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海洋の資源開発

2024.08.22 04:57

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1000398/1000431.html 【海洋石油開発かいようせきゆかいはつ】より

英語表記 offshore oil development

同義語 採油プラットフォーム [ さいゆぷらっとふぉーむ ]

海洋における石油開発は陸上部からの延長としてまず海岸近くに固定式プラットフォームを建設して試掘を行うことから始まったが、1947 年にルイジアナ沖合で第二次世界大戦後の余剰船舶を改造した移動式掘削装置を使って掘削が行われて以来、原油に対する需要の伸びとも相まって急速に海洋石油開発の重要性が増してきた。1983 年における海洋部からの石油生産は全体の 27 %を占め、依然増加傾向にあり、新規油田の開発対象としての海洋が持つ重要性は大きい。1983 年現在における海洋石油開発の記録の例として探鉱・開発の最大水深をみてみると、試掘では 1983 年に Shell が米国東海岸で掘削した Wilmington Canyon 1 号井で 6,448ft 、油田開発のためのプラットフォームでは 1979 年にメキシコ湾の Cognac 油田で、1,025 ftである。海洋石油開発の特色を以下に述べる。

(1) 海洋では調査船を用いて物理探査を行うため、陸上に比べ、非常に作業効率が高い。

(2) 水深、気象・海象条件に応じて試掘に使う移動式掘削装置の種類を選定しなければならない。掘削装置の種類としては水深の浅い所で使われる着底型(submersible)、水深が 15 ~ 100m の海域で使われる甲板昇降型(jack‐up)、気象・海象の厳しい海域向きの半潜水型(semi‐submersible)、移動性が良く静穏な海域向きの掘削船(drill ship)がある。

(3) 海洋油田では油田開発費に占める構造物の建設費の割合が極めて大きいのでどのような開発方式をとるかが大きな課題である。最近、海洋石油開発の対象地域が大水深化または悪環境下に向かっていること、また発見油田の埋蔵量が小規模化していることから、海洋油田の開発方式が多様化し、最適化が必要となってきている。

すなわち、水深が大きくなるにつれ、海洋油田の最も基本的な開発形式である坑井タワー(wellhead tower)と処理施設や居住施設を含む構造物(production platform、accommodation platform)との組み合わせから、同一プラットフォーム上に掘削設備・生産設備・居住区のすべてを搭載し、傾斜掘りにより多数の坑井を掘削する全搭載型プラットフォームへと変化している。

北海のような離岸距離が大きく、気象・海象条件が厳しい所ではさらに貯油機能までもたせた重力式プラットフォームが建設されている。しかし、このような海底に固定する構造物の建設費は水深が大きくなると飛躍的に増加するため、その対策としてテンション・レグ・プラットフォームやガイド・タワーのような揺動型プラットフォーム(compliant platform)の研究が進められており、最近相次いで実油田に設置された。さらに深い海域での油田開発には海底石油生産システムを適用しなければならないと考えられており、幾つかのシステムが 1960 年代から研究されている。油田規模の小規模化に対しては坑井の海底仕上げと浮遊式生産システムの組合せ方式が増えていくと考えられる。


https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/2018_02_09_01/ 【2018.02.09鬼界海底カルデラ内に巨大溶岩ドームの存在を確認】より

数物系科学 地球惑星科学 地球科学 火山

神戸大学海洋底探査センター (KOBEC) では平成27年のセンター設置以来、神戸大学大学院海事科学研究科附属練習船の「深江丸」を用いた3回の探査航海を「鬼界海底カルデラ」で実施しました。その結果、7300年前の巨大カルデラ噴火以降の短期間に、32km3を超える地球上で最大クラスの巨大な溶岩ドームが形成されたことを確認しました。またこの溶岩は、巨大カルデラ噴火を起こしたマグマとは異なり、現在の薩摩硫黄島などの後カルデラ火山と同じ化学的特性を示します。現在も鬼界カルデラの地下に巨大なマグマ溜りが存在している可能性があります。

この成果は、2月9日 (イギリス時間午前10時)、英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

ポイント

図1 西南日本における活火山と巨大カルデラ火山の分布

日本列島で最も直近 (7300年前) に巨大カルデラ噴火を起こした「鬼界海底カルデラ」内に、この噴火以降に大規模な溶岩ドームが形成されたことが分かりました。

その体積は32km3以上で、世界最大級の規模です。

この溶岩は、7300年前の巨大カルデラ噴火の噴出物とは化学的特性が異なります。

このことは、鬼界カルデラには7300年前以降に大規模なマグマ溜りが存在し、そして現在も存在している可能性を示唆します。

溶岩ドーム上には水柱音響異常が認められ、活発な海底熱水活動の存在が予想されます。

研究の背景

40km3以上のマグマを一気に噴出する「巨大カルデラ噴火」は、日本列島で今後100年間に約1%の確率で発生し、ひとたび起きると甚大な被害が予想されます。従ってその発生メカニズムの解明と噴火予測の検討が喫緊の課題です。

KOBECでは「深江丸」に最新の観測装置を装着し、鬼界海底カルデラの探査を実施しています。この火山を対象とした理由は、1) 陸上火山では人口密集のために人工地震を用いた大規模な観測が困難であり、比較的大深度 (約10km) に存在する可能性が高い巨大マグマ溜まりを高精度可視化することは難しいこと、2) 鬼界カルデラは日本列島で最も直近 (7300年前) に巨大カルデラ噴火を起こした火山で、現在も巨大マグマ溜りが存在する可能性が高いこと、です。

KOBECではこれまで3回の探査航海を通して、精密海底地形調査、反射法地震探査、海中ロボットによる観察、岩石試料の採取と分析、海底地震計・電位差計などを用いた観測などを行ってきました。

図2 探査で得られた海底地形及び探査実施地点

図3 探査結果に基づく赤色立体地形図

カルデラ構造及び溶岩ドームが明瞭に認められる。

図4 反射法地震探査で明らかになった地下構造

溶岩ドーム、カルデラ縁の断層、それに沿う貫入岩体の存在が認められる。

図5 (左列) 溶岩ドームの表面構造

いずれも水中で形成された溶岩流に特有な割れ目を示し、(c) では枕状溶岩の形態を持つ。(a)はNHK提供写真。

図6 (右列) 溶岩ドーム状に認められた水柱音響異常 (aの赤いプルーム状の部分) とROV潜航で認められたガスの放出

今後の展開

図7 溶岩ドームの化学的特徴

カルデラ形成期の大規模火砕流の噴出物とは異なり、後カルデラ期の溶岩 (薩摩硫黄島など) と同じ特徴を示す。

3月の探査航海では、これまでの探査で明らかになった2重のカルデラについて、その形成プロセスを巨大カルデラ噴火の発生メカニズムと合わせて明らかにするための反射法地震探査、海中ロボットによる観察を行う予定です。

さらに、地震学的・電磁気学的手法で巨大マグマ溜りの存在を確認し、海洋研究開発機構などと連携して大規模地下構造探査を実施し、地殻下部 (深さ約30km) に至る全マグマシステムに対する高解像度の可視化に挑戦します。その結果を元にモニタリングを行うことで、巨大カルデラ噴火予測への道を切り開きたいと考えています。

また、海底熱水活動に伴って金属鉱床の形成が予想されるため、今後この海底資源の評価を行う予定です。

図8 国内外の巨大カルデラ火山における後カルデラ期火山活動の比較

参考のために国内の大型活火山及び平均値も記してある。鬼界溶岩ドームは日本最大の後カルデラ期火山活動であり、世界的にも最も大きなマグマ噴出率を示す。(この図は参考のために作成したもので、論文には掲載されていません。)

用語解説

※1 カルデラ

火山噴火に伴って形成された窪地地形。

※2 巨大カルデラ噴火

大量のマグマ (>40km3) を一気に噴出して大規模なカルデラを形成する噴火。日本列島では過去12万年間に10回起きている。巨大カルデラ火山は九州と北海道に集中している。

※3 反射法地震探査

エアガンなどで人工地震を発生させて地下で反射や屈折した地震波を受信し、地下構造を推定する探査。

https://www.jamstec.go.jp/rimg/j/research/kikaicaldera/ 【鬼界カルデラ総合調査】より

鬼界カルデラとは?

鬼界カルデラは鹿児島の南、約100kmのところにある海底火山です。カルデラとは、大量のマグマが噴き出した後に空洞ができて、そこが陥没してできた地形のこと。カルデラを作るような超巨大噴火は、日本では過去15万年のあいだに14回起きたことが知られています。

鬼界カルデラをつくった7300年前の超巨大噴火では、火砕流が海を越えて、薩摩半島や大隅半島にまで達し、その地域の生物と縄文文化が壊滅しました。また、成層圏まで上昇した噴煙により、火山灰が偏西風に運ばれて東北地方にまで降り積もりました。

(左)鬼界カルデラは九州南方にある海域火山で、7300年前に超巨大噴火を起こした。赤の線は火砕流到達域。黒の線は火山灰到達域と降灰の厚さを示す。

図は、GeoMapApp (www.geomapapp.org) / CC BY / CC BY (Ryan et al., 2009)を利用。

(右)噴煙を上げる薩摩硫黄島の硫黄岳。

鬼界カルデラでは、13万年前と9万5000年前にも超巨大噴火が起きたことが分かっています。現在も噴火を継続して起こしていて、カルデラの外輪山上にある薩摩硫黄島の硫黄岳は、日本を代表する活火山の一つです。また、海面下でも、カルデラの中央部で溶岩ドームが密かに成長していることが最近の調査で明らかになってきました。

鬼界カルデラの海底地形。東西約20km、南北約18kmの陥没地形を取り囲む外輪山の上に薩摩硫黄島と竹島がある。カルデラの中央に大小の溶岩ドームが成長している。

(神戸大学の海底地形データを使用)

海底カルデラのナゾ

過去に起きた火山活動の痕跡は、薩摩硫黄島や竹島、薩摩半島や大隅半島、種子島や屋久島にも見られますが、限られた場所に残された断片的な情報です。鬼界カルデラの大部分は海底にあるため、現在海面下で起きている火山活動や、火山活動を引き起こすマグマの動きなどの実態や情報がほとんどありません。

過去にどのような火山活動を起こしてきたのか、そして現在カルデラの下ではどのようなマグマの動きがあるのかを知ることは、今後の火山活動の行方を予測するためにも非常に重要です。そのカギを握るのが海域の調査です。

鬼界カルデラとその周囲

鬼界カルデラの「過去」と「現在」を調べる

鬼界カルデラ総合調査では、「過去」と「現在」という二つの視点から研究を行っています。「過去」を調べるために、カルデラ内外の広い範囲で火山岩や火山性堆積物の採取を行いました。

火山岩は過去の噴火で噴出したマグマです。「ドレッジ」と呼ばれる金属製の巨大なちり取り(岩石を採取する箱)を船からワイヤーで海底に下ろし、引きずることで採取します。ドレッジで採取された火山岩から、海底噴火のメカニズムや過去と現在のマグマについての知見が得られつつあります。

火山性堆積物は、火山砂や火山灰が海底に堆積したものです。これは、金属製の筒を海底に突き刺す「ピストンコア」と、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた掘削によって採取しました。「過去」2回の超巨大噴火による噴出物と噴出したマグマの変化を時代を追って調べることができます。

鬼界カルデラの海域調査の模式図。カルデラの内外でドレッジやピストンコアを行い、海底にある火山岩や火山性堆積物を採取する。海底地震計等の海底機器を設置して地震波や電磁場変動をモニターする。

(左)ドレッジにより岩石が採取された様子。(右)ピストンコアを船から海底に下ろす作業。

鬼界カルデラの「現在」を調べるために、「海底地震計」や「海底電位差磁力計」を海底カルデラの内外に設置しました。数か月~数年の期間、地震や微動、電磁場の変動を収録します。

マグマの移動があるとその周りの地殻にひずみがたまり地震が発生します。海底地震計の記録から震源を解析することでマグマの位置や動きをモニターできます。また、カルデラの下を通過してきた地震の波形を解析することにより、カルデラ下の地殻やマントルの構造を知ることができます。

地殻やマントル内の電気伝導度の分布を記録する海底電位差磁力計の解析からも、マグマの位置や量を推定できます。マグマの導電性は周りの岩石よりも高いからです。

海底地震計を設置する作業。写真中央のオレンジ色の球体が海底地震計。船のクレーンで着水させ、あとは自由落下で海底に設置する。

陸上でも、周辺の島々に臨時の観測点を設置して鬼界カルデラの観測がおこなわれています。安定したデータを得るために地震計は地中に埋設されています。太陽光発電パネルの電力により、収録器のデータはモバイル回線を介して研究室に送信されます。

竹島(三島村竹島)での観測機器の設置の様子。

地震計(上段左)を埋設し(上段右)、データを収録器からモバイル回線(下段)により研究室へ送る。

2021年度には「地震波構造探査」も実施しました。これは、船から曳航するエアガンと呼ばれる人工震源を用いて音波を発生させ、あらかじめ設置した海底地震計で音波を捉えることで、海底下の地殻やマントルの構造を明らかにする手法です。

海域で船は自由に航走できるため、音波を発生させる人工震源の位置を調査の目的に合わせて自由に動かせます。そのためこの手法は、陸上火山よりも海底火山の調査で威力を発揮します。今回の調査では、鬼界カルデラを通る約170kmの直線上に約40台の海底地震計を設置し、その上をエアガンで音波を発生させながら航走して探査を行いました。このエアガンの信号は、陸上の観測点でも記録されました。

鬼界カルデラにおける地震波構造探査の模式図。「かいめい」が曳航するエアガンから発生した音波は地中を通り、直線状に配列した海底地震計で捉えることにより火山下の地殻やマントルの構造を得る。「かいめい」ではこの後海底ボーリング調査(BMS)も実施予定。

(左)大きく黒いのは浮き。その下にぶら下がっている銀色の筒がエアガン。これを4本船から200m離して曳航する。

(右)エアガンの曳航時の様子。

「かいめい」から発振されたエアガンの信号をとらえたデータ(波形プロット)。

これまでの研究航海と今後の調査予定

この鬼界カルデラ総合調査は、JAMSTECと神戸大学の共同研究として実施しています。JAMSTECでは、2019年度に「かいれい」を用いたドレッジと、「ちきゅう」を用いた掘削調査を行いました。2020年度には、「かいれい」を用いたドレッジとピストンコアによる岩石、堆積物試料の採取を行いました。さらに海底地震計と海底電位差磁力計の設置を行いました。2021年度には、「かいめい」を用いて地震波構造探査を実施しました。さらに同船を用いて、海底設置型掘削装置による海底ボーリング調査を実施する予定です。今後も、神戸大学の船舶を用いた調査や「三島村・鬼界カルデラジオパーク」とも力を合わせて、鬼界カルデラ火山の「過去」と「現在」を明らかにしていきます。

三島村・鬼界カルデラジオパーク