が輝き出したら心動かされる経験をしたんだろうと想像し、眉間に一瞬皺を寄せたら嫌な感情があるのかな、緊張した面持ちが読み取れたら不安や怖い感情が介在しているのかな、目が泳ぎ出したら不都合なことや何か隠しているのかなと想像することができます。表情を読む事を繰り返していると子供の一瞬の表情の動きも見逃さないようになります。子供は大変素直なのでちょっとした感情が表情として現れ、その変化を見逃さないように注意深く観察することも必要な技量です。
3、理解できるレベルを意識し質問をする
子供の話をしっかりと聞きながら表情を読んでいくと子供の言わんとしていることや感じていることが理解できるようになります。先の2つを十分積み上げたと確信を得たら子供に質問をしていく段階に入ります。しかしこの質問は親の聞き方が悪いと子供は貝のように心を閉じて話をしなくなることもあります。質問をしていく段階で心掛けてほしいことは、子供が自主的にそして能動的に質問に答えられる状況を作るということです。質問の答えを聞き出そうとしたり、答えを誘導していると子供が感じると質問を面倒臭がるようになるので子供の深層心理を読み解くことは大変難しくなります。子供が親からの質問を楽しそうに答えることができる親のスキルが重要になるのです。
質問の仕方には大きく分けて3つあります。
① 具体的な選択肢を与える・・・この方法は低年齢の子供達向けで言葉が未発達な子供でも答えることができる方法です。例えばオレンジとリンゴジュースのどっちが好き?というような2択など答えやすい方法を提示することは不向きだという意見もありますが「オレンジジュースは好きそれとも嫌い?」というYES、NOの答えの質問よりはまだ話が広がる可能性があります。
② より多くの答えがを想定できる質問をする・・・答える選択肢の幅を広げてみるような質問の仕方をします。例えば「おやつの飲み物は何にしようか?」と質問すると、子供は経験値の中からミルク、ジュース、ヨーグルト、お茶、水などを思い浮かべることを行う可能性があります。喉が渇いてるから水が言いというかもしれませんし、おやつがクッキーだったからミルクにしたなどその時に思ったことや感じたことを話すことができるような質問をし思考の選択肢を広げその理由も話せるようにします。
③ 抽象的な質問をする・・・子供がいろいろな事を思い描いて話ができるような質問の仕方を行う。例えば「どうして今日はこのおかずに手をつけなかったの?」と質問をしてみれば「本当は元々好きではないけれどこれまでは無理して食べていたんだ」と親が思いもしない話をしてくるかもしれませんし、「好きだけれど他の美味しいおかずに気を取られてしまった」「せっかく作ってくれたのに食べずにごめんね、無駄になっちゃったね」と話しをするかもしれませんし、そこから端を発して食料問題や環境問題に話を発展させることができるかもしれません。社会的な問題に対する意識付けを育てることができればより視野を広げることに繋がるでしょう。
4、子供の深層心理を読み取り質問する
この域に達するには1〜3の実践を日々行い子供の話に傾聴し表情、様子、発言、行動全てを瞬時に判断して、子供が今何を考え何を感じ何を思っているのかを想像して子供にかける言葉や質問を伝える技量が必要になります。そしてその技量に加え親の知識が求められるので常に学ぶスタンスが親には求められます。
思春期になり子供の心がわからない、何を考えているのやらと思案に苦しむということが起これば1〜3を実行できず、4を繰り出せるほどの深い向き合い方ができない親子関係になってしまったと言えます。
子供が問題に直面した時に一歩踏みとどまって考える勇気を持つように成長してもらうためには、子供が心の奥で何を思い何を感じ何を考えているのかということをなんの遠慮もなく話せる環境を親が与え思考させることが必要です。そのように子供を導くためには、これまで述べた親の実行力と技量そして器の大きさも必要です。
先ずは子供の話をただただ黙って聞いてあげることからスタートしてください。