犬猫の健康診断
動物たちは症状をあまり示さないため、病気が進行していても飼い主さんが気づかないことがあります。
そもそも、我々は自分自身の体のことでさえ気づかないことがありますよね。そのため、病気の早期発見、早期治療を目的に、ヒトでは健康診断を定期的に受診している方がほとんどではないでしょうか。
人間の80年間と、犬猫の15年間を比べたとして、(単純計算ですが)健康診断を犬猫たちに1年に1回受けさせるのは、人間で5年に1回受けているのと同じくらいの頻度です。昨年受けたから今年はしない、ではなく、少なくとも1年に1回はしっかりと健康診断を受けることで病気を早期に発見し、病気の悪化、発症を防いでいくのが良いかと思います。
今回は健康診断について、1. 検査の種類と 2. 健康診断の頻度について解説していきます。
1. 検査の種類
健康診断において、獣医師によって考え方は異なるかもしれませんが、当院ではライフステージにあった検査を受けることが大切だと考えています。
もちろん、一般的に発症が増えると言われている年代より早く発症する個体もいますので、気になる症状などがあれば検査を組み合わせることも必要ですが、検査が増えればストレスが増え、費用もかさみます。そもそもその年代の動物にとってほとんどない病気の検査を受ける必要はないかと思います。
反対に、血液検査だけ実施して「異常なし」とは言えません。血液に異常が現れない病気もたくさんありますので、必要な検査をある程度カバーする必要はあります。
従来は、検査項目の数により、3つほどコースを設けて飼い主さんに選んでいただいていましたが、2024年からは、年代ごとにコースのご提案をいたします。
コースの中から検査項目を追加したり、減らしたりすることは可能ですので、気になる症状などあればご相談ください。(コースについては後日アップします)
以下、健康診断の検査項目についてどんな検査なのか解説します。
・身体検査:触診、視診、聴診、体重・体温の測定を含んだ、健康診断の基本になる検査です。急激な体重の増減がないか、歯肉の状態、体表のしこりの有無などをチェックします。
・完全血球計算:血液中の細胞数をカウントすることで、貧血や炎症、感染、腫瘍、ストレス状態を調べることができます。
・生化学検査:臓器・器官系の状態を調べる血液検査で、各項目を組み合わせて総合的に判断します。
犬:蛋白質(TP, Alb, Glob, Alb/Glob)、肝酵素(ALT, ALP, GGT)、腎機能のマーカー(BUN, Cre, BUN/Cre, SDMA)、血糖値(Glu)、脂質代謝(TCho)、膵酵素(Amy, Lip)、ミネラル(P, Ca)、総ビリルビン(TBil)の18の項目です。
猫:蛋白質(TP, Alb, Glob, Alb/Glob)、肝酵素(ALT, ALP, GGT)、腎機能のマーカー(BUN, Cre, BUN/Cre, SDMA)、血糖値(Glu)、脂質代謝(TCho)、ミネラル(P, Ca)、総ビリルビン(TBil)の16の項目です。
・尿検査:泌尿器系の病気や糖尿病だけでなく、血液化学検査とともに行うことで様々な病気を調べることができます。尿の性状(尿pH、尿糖、尿比重など)の検査と、顕微鏡での観察(細菌、結晶など)をします。
・便検査:便の性状(臭気、固さ)の検査と、顕微鏡で観察(虫卵など)をします。
・レントゲン検査(胸部・腹部):X線という電磁波を使ってからだの内部の様子を画像化する検査です。 骨や脂肪、水分など、体内の組織によってX線の通りやすさに差があることを利用し、各組織を通過したX線量の違いをモノクロ画像として写し出します。肺、心臓、腎臓、肝臓、消化管、骨などのサイズや形を評価します。
・レントゲン検査(猫の肘・膝):猫では変形性関節症(OA;関節軟骨が傷ついたり変性して、痛みで動きにくくなる慢性的な疾患)が多く、人と同じように高齢になるほど発症は増加、1歳以上では約74%、12歳超では90%にOAの疑いがあるというデータもあります。レントゲンで特に関節炎が出やすい、肘と膝の評価をします。
・超音波検査(心臓・腹部):人の耳では聞くことのできない高い周波数の音波(超音波)を利用して行う検査です。超音波を発生させるプローブをからだの表面に当てて、リアルタイムで臓器の細かな状態を確認します。
・SDMA(腎機能マーカー):腎臓から排泄される細胞の代謝産物です。食事や筋肉の影響は受けず、腎機能のわずかな低下で上昇します。
・T4(甲状腺ホルモン):甲状腺疾患(犬では甲状腺機能低下症、猫では甲状腺機能亢進症)が疑われる場合に検査します。症状は、犬だと年のせいかなと思ったり、猫では一見病気だと思えない症状(活動性の低下/上昇、食べる量は同じだけど太る/食欲の増加)が特徴です。
猫の場合は、進行すると疲労感、削痩、動悸などの症状が現れます。心筋肥大や高血圧を起こし、腎臓にもダメージを与える病気です。
2. 健康診断の頻度
年に1回、シニア期からは半年に1回を推奨しています。ワクチンの接種時期や、秋の健康診断キャンペーン時など、定期的に健康診断を行うと良いと思います。
シニア期の場合、毎回項目が多いと大変なので、幅広い検査と、項目を絞った検査を半年ごとに交互に行うのが良いかと考えています。
最後に
獣医療でも、病気の早期発見、予防医療が重要です。10年前にはなかった腎機能マーカーのSDMAや、遺伝子検査などの検査が実施できるようになった一方で、解釈に気をつけなくてはいけない検査も多くあります。検査を受けただけではなく、正しく検査結果を理解することが大切です。
当院では各コースごとに推奨年齢を表示していますが、他のライフステージの検査を受けることも可能です。時間や予算と相談し、その子のプロフィール(年齢、品種、過去の病歴)にあった検査を選んでいきましょう。
はな動物病院
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