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◇雨の日のバスと私の声

2024.08.21 09:57

私が中学1年生の時の、ある雨の朝のことでした。

普段は自転車通学をしていたのですが、その日は雨だったので、初めてバスに乗りました。

車内には女性の車掌さんがいました。私の降りたいバス停が近づいた時、「次は○○、お降りの方はいませんか?」と聞こえてきました。

私は「誰かが降りるだろう」と思って待っていたのですが、誰も降りません。バス停を過ぎようとした瞬間、ようやく絞り出した小さな声で「すみません、降ります」と伝えました。

バスは急停車して止まり、車掌さんに「もっと早く言ってください」と叱られました。

当時の私は、知らない人の前で大きな声を出すのがとても苦手でした。


その後、視力を失った頃には、町中で人がいるのかいないのかわからない場所や、見えない相手に対して「すみません」と助けを求めることがなかなかできませんでした。

それではいけないと思い、日本全国を一人旅して練習を重ね、大きな声で「すみませーん」と言えるようになりました。

困った状況で「すみませーん」と声を出し、通りがかりの人から「何ですか?」と応えてもらい、助けてもらえた時は、本当に嬉しくて感動し、感謝の気持ちで涙ぐむこともあります。


ずっと前のことですが、私が地下鉄の車内の入り口横に立っていた時、サラリーマンらしき人がギリギリのタイミングで走ってきて「これ、○○に停まりますか?」と尋ねられました。

私は即座に大きな声で「停まりますよ!」と答えてあげました。その人は「ありがとうございます」と言いながら乗り込んで来られました。

おそらく、その人は乗ってから私の白杖に気づいたのでしょう。その人が降りる際、私の肩をポンポンと叩いて「先ほどはありがとうございました。おかげで助かりました」と言って降りていかれました。

いつもは私が尋ね、助けてもらうことばかりなので、その時お役に立てたことがとても嬉しくて、何故か胸に熱いものがこみ上げてきました。


また以前、このブログで書いた内容ですが「地下鉄に乗る時、『失礼しまーす。盲導犬と乗せてもらいまーす』と言いながら乗ったのですが、すごく混んでいたのでシエルと降りたところ、二人の女性がわざわざ降りてきて、シエルと私を乗せてくれました。そこにはシエルと私が乗れるスペースができていました。その優しさが嬉しかったので、次の日からは『すみませーん』を親しみを込めて『おはようございまーす、盲導犬と乗せてもらいまーす』に変えました」と書いたことがありました。

それ以来、ずっと「おはようございまーす。盲導犬と乗せてもらいまーす」と言いながら乗っています。

先日そう言いながら乗り込んだら、混み合う人の中から明るく温もりのある声で「おはようございまーす。大丈夫ですよ」という若い女性の声が聞こえてきました。

驚いてその方向に笑顔で向かい、「あっ、ありがとうございます!」とお礼を言いました。とても嬉しい朝になりました。 にこっ!

※写真と動画は、先日ウクレレのストリートライブをしていたら、ゆかさんがシエルにおもちゃをくれました。

そのおもちゃの写真と、それで遊ぶシエルの動画です。