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ガルヒ就労支援サービス

オポチュニズム

2024.09.02 01:00

                                サンマーリン 伊藤

今年の4月にJRグループが、精神障がい者無向けの障害者割引を、来年4月から導入することを発表したのはご存じの方も多いと思います。

私が重度身体障害者の介助者をしていた時、日本中あちこちの電車に一緒に乗ることがありました。飛行機も何度も一緒に乗り、海外にも行きました。

そうした中で、公共交通機関の対応の悪さに、腹が立つことが何度もありました。

これは重度身体障害がある利用者と他県に出張に行き、飛行機で石垣島に帰ってきた時の話です。

仕事の疲れを引きずりながら飛行機を降り、預けていた荷物を受け取って、車椅子に人工呼吸器やら吸引機やらをセッティングし、私達は空港を出てバスに乗ろうとしました。

バスの座席はほぼ満席で、キャリーケースがそこかしこの床に置かれていましたが、立ち乗りのスペースにはまだ何とかなる余地がありました。

キャリーケースを綺麗にまとめれば車椅子のスーペースが確保できるのは明らかでした。

でも運転手は「いっぱいなので次のバスにしてください」と言ってきました。

私と利用者は、「人工呼吸器のバッテリーの問題があるので、できるだけ早く家に帰りたい」と事情を説明しました。

すると、「ではなぜすぐにバスに乗りに来なかったのですか」と高圧的な声色で返してきました。

私は驚きました。

車椅子ユーザーが飛行機を降りるときは全ての乗客が下りた後なので、最後の最後になるのは全国共通のはずです。いち早くバスに乗りたくてもそうはいかないのです。

空港から発着しているバスの運転手なら、その程度の知識はあって当たり前ではないかと思いました。

ただ中には知らない人もいるかもしれないので、その辺りは追求しませんでした。

とにかくキャリーケースをまとめればスペースは十分にあるはずので、何とかしてほしいと訴えました。

ここでさらに驚いたのは、私の声が聞こえているはずなのに、乗客は誰一人動こうとしなかったことです。

自分たちの荷物を少し動かすだけでまだ人が乗れる状況なのに。

この時の乗客の表情は今でも忘れません。

皆憐れむような、同情するような、でもどこか遠い安全な所から見下ろしているような、何とも言えない顔で私たちを見ていました。

中には「私は関係ないから」と顔に書いて、そっぽを向いている人もいました。

結局運転手の方が折れてくれ、渋々キャリーケースを片隅に集めて、私たちが乗れるスペースを作ってくれました。

こういった場合介助者である私が率先して動くことは出来ません。

その時私が介助していた利用者は、首から下が一切動かず、人工呼吸器を付けており、介助者が利用者から離れるといういことは、その人に危険が及んだ場合の回避方法が無くなるという事だからです。

私は利用者と共に言葉で訴えることしかできませんでした。

誰がどういう行動を取るべきだったのでしょうか。

私達が伝えた要望は間違っていたのでしょうか。

きっとそこにいた人全てが、少しづつ違った価値観を持っていたのでしょう。

だから全体として膠着してしまったのだと思います。

私たちの訴えが必ずしも正論だったとは思っていません。

正論とは共感があって初めて成り立つもので、共感の無い一方的な正論というのは本来は存在できないからです。

その時の私達は誰からの共感も得ることができなかったので正論とは言えないのです。

だからこそ悔しいのです。

利用者がこの時どう思っていたのかは分かりません。

ただ、きっと同じような経験を何度もしてきているのだろうと思いました。

障害を理由に悔しい思いをする人がいなくなる為には、国民一人一人の価値観の再構築が必要ではないかと考える今日この頃です。

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