Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第二章 深淵 15

2024.08.25 03:00

小説 No Exist Man 2 (影の存在)

第二章 深淵 15


 荒川は、かなり緊張しながら北京空港に降り立った。すでに嵯峨朝彦や東御堂信仁から、散々脅かされながら、それでいて一応の激励もいただいた。しかし、実際に中国港内に来るのは荒川一人である。安斎は来ているが、しかし、それ以外に見方はいない。すべてが敵であるといってよい。

 ウイグル独立軍のハリフも、本当に信用できるのかはかなり問題があった。

 荒川は、あえて自分の名前ではなく、今田陽子に頼んで偽名を使った。「沖田進」という名前を名乗っていた。これは、荒川のことを「荒川」と呼ぶ人間は、すべて敵であると言ことになる。その様にするために、あえて「沖田」という偽名を使ったのである。当然にハリフにもそのことを伝え、ハリフのいう「ルフトハンザホテルに来る味方」という人々にも、すべて「沖田進という男が行く」ということになっている。ただし、その沖田進の本来の目的は完全に秘密になっている。ハリフの味方にはあくまでも「日本の人々や支援者との連絡係」としかしていない。

 北京空港からルフトハンザセンター、いや、北京市内まではタクシーを使わず、公共交通機関であるバスを使った。

「おい」

 聞きなれた日本語である。

「安斎か」

「ああ」

 バスの後ろの座席から声がした。もちろん安斎武である。いや、その人物以外に、今の荒川、いや沖田に声をかける人物はいない。

「沖田進さんだっけ」

「ああ。そういう名前になっている」

 何か不思議な言葉になっている。まあ、偽名を使っているのであるから仕方がない。まあ、荒川にとってはそれほど大きな問題ではなかった。

「ところで、どこへ行く」

「ヒルトンホテル」

「あそこならば外資系だからという事か」

 確かにそうだ。ヒルトンホテルはアメリカ系なので、特に大きな問題はない。スイスホテルもあるが、実際はスイスホテルは、中国の香港マカオセンターによって経営されているので、香港がすでに共産党に入ってしまった現在では、スイスホテルは共産党の一部になっている。

「ヒルトンホテルの後に、ルフトハンザセンターに行くのか」

「いや、ヒルトンホテルで、ルフトハンザセンターの様子を探る。そのうえで、場所を変えるつもりだ」

「それならば、どこに」

「さあ。少し遊んで考えるよ」

 その言葉を聞いて安斎は笑った。

「俺の名前は、安斎武のままにしている。今もすでに誰かが尾行しているので、常に監視されているということになる。そのことを気に留めておけ」

「ああ」

 この荒川と安斎の間の会話は、それで終わった。しかし、座席の隙間から別なメモが入っていた。荒川は、誰からも全く見られることなく、言葉とは全く異なる内容がメモに書かれているのである。

 荒川は、そのまま北京飯店に入った。もちろん、尾行を巻く為である。そしてそのまま、北京飯店の前の長安宮に入ったのである。そして、その中にある日本料理店に入った。そこでとりあえず腹ごしらえをし、その後、天安門広場に出たのである。

 このように目立つことをしているのは、尾行を意識してのことである。そして、わざと人お目の多いところに出たのである。さすがに中国人も共産党も、人目が多いところで暗殺などはできない。いや、暗殺をしようとして誰かが助けることがあるからだ。人間というものはそのような所がある。安斎は、かなり前にバスを降りているので、日本からの荷物を持ったまま天安門人場を歩いたのだ。

「あいつ何をやっているのだ」

 中国人は様々な事を言っていた。中国人はそのような噂が好きなのだ。荒川が歩くところで中国人がそのように言った。

「これは何ですか」

「ライターよ。」

 荒川はライターを屋台で勝って、その場で普段は吸いなれていないタバコに火をつけた。そして煙草をその場でふかした。肺まで吸い込むのはなかなか難しい。荒川は、そのままルフトハンザせんーホテルに向かった。

 ルフトハンザセンターホテルの喫茶室には、女性と男性が待っていた。荒川は、あえてその二人が待っている場所ではない所に座った。

「コーヒーを」

 あえて白人のウエイトレスを呼んでその様に注文した。中国人をここでは信用できない。もちろん白人であっても中国人とうまくやっているということが重要であった。しかし、中国人のような形とは少し異なる内容であった。

「はい」

 普通の客と同じように、にっこりとした笑顔ですぐにコーヒーを持ってきた。

 喫茶の端でコーヒーを飲んでいる男女一組は、そのままこちらを気にしているようであるが、しかし、まだ近づいてこなかった。荒川は、カバンから日本の歴史小説を出して、読み始めた。喫茶室で本を読んでいる姿は特におかしな話ではない。しかし、荒川は、そのまま「メモ」を書いてそのまま会計に立ってしまった。

「小姐」

 荒川は、そういうと、そのまま荷物をもってその二人の近くに歩いて行った。

「ああ、すみません」

 荒川は、荷物を女性の脚に引っ掛けてしまった。その時、荒川はその女性の左腕を見た。女性の左腕にはしっかりと番号が書かれていた、ハリフと同じ「政治犯収容所」の入れ墨である。荒川はその内容を見たのちに、荷物を拾うふりをして、机の上にメモを置いた。

「いえ、あの、もしかして」

 女性は何かを話しかけたが、しかし荒川はそのまま立ち去ってしまった。

 荒川は、そのままルフトハンザセンターから、歩いてヒルトンホテルに行き、チェックインしたのちに、その部屋に入った。

荒川はシャングリラホテルと、ヒルトンホテル二つのホテルをチェックインし、そのうえで、あえて尾行がいるところでヒルトンホテルに入ったのである。シャワーを浴びて少し仮眠をとった。

 特に何もすることはない。布団で寝たのちに、夜の食事に行くとコンシェルジュに伝えたのちに、王府鎮にタクシーで向かったのである。そして東三里屯商店街の真ん中にある「ハードロックカフェ」に入ったのである。バスの中で安斎に伝えたのとは似て非なる内容をそのまま自分で動いたのである。そしてハードロックカフェに関しては、安斎のメモにあった打ち合わせ場所である。

 ハードロックカフェは、東京にもある所であろう。かなり音が大きく、その中でビールを飲んだ。

「あなたが沖田様ですか」

 流暢な日本語である。やはり、昼にルフトハンザセンターであった女性である。

「はい」

「ハリフ様から聞いております。私はマララと申します。」

 そういうと、マララは、そのままその場で電話をした。もちろん、打合せ通りに「東京にいるハリフ」に対してである。廻りには友人に電話をしているかのように電話をしている。

「荒川さん。いや、沖田さんでしたね。マララをよろしくお願いいたします。」

 これが信用できる儀式である。

 男性の方はハミティといった。

「さて、今回の要件は・・・」